「京都大作戦 2017」 2日目

「京都大作戦 2017」の2日目は終日好天に恵まれ、午前11時からライブ本編がスタートした。また、鞍馬ノ間ではこの日からバスケットボールのトーナメント戦「京都大作戦杯」も開催。今回は、4人対4人形式の対戦となっており、若く高い技術を持つプレイヤーたちも、ルールを巧みに利用して機転の効いた戦略を見せるチームも、観客を沸かせる熱戦を繰り広げていた。
「京都大作戦 2017」 2日目 - The BONEZ Photo by HayachiNThe BONEZ Photo by HayachiN
源氏ノ舞台でトップバッターを務めたのは、昨年、牛若ノ舞台で機材トラブルによる中断を余儀なくされ、リベンジが約束されていたThe BONEZだ。その轟音はJESSE(Vo・G)の表情と同じく歓喜に満ち、まさか今回も機材トラブルか、という意図的な演奏中断でドッキリを仕掛けて大盛り上がりを見せる。一方、牛若ノ舞台1番手はNUBO。ラウド&バウンシーなパフォーマンスを繰り広げながらtommy(Vo)は、2年前に愛娘が生まれた時にTAKUMA(Vo・G)にTシャツを貰ったことを語り、「いつかサイズが合うようになったら、この景色を見せたいと思います」と宣言していた。
「京都大作戦 2017」 2日目 - FIRE BALL with HOME GROWN Photo by みやざきまゆみFIRE BALL with HOME GROWN Photo by みやざきまゆみ
鋭いバンドグルーヴの中から扇動的なトースティングを飛ばし、フィールド一面を楽々と跳ね上がらせるFIRE BALL with HOME GROWN。自分たちでその光景に「なんじゃこりゃー!」と驚いていたのも可笑しかったが、この前日に配信されたばかりの新曲“みんなのうた”は、こんな懐の大きなライブにこそ相応しい、ハイブリッドレゲエの新たなスタンダードだ。青空に向かって突き抜けるような、爽快極まりないパフォーマンスを繰り広げてゆくのは藍坊主。“ハローグッバイ”も、5月にリリースされた“群青”も、一貫して楽曲に高い浸透力と普遍性を宿らせてきたキャリアの証だ。
「京都大作戦 2017」 2日目 - 東京スカパラダイスオーケストラ Photo by HayachiN東京スカパラダイスオーケストラ Photo by HayachiN
「京都大作戦 2017」 2日目 - 東京スカパラダイスオーケストラ Photo by みやざきまゆみ東京スカパラダイスオーケストラ Photo by みやざきまゆみ
さて、メンバーがそれぞれのデザインのスーツを着こなす東京スカパラダイスオーケストラ。期待どおりに“hammer ska”カバーや“Samurai Dreamers〈サビレルナ和ヨ〉feat. TAKUMA”、“閃光 feat. 10-FEET”といった賑々しいコラボを展開する。ただ、これらはセットリストの中で順に並ぶ構成にはなっておらず、その度に呼び込まれるTAKUMAの着替えが追いつかなくてあたふたしているのが楽しい。男気溢れるパフォーマンスという点では、Age Factoryも負けてはいない。全体重を乗せて楽器を掻き鳴らし、そして歌うような“疾走”の手応えも、すこぶるカッコよかった。
「京都大作戦 2017」 2日目 - Ken Yokoyama Photo by HayachiNKen Yokoyama Photo by HayachiN
“Let The Beat Carry On”でさっそくフィールドにマイクを投げ込んでしまうKen Yokoyama。フェスの歓喜と興奮を象徴するようなライブを繰り広げながら、「九州が大雨でたいへんなことになっているってことを、頭の片隅に置いて聴いてくれ。2011年の震災のときに作った曲だわ。気持ちは同じだよ」と届けられる“Ricky Punks Ⅲ”も、表現に確かな体温を感じさせるパフォーマンスだ。一方、牛若ノ舞台では、ソリッドなロックの力強さをメキメキと向上させているyonigeに驚かされる。フェスデビューが大作戦だったことを告げて感謝の思いを届けた後も、ひしゃげたサウンドでひた走る“恋と退屈”、そして切々としたフックが弾ける“さよならアイデンティティー”と、名演が連発だ。
「京都大作戦 2017」 2日目 - 湘南乃風 Photo by HayachiN湘南乃風 Photo by HayachiN
湘南乃風が出番を迎えると、10-FEETの3人とともにステージ中央で円陣を組み気合一閃。かつて10-FEETがリミックスを手がけた“Rockin’ Wild”が、パンキッシュな生演奏バージョンでぶっ飛んでいくという趣向だ。「祝いの舞を、ぎょうさん踊りよし」という、はんなりとした京訛りのナレーションに導かれる祭囃子ダンスホール“PAN DE MIC”を経てからの怒涛のヒット曲連打まで、力でねじ伏せるようなパフォーマンスであった。Crystal Lakeは、漆黒のメタルコアをぶっ放しながらも、“Mercury”の叙情的でスケール感の大きな曲調でしっかりとオーディエンスを巻き込み、人間同士の繋がりを描く表現や、世界に向けてカルチャーを発信する姿勢について言葉を投げかける。
「京都大作戦 2017」 2日目 - RADWIMPS Photo by みやざきまゆみRADWIMPS Photo by みやざきまゆみ
そして、京都大作戦初出演となるRADWIMPSである。“前前前世”のイントロが爆発的な歓声を誘い、ワンマンとはまったく異なる熱狂の空間を生み出してしまう。あらためて、時代のアンセムとして響くこの曲の力を思い知らされた。野田洋次郎(Vo・G・Piano)がピアノを奏でながら、哀しく美麗に届けられる“棒人間”も、RADWIMPSならではの時間を育んでいて素晴らしい。NAMBA69のステージは、JESSEも援護射撃に登場する強烈なパンク空間と化した。オーディエンスが所狭しとステージに流入し盛り上がってしまう“MY WAY”の光景は、まるでパンク・レジェンド=イギー・ポップのステージのようだ。
「京都大作戦 2017」 2日目 - Dragon Ash Photo by HayachiNDragon Ash Photo by HayachiN
「台風で中止になった幻の1回目も、ピーカンでやれた本当の1回目も、俺たちのメンバーが死んじまった年も、誰かが生まれた年も。10-FEETはずっと、バンドマンのために、何よりみんなのために、歯ぁ食いしばってこの場所を守ってきたんだ」。皆勤賞・Dragon AshKj(Vo・G)は、そんなふうに大作戦の10周年を讃え、「全員で楽しんで、笑って帰ろう」と呼びかける。新作『MAJESTIC』のブライトなミクスチャーサウンドが、大作戦を祝福するように響き渡っている気がした。そして牛若ノ舞台トリはGOOD4NOTHINGである。オープニングの“WALK A WINDING ROAD”が熱いシンガロングもすべて乗せて響き渡り、パンク・サバイバーたちの競演が印象深かったこの2日目をフィナーレへと導く。
「京都大作戦 2017」 2日目 - 10-FEET Photo by HayachiN10-FEET Photo by HayachiN
この日の10-FEETは、叫びともつかない大合唱を巻き起こす“その向こうへ”で始まり、熱風のようなマイクリレーを決める“STONE COLD BREAK feat. FIRE BALL”、バスケチームの大阪籠球会が華麗なボールハンドリングで楽曲とシンクロする“Freedom”、さらには、NAOKIの見せ場であるベースイントロをTAKUMAが妨害して、そこに湘南乃風も加わるという“2% feat. 湘南乃風”といったふうに、これでもかというほど賑々しく楽しいコラボ祭りと化す。

しかしそんな中でもTAKUMAは、「誰かを守るために、自分を守るために、カッコ良くなるために、相手の考えの裏の裏の裏を読んで、本当の純粋さを知りたいから、片っ端からみんなのことを疑って!……純粋さを知ることは疑うことやと思っていたけど、間違っていたかもしれん!」と苦悩を吐き出す。ここで披露される“太陽4号”は、果てしない思考と想像力の先で、どうにか自分たちのいる場所を肯定したいと願う、そんな思いに満ち満ちていた。さらに、“ヒトリセカイ”と一面の屈みジャンプを巻き起こす“goes on”で、本編を駆け抜けてゆく。
「京都大作戦 2017」 2日目 - 10-FEET Photo by HayachiN10-FEET Photo by HayachiN
アンコールでは、“RIVER”で登場したKjが「昨日、こーいっちゃん“TRUE LOVE”歌ったんでしょ? おれ、こーいっちゃんの“TRUE LOVE”でドラム叩いたことあんの。だから、このままこーいっちゃんに“RIVER”を歌わせてみようと思うんだけど」と告げてドラムセットの中に収まり、オーディエンスが一斉にライトを灯す中でKOUICHI(Dr・Cho)が歌うという、シュールな光景で笑いを誘っていた。そして「死ぬなよーっ! しぶとく生きろよーっ!」とメッセージも投げかけられる“風”で大団円を迎える。濃厚な2日目だったが、「京都大作戦」はここから史上初の3日目へと向かう。(小池宏和)
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