all pics by 田中和子VAMPS恒例の籠城型ライヴハウスツアー「VAMPS LIVE 2015-2016 JOINT 666」。同ツアーは、東京・大阪・名古屋で各6公演ずつ、国内外からのゲストを迎えた2マン形式で行なうというもの。東京公演4日目のゲストはフィンランドのロックバンド・HIM。開演時間6時66分(19:06)めがけて始まった1分間のカウントで興奮がピークに達したところに、威風堂々と登場したHIM。彼らの渾身のアクトに、フロアも序盤からシンガロングやハンドクラップを交えながら全力で応えた。
HIMが残した余熱も冷めぬうちに、真っ赤な照明に染まった会場に現れたVAMPS。フロアからさっそく大歓声が湧き上がる。ステージにそびえる教会の礼拝堂を彷彿とさせるセットが、この空間が現実とはかけ離れた別世界にあるのだと錯覚させてくれる。そして、HYDE(Vo)の舐めるような視線がフロアを捉えると、腹を抉るような重厚なナンバー“EVIL”でいよいよ火蓋を切った。1曲目にもかかわらず躊躇なく繰り出されるHYDEの過激なシャウトと、K.A.Z(G)の気迫溢れるプレイ。さらに続く“LIPS”では、《BLOODSUCKERS》(VAMPSファンの愛称)という呼びかけに応えるように、会場全体からヘドバンの嵐が巻き起こる。その光景はまさに壮観だった。そんな激しい雰囲気を一層かき乱したのは「今日も気持ち良くなろうね、一緒に愛し合おう」というHYDEの甘い誘惑だ。そして、ハードな狂気に満ちた雰囲気を一変させたのは、あまりの美しさに溜息が漏れそうな ピアノソロに導かれた“VAMPIRE’S LOVE”。切ない調べに胸が締め付けられるようになる。さっきまでの爆発的な狂騒が嘘だったかのように静まり返った会場に、台に腰かけたK.A.Zが淡々と奏でるギターの音色と、赤い薔薇の花を握りしめながら感情的に歌い上げるHYDEの声が色鮮やかに響き渡った。
VAMPSの描く独創的で妖艶な世界観は、ライヴの場で完成する。息遣いさえ曲の一部に変えてしまうHYDEの艶やかな声や、K.A.Zがかき鳴らす繊細にして過激なギターサウンド、幾度となく行ってきた海外公演や海外屈指のアーティストとの共演での経験が染みついた堂々たるプレイスタイル。その全てが集約したライヴという空間こそがVAMPSそのものなのだということを、この日のアクトを観て強く感じた。
そしてこの日のライヴにHIMが予定通り来るかを案じた結果、「心配してたらメイクが濃くなっちゃった」というHYDEの話から、「君たちもぐちゃぐちゃになっちまえ! 悪い子になっちまえ!」の一声を合図に巻き起こったハンドクラップに乗せた“AHEAD”で後半に突入! ダークな前半、神秘的な中盤を経てのアッパーチューンに溢れた後半と大胆に構成に変化をつけながら、VAMPSが持つ様々な表情を包み隠さず見せてくれた。そういったVAMPSのサービス精神から、ダンスチューン“TROUBLE”の前のコール&レスポンスでは大声の出し過ぎでHYDEが思わず咳き込む場面もあったほどだ。
そんな全身全霊の本編を終えた後のアンコールでは、90分に及ぶ怒涛のアクトを経たフロアを見渡しながら「みんな顔が真っ赤っかになってんで!タコみたい!」とからかいながらも“DEVIL SIDE”“SEX BLOOD ROCK N’ROLL”と手加減なしのキラーチューン連打! 「明後日も首洗って待ってろよ!」という挑発めいた言葉と投げキッスの乱舞を残し、美しくステージを去っていったVAMPS。追加公演も決定している今ツアーは来年まで続くので、是非とも彼らの妖艶な毒気にやられに行ってほしい。(峯岸利恵)