10曲目“八方塞がり美人”の前に、同曲のMVに出演したモデル、アリスムカイデがウェディングドレス風の真っ白いヒラヒラ衣裳で登場。三浦隆一(Vo. / Gt.)がアリスの顔のベールを上げる→アリス、フロアに背を向け白いブーケをフロアへ投じる→両腕を広げて待つ三浦にアリス、つかつかと歩み寄り、べしーん!と本気のビンタを食らわせる→曲へ突入、アリスは去る──という演出あり。
1回目のハイライトは、4曲目で“物見遊山”をやった時。2回目は、11曲目・12曲目で“雨の伝導率”と“不在証明”をやった、つまり簡単に言うと暗くて重くて切実な歌詞の曲が続いたゾーン。3回目は、17曲目と18曲目、“春恋、覚醒”と“空想ディスコ”とアッパーに続いた末に、本編ラストの19曲目を『ダウトの行進』の1曲目、“ミュージック”でしめくくった時でした。
まず基本的にこの人は、歌いながらリズムをとる、ということをしない。足でリズムを刻むとか頭を振るとかしないで、仁王立ちのままギターを弾き、歌う。つまり、ノッてる感じがしない。この日のライヴで彼が身体を使ってリズムをとったのは、僕が目視できたところでは、さっき書いた “春恋、覚醒”と“空想ディスコ”の時だけだった。
いや、間違いなく本当にそう思って言っているんだと思うが、音楽をやる自分に酔えていないというか、音楽に酔えないというか、どうしたって我を忘れられないというか、そんな感じなのだ。
ロックはすばらしい、でも自分とロックはイコールじゃない、というか。まぎれもなくすばらしいメロディと言葉をクリエイトしているというのに、それが必ずしも自分を救ってくれるわけではない、ということを悟ってしまっている、というか。
どうでしょう。めっちゃ感情移入せざるを得ないでしょう、それは。ほんとに、“不在証明”の時と“ミュージック”の時は、やや情緒不安定になってしまうほどでした、私。
そんな観方してた奴は僕ぐらいかもしれない。でも、そんな男の歌で、Zepp DiverCity Tokyoのオーディエンスがシンガロングし、腕を振り上げ、踊っているさま、本当に幸せで、そして本当にせつなくて、美しい光景でした。
先に書いた、オーディエンスにお礼を伝えたMCのあと、三浦は「本当にね、音楽やってなかったら、僕ら、クズです」と言っていた。
本当にそうだと思う。で、改めて、絶対支持したい、このバンド。(兵庫慎司)
1. 波動砲ガールフレンド
2. ワーカーズアンセム
3. 切illing Me Softly
4. 物見遊山
5. フロントマン
6. カオス力学
7. 桜色の暗転幕
8. 私が雪を待つ理由
9. 容れ物と中身
10. 八方塞がり美人
11. 雨の伝導率
12. 不在証明
13. ビジョン
14. 悪天ロックフェスティバル
15. 二重螺旋構造
16. 千里眼
17. 春恋、覚醒
18. 空想ディスコ
19. ミュージック
En1.単独飛行少年史(三浦隆一弾き語り)
En2. エンペラータイム
En3. 劇的夏革命