トップバッターのlukiは、円山天使(G)/山本哲也(Key)をサポートに迎えて3人編成での登場だ。黒のワンピース姿で遠くを見つめる彼女の佇まいには、糸がピンと張ったような冷たい緊張感と集中力が宿っている。涙で喉を詰まらせているときみたいに、静かに、しかし熱く声を震わせながら唄い進められる1曲目は“モノクロームの恋人たち”。続く“東京”では一転、開放的なEDMサウンドが会場いっぱいに広がり、luki自身も音に身を任せて体を揺らす。その後方にはビル群などの映像が浮かび、視覚と聴覚の両方でオーディエンスたちを飲み込んでいく。「いい音楽を作っている自信はあるけどイベントとかでもアウェイになりがちで。でも今日はおふたりの心強い仲間がいてちょっと楽しいです」とはにかんだあとは、星や湖の映像とともに“白い月”(この日唯一の旧譜曲)を神秘的に奏で、「ライヴでやるのが初めてで緊張します」と言っていた“四角い箱にいた頃”では色香漂うハーモニカソロも披露。“KISS OR KILL”のMVにちなんで「走るのが好きでこないだも多摩川を40キロ走りました」と走ることへの愛を語ったあと、「みなさまの幸せを願いましてお送りします」と“100年後のあなたへ”で締めくくった。なお、“100年後のあなたへ”は近々MVが公開されるとのことなので、楽しみにして待ちたいところ。
2番手はビッケブランカ。吉澤響(Dr)とともに登場した彼はフィンガースナップしていてゴキゲンな様子だ。“Wake Up Sweetheart!!”からライヴはスタート。やわらかくもしっかりとした中音域で唄い上げる。女性である他出演者2人に合わせてファンデーションをしてきた、という暴露をしたあとは“追うBOY”へ。ダンサブルなビートに乗って持ち前のファルセットがいかんなく発揮されれば、オーディエンスも思い思いに体を揺らす。これだけポップな曲なのに歌詞が女々しいのも面白い。以降、昨年10月にリリースしたミニアルバム『ツベルクリン』収録曲を中心に演奏。音の粒を痛快にスウィングさせながら、ときにはその場で立ち上がって鍵盤を弾き倒し、ステージ前方へ駆け寄っては客席をぐるっと見渡してみせる。一転、バラード“アイライキュー”では1番はまるごとビッケブランカのみの弾き語りで披露。メロディの持つ美しさが際立つアレンジを聴かせてくれた。前曲について「考えすぎることなくできた曲」と語るビッケブランカ。「自分の正直な気持ちを言葉や心に出すことが大事だと思っていて。だからファンデーションなんかしちゃダメですよね(笑)! 」とオチもしっかりつけたところで、「これからもまっすぐに気持ちを伝えていこうと思います」と“秋の香り”へ。2人という最小限の編成で色とりどりの音楽を届けてくれたのだった。
ビッケブランカと同じくヴォーカル&キーボード+ドラマーの2人編成だった日食なつこ。SEなしで颯爽と登場し、“跳躍”“水流のロック”を演奏。komaki(Dr)と向かい合う形のセッティングということもあって、音と音とが戦いあい、同時にお互いを鼓舞するようなアグレッシヴなアンサンブル。腹の底から出したような芯のある声で唄い、ロングヘアーを揺らしながら鍵盤に向かう彼女は、男前ならぬ女前といったところだろうか。演奏を終えて胸に手を当ててお辞儀する姿も華麗だ。ファルセットを挟みながら唄い進めるA~Bメロと、力強いサビとの対比が鮮やかな“雨雲と太陽”のあとには、“夕立”をひとりで弾き語り。「来てくれたからには何の心配もいらないので……私たちに預けて楽しんでいただけたらと思います」という言葉を有言実行するように頼もしい演奏が続く。そんな演奏時とは打って変わって、閏年に関する話をしていたMCでは「オチがない」とkomakiにツッコまれ、「曲はカッコいいから大丈夫です! もう喋りません!(笑)」なんて場面も。真っ赤な照明のなかでソウルフルに鳴らしきった“レッドデータクリーチャー”、続けて“ビッグバード”を演奏すると、ラストは“ヒューマン”を披露。ひとりでの弾き語りで演奏することによって、ヒトが抱える「生きることの難しさ」を彼女特有の視点で描いた歌詞が、剥き出しの形で迫ってきたのだった。(蜂須賀ちなみ)
■セットリスト
〈luki〉
01.モノクロームの恋人たち
02.東京
03.観覧車
04.白い月
05.四角い箱にいた頃
06.曖昧なファンタジー
07.KISS OR KILL
08.100年後のあなたへ
〈ビッケブランカ〉
01.Wake Up Sweetheart!!
02.追うBOY
03.Bad Boy Love
04.ソロー*ソロー
05.アイライキュー
06.秋の香り
〈日食なつこ〉
01.跳躍
02.水流のロック
03.雨雲と太陽
04.夕立(ソロ)
05.レッドデータクリーチャー
06.ビッグバード
07.ヒューマン(ソロ)