「京都大作戦 2017」 3日目

SUPER BEAVER Photo by みやざきまゆみ
「京都大作戦」史上初となる、3日目の朝。源氏ノ舞台トップに立ったSUPER BEAVERの渋谷龍太(Vo)は、矢継ぎ早に繰り出す熱い言葉の中で、「1日目も2日目も、ゴミがまったく無かったんだって。それは、10-FEETの3人の意志だけではどうしようもない。意志がしっかりと浸透した結果だと思います。ひとつだけ訊かせてください。京都大作戦、好きですか?」と問いかける。飾り気もなく堂々と広がるロックンロールに、彼らも剥き出しの意志を刻みつけてみせた。そして、初のフルアルバム『HENT』のリリースを目前にしていたENTHは、メタリックなサウンドと共に突き抜けるようなグッドメロディを投げかけながら「ドラム(takumi)が二十歳なんで、僕たち10-FEETとタメです!」と牛若ノ舞台を沸かせる。
dustbox Photo by HayachiN
眩しいぐらいの笑顔のパンクに染まる、大作戦皆勤のdustbox。JOJI(B・Vo)は「今日も重圧なんですが、まあいつもどおりやりますよ」と語り、10-FEETのNAOKI(B・Vo)やROTTENGRAFFTYの侑威地(B)も飛び入りでベースを握る狂騒を作り上げていった。最後にはなんと、10-FEETの3人を椅子に座らせ、“ヒトリセカイ”のカバーをプレゼント。粋な計らいだ。SIX LOUNGEは、ヤマグチユウモリ(G・Vo)が巻き舌気味に投げかける節回しで、泥臭くパンキッシュなロックンロールを転がしてゆく。哀愁を燃やし尽くすような3ピースのグルーヴも強烈だ。
氣志團 Photo by みやざきまゆみ
特攻服姿で登場し、“喧嘩上等”からスタートした氣志團TAKUMA(Vo・G)による作詞・作曲の新作曲“フォーサイクル”は、余りにも氣志團にピッタリな青春のビートパンクだ。“One Night Carnival”のブレイク部では「思いは一緒だよ。分かってるよ。メシ食うなら今じゃね? 最前の奴も俺たちのファンじゃなくて、WANIMA待ちだって分かってるよ」と自虐ネタを飛ばし、「氣志團あらためWAKIGA、かーいさーいしまーす!」とWANIMAの“BIG UP”を、はたまたマキシマム ザ ホルモンの“恋のメガラバ”を氣志團曲と人力マッシュアップしてみせる。最高だ。OVER ARM THROWの爆走ライブでは、この日ちょうど誕生日の菊池信也(Vo・G)に向けて、オーディエンスからにわかに“ハッピーバースデートゥーユー”が贈られる。
WANIMA Photo by HayachiN
さて、当のWANIMAだが、本家“BIG UP”に込められた情熱と欲望はやはり特別だ。今回も“VIBES BY VIBES”をカバーするところにTAKUMAが飛び入りするのだが、KENTA(Vo・B)は「本当はKOUICHI(Dr・Cho)さんとやる予定だったのに、全然出てきてくれん、あのおじさん」とチクリ。“CHARM”に“ララバイ”、“ともに”、駄目押しの“やってみよう”と、近作曲でも躍進ぶりを伝える歓喜のステージであった。一方、「賞味期限は切れそうでも、消費期限は切れてませんわ! 青春パンクの生き残りやーっっ!!」と吠えて始まったガガガSPも、オーディエンスの大合唱では負けていない。世代を引き受ける姿勢に胸を打たれるステージだ。
MAN WITH A MISSION Photo by HayachiN
MAN WITH A MISSIONはなんと、開演と同時に袴姿の男性や芸妓姿の女性たちによるホーンセクションが登場し、あの10-FEETの登場SE“そして伝説へ”を生演奏してしまうというサプライズを敢行。そこから「10-FEET、ハジメマス!」の宣言とともに“database feat. TAKUMA (10-FEET)”のコラボを切り出すのだから堪らない。フィールドいっぱいに広がる“Raise your flag”のエモーショナルなシンガロング、そして“Dog Days”や“Dead End in Tokyo”といった近作ハイブリッドチューンの威力と、スケール感の大きさはさすがに申し分なしだ。そして、ハイトーンの絶叫を合図とするかのように転がり出すのは、通算3度目の出演となるDizzy Sunfist。ファストな爆音を飛ばすほどに愛くるしさを増し、一貫したボルテージの高さも素晴らしい。
マキシマム ザ ホルモン Photo by 浜野カズシ
ここで、蒸し暑かったはずの天候が急に崩れ、風雨の強く吹き付ける状況の中に登場したマキシマム ザ ホルモン。それでも、ライブの封印が解けた彼らを前にオーディエンスの熱気が冷めるはずもなく、ナヲ(ドラムと女声と姉)は「みんなそろそろシャワー浴びたかったんでしょ? ウチらケチじゃないから。これ特効だから!」と煽り立てる。“シミ”のサークルモッシュが弾ける瞬間、彼方に絶妙のタイミングで稲光が走る光景は、ちょっと現実感を失うほど凄まじいものだったが、さらに“「F」”で狂騒が過熱したところで、来場者の安全を優先し、演奏を一時中断することがアナウンスされる。

オーディエンスには、屋内やシャトルバスへの避難が案内されていたのだが、源氏ノ舞台エリアを埋め尽くすほどの人々が簡単に移動できるはずもなく、雨の中で辛抱強く避難の順番を待つ姿には胸を打たれた。不安もあったろう。中断から2時間弱が経過した18時30分頃に、再開の目処が立ったという旨のアナウンスが届けられた。来場者も順次、源氏ノ舞台エリアへの再入場が進められる。先に牛若ノ舞台が再稼動したのだけれども、個人的にはこのあとのSHANK、そしてG-FREAK FACTORYのパフォーマンスには触れることは叶わなかった。残念だ。

19時5分、10-FEETの3人が説明のために登場し、20時までの限られた時間に、マキシマム ザ ホルモン、ROTTENGRAFFTY、10-FEET、の3組で協力してライブを行うことを宣言する。こういう事態なのでホルモンはここで終了、というフリにホルモンが全力でツッコむ、というわちゃわちゃした一幕を経て、ナヲの「おれたちは今、伝説の中にいるーっっ!!」という熱いセリフから恋のおまじない、そして、出演者全員集合のダンス“恋のスペルマ”で爆発的な盛り上がりへと導いて見せた。
ROTTENGRAFFTY Photo by HayachiN
スタッフ総出で底力を見せつける高速転換を経て、ROTTENGRAFFTYは“D.A.N.C.E.”を放ちながら性急なダンスと雄々しいチャントの空間を作り上げてゆく。N∀OKI(Vo)は「雨にも雷にも。お前らにも10-FEETにも、俺たちは絶対に負けねえ!」と反骨精神を剥き出しに叫び、“THIS WORLD”ではNOBUYA(Vo)を先頭にメンバーがフィールドへと突入していった。「人生なんて、思うようにいかへんからな。瞬間を生き伸びろ! 焼き付いていけ!」という言葉と共に繰り出されるのは、夜の帳が下りた後に訪れる夕焼け“金色グラフティー”。NOBUYAも「俺たちは、ここ京都で生まれ育ったROTTENGRAFFTYだ!」と高らかに声を上げ、僅か3曲で沸騰するライブを繰り広げてみせた。
10-FEET Photo by みやざきまゆみ
さあ、今一度の高速転換ののち、煽り映像もオープニングSEもなく登場した10-FEET。「すみません、3曲しかできません。でも絶対、最高の夜にします!」とTAKUMAが宣言し、“DO YOU LIKE…?”が猛スピードで駆け抜ける。ここに集まったすべての人が、その答えを共有しているだろう。“その向こうへ”ではロットンとMWAMの2組の2連砲ボーカルが援護し、「よっしゃー! 何とか間に合う! みんなごめんなあ。でもありがとう。来年またリベンジさせてくれー!」と最後に届けられたのは“CHERRY BLOSSOM”である。「みんな出てきてー! みんな助けてー!」という呼びかけで、ステージ袖のアーティストたちが再度集合。オーディエンスの頭上に無数のタオルが花びらのように舞い、3人はハグを交わして胸熱のフィナーレを飾るのであった。
10-FEET Photo by HayachiN
最高のアクト、最高のスタッフ、最高のオーディエンスの本領を見る、10周年の3日間。この喜びと悔しさを胸に、「京都大作戦」は新たな10年を刻み始めるのだろう。(小池宏和)
10-FEET Photo by みやざきまゆみ