スピッツ @ さいたまスーパーアリーナ

スピッツ @ さいたまスーパーアリーナ - スピッツスピッツ
『SPITZ JAMBOREE TOUR 2009“さざなみOTRカスタム”』のファイナルの東阪ファイナルにして、結成以来初の大会場ライブ、東京は(埼玉だが)さいたまスーパーアリーナ2デイズ、の2日目。今週末に大阪2デイズが控えているので、セットリストとか演出上の詳しい内容などは書けないんだけど、まず、オープニングからして、いかにもスピッツらしくて笑ってしまった。

超満員のさいたまスーパーアリーナ、期待がじわじわと高まって、それが頂点に達した瞬間にBGMと客電がフッと消え、高らかに鳴り渡るSEと共にメンバー登場! すさまじい歓声! スタンドが地震のように揺れる! みたいな始まり方とは、まったく逆。客電がだんだん消え、BGMがなんとなく止まり、メンバー4人&キーボードのクジヒロコがソデからだらーっと出てきて、客席から歓声があったりなかったりしている間に、しれっと1曲目が始まり──という、「いや、せっかくさいたまスーパーアリーナなんだから!」「これまでどんなに人気が上がってもかたくなにやらなかった大会場を、初めてやってるんだから!」とか言いたくなる、気合いの入らないことおびただしい、拍子抜けするくらいいつものスピッツな、始まり方だった。

で。おそろしいことに、ライブの最後までそのまんまだった。そして、もっとおそろしいことに、それで最後までもってしまった。というか、それで、とてもとてもすばらしいライブだったのだ。
基本的に、ここまでのこのツアーとそんなに変わらない、懐かしくて意外な曲もあり誰もが待ち望んでいる代表曲もあるセットリスト。マサムネがギターを置いてハンドマイクになるあの曲。田村がジャンプしまくり走り回る、アップテンポなあの曲をやるタイミング。﨑ちゃんの前にびよーんとマイクが出てきてハモリを入れるあの曲のサビ。テツヤが、鳴った瞬間に「テツヤだ!」とわかる、あの音とあの手つきであのアルペジオを奏でる瞬間。クジヒロコも含めてそれぞれがひとことずつMCする、メンバー紹介が入る場所まで、すべて、いつものスピッツだった。

これまでスピッツが、かたくなに大会場でやらなかったのは、「小さくないとちゃんと伝わらない。生で数万人にいっぺんに伝えられるような世界観のバンドじゃない」と、バンドとスタッフが判断しているせいだと思っていた。あの、濃密だけどささやかでプライベートで、「大勢対スピッツ」じゃなく「聴き手一人一人とスピッツ」なライブ空間は、画面がなくて肉眼でメンバーを目で追えるくらいのキャパじゃないと作りえない、ということだと思っていた。反面、ロック・イン・ジャパンなどの大フェスでスピッツを観るたびに「全然問題ないじゃん、なんでワンマンでもやんないんだろう?」と不思議だった。演奏時間が短いと平気だけど、ワンマンの尺になると自信ないのかなあ、とか思っていた。

で、きっと、そうだったんだと思う。けど、昨日と今日やってみて、「あ、そんなことないんだ」ってことがわかってしまった、と思う。スピッツのあの、ささやかでミニマムでプライベートで、言わば「スピッツの部屋」みたいなライブ空間は、そのまま2万人規模に拡大しても、恐ろしいことに「ささやかでミニマムでプライベート」さを損なわないまんま「あり」になっていた。一部の曲を除いて大して動かない(というか、音楽性上動けない)メンバー、凝っているけどやりすぎない照明、シンプル極まりないステージ・セット。で、そこに、あの名曲たちが広がっていく瞬間の、とんでもないスケール感。
とにかく、いつもの通りに、すごくよかった。それが何よりも、驚異だった。

あと、メモリアルなライブだからって、ファンが熱狂しすぎない感じもいつものまんまで、なんだかよかった。スピッツのライブに初めて来た人は「なんでこんなに盛り上がっていないの?」っていうふうに見えるかもしれない。違うのだ。これで、みんな最高に楽しんでいるのだ。頭ん中を、視覚と聴覚を、スピッツの歌でいっぱいにすると、そこに全身を投げ出すと、こういう「あんまり生体反応なし」なリアクションになってしまうものなのだ、と思う。
特に、ほら、サビになるとオーディエンス全員そろって腕を突き上げたり、左右に振ったり、リズムに合わせてステージの方にかざしたりするの、あるでしょ。ああなるのはほんの一部のアップテンポな曲だけ、あとは腕をかざす人もいればかざさない人もいる、個々が思い思いに勝手に楽しんでいるあの感じが、なんだかとてもスピッツを表しているようで、好きです。

最後に、ちょっとだけどあった、「初の大会場だから」ってポイント、いくつか。

●盛り上がる曲での、田村とマサムネの移動距離。ステージの端まで行く。単に、「ステージが端まである」という物理的な問題だと思われる。

●曲数及びライブ全体の長さ。いつもよりも、ちょっとたっぷりだったような。

●それぞれのメンバーのMC。大会場だからってことにちなんだ内容でした。面白いのもいくつもありましたが、ウケてたから大阪でも使うかもしれない。書かないでおきます。

●ライブ全体のある部分に、あるものに対するオマージュが捧げられていた。でも、これも書くとネタバレだな。大阪が終わったら、ここに書き足すか、ブログかなんかに書くかします。(兵庫慎司)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする