あらためて挨拶すると、「照明に煌々と照らされて、後ろの方の顔が……お! 照明さん、ありがとうございまーす!」と告げて、オーディエンスの表情を確認する。なんなんだ、その余裕の振る舞いは。尊敬する家入レオとの共演を喜びながら、7月の『FNS 歌の夏祭り』で共演したときには、静まり返った楽屋でのメイク中に家入が大原の“明日も”を携帯で再生して、会話の機会を作ってくれたエピソードなども語られていた。今夏のシングル曲“真夏の太陽”から、《Trick or Treat!》のコール&レスポンスを巻き起こして今の季節を謳歌する“オレンジのハッピーハロウィン”へ。「声が聞こえない!!」と全力で煽り立ててタオルを振り回す“頑張ったっていいんじゃない”は、恐るべき肺活量の長い発声でフィニッシュして圧巻であった。振りをレクチャーしながらの“Happy Days”まで、まだまだエネルギーがあり余って仕方がない、という全7曲であった。
“Silly”や“Still”と、しっとりとしたエモーショナルなナンバーにも、パフォーマンスの迷いのなさが窺える。アコギを掻き鳴らしながらの情熱的なナンバー“lost in the dream”は、グッと自然に大人びた印象でクールだ。「ファンの方に、家入さんてタクシーを停めるとき、手を挙げないで目で停めるって本当ですか、って言われて。ちゃんと手挙げて停めますよ!」と、目力ネタで爆笑をさらうと、大原櫻子も出演した今夏のドラマ『恋仲』の主題歌である“君がくれた夏”へと向かう。練り上げられたメロディが、ステージパフォーマーとしての彼女に無尽蔵の自信とエネルギーをもたらしているような印象だ。“勇気のしるし”以降は怒涛のロックチューン連打で、“サブリナ”では「お前らそんなもんか!!」と煽り立てながら「ビクター!!」「サクラコ!!」「レオ!!」とコール&レスポンスに突入する。そのままブライトな音像で駆け抜ける“希望の地球”を、オーディエンスとの一斉3連ジャンプで締め括った。凄い。
アンコールに応えて再び姿を見せた家入レオは、大原櫻子のTシャツ姿だ。ここで大原を呼び込むと、こちらは家入Tシャツでハグを交わす。「同じMCするの、やめようよ〜(笑)」と大原がツッコミを入れたり、2人で朝食に出かけたエピソードを語ったりしながら、ここで“君がくれた夏”をデュエットする『FNS歌の夏祭り』再現だ。オーディエンスの温かいクラップに後押しされながらヴォーカルをスイッチし、コーラスパートでは向き合ってハーモニーを披露する。終演後、バンドメンバーを見送ると、「櫻子ちゃんはこんなに可愛いらしいけど、実は男らしいところがあるんですよ。やりたいことはやる!って」(家入)「レオちゃんは、一見クールだけど、話すときはいつもニコニコしてて、本当に可愛いんですよ」(大原)と口々に語り、ステージ中央のお立ち台に手を繋いで昇ると、オフマイクで「ありがとうございました!!」と挨拶するのだった。
女優としても活躍する大原櫻子のように、音楽以外の表現領域で活動する人が優れたミュージシャンでもあるというケースは、実は昔から少なくない。多彩な活動は、明らかに彼女の雄弁で堂々としたライヴパフォーマンスにも影響を及ぼしていた。また、若い視点と感性をフル稼動して自分自身の歌を紡ぐ家入レオは、近年の女性シンガーソングライターたちの目覚しい活躍を象徴するようだ。2人は年齢が近い同性というだけで表現のアプローチやスタイルも違うから、「若手女性シンガー」という大雑把な括りで語ることにはたいして意味がないけれど、価値観の凝り固まったロック/ポップシーンに新たな風を吹き込む存在として、それぞれに注目するべき才能であることは間違いないだろう。(小池宏和)
・セットリスト
●大原櫻子
01. Over The Rainbow
02. 明日も
03. 真夏の太陽
04. オレンジのハッピーハロウィン
05. 瞳
06. 頑張ったっていいんじゃない
07. Happy Days
●家入レオ
01. 純情
02. Shine
03. 太陽の女神
04. Silly
05. Still
06. lost in the dream
07. 君がくれた夏
08. 勇気のしるし
09. Linda
10. サブリナ
11. 希望の地球
(encore)
12. 君がくれた夏 (家入レオ×大原櫻子)