1 生命のワルツ
2 サクリファイス
3 Lost!!
4 湖
5 モーニングベル
6 Black Market Blues
7 ロンリーボーイ
8 Kaleidoscope
9 眠り姫
10 火の鳥
11 バベルのこどもたち
12 ホワイトアウト
13 それから
14 スタンドバイミー
15 キャンドルの灯を
16 Discommunication
17 ロング・グッドバイ
18 火祭り
19 Cold Edge
20 太陽が欲しいだけ
「ただの『リベンジ』で終わらせたくないんだよね。行けるか東京!」
満場のオーディエンスに挑みかかるような菅原卓郎(Vo・G)の叫びが、Zepp Tokyoを雄叫びの如き怒濤の大歓声で埋め尽くしていく――。
昨年のアルバム『Waltz on Life Line』と、今年5月に発売された最新アルバム『BABEL』の2作品をタイトルに冠した、9mm Parabellum Bulletのツアー「BABEL on Life Line」。
『Waltz on Life Line』のリリースツアーとして昨年開催された「TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”」のうち、滝善充(G)の腕の不調によりアコースティック編成で回った6会場での公演に、ファイナルの東京公演を加えた形で行われた「BABEL on Life Line」だが、ツアー最終日となったこの日のZepp Tokyoに渦巻いていたのは、「リベンジ」を遥かに超えた、ロックの果てへと爆走するような痛快なダイナミズムそのものだった。
冒頭から重轟音スラッシュワルツ“生命のワルツ”でZeppを歓喜と狂騒の坩堝へ叩き込むと、ソリッドな突破力を備えた最新シングル曲“サクリファイス”を挟んで“Lost!!”、“湖”と『Waltz on Life Line』の楽曲を畳み掛けていく。
「楽しんでいこうな! 磨き上げてきたんで、俺たち」と序盤のMCで意気揚々と呼びかける菅原が「行くかみんな、東京! モーターショーに負けんなよ、みんな! 行けるか!」と突き上げる頃には、フロアはすっかり熱気と多幸感に満ちあふれている。
菅原/滝/中村/かみじょうの4人がそれぞれ作曲&プロデュースを担当した『Waltz on Life Line』の四者四様の多彩さ。そして、全曲滝の作曲&プロデュースによって過去最高レベルにヘヴィな統一性を実現した『BABEL』。まったく異なるふたつのアルバムの特性が、滝不在の状況ながら己のアンサンブルを格段に研ぎ澄ませてきた9mmの「今」の強度を通して、この上なくリアルかつ獰猛なロックとして体現されていたのが印象的だった。
中でも、『BABEL』のラストを飾る“それから”の、中村&かみじょうの複雑怪奇なリズムの変化と変幻自在な楽曲展開から、巨大なうねりのように立ち昇ってきた滝の妖艶な旋律は、バンドの困難な状況をも乗り越えてさらなる進化の道を辿ってきた「今」の9mmだからこそ具現化させ得るものだろう。
「俺たち今年で、メジャーでCD出して10周年になるんですよ。こんな9mmみたいなヘンテコなバンドが10年続くとか、誰も思ってなかったんじゃないかと――それは言い過ぎか(笑)。みんな信じてたか」と語りかける菅原に応えて、惜しみない拍手喝采がフロアに広がる。
滝がライブ活動を休止して以降、「どうやったらMAXで9mmが感じられるようなことができるか」を追求し、HERE・武田将幸/三橋隼人や為川をサポートに迎えライブを行ってきた――と、この1年を感慨深げに振り返る菅原。
昨年の「太陽が欲しいだけ」ツアーを急遽対バンゲストとして支えたアルカラとHEREが、まさにこの「BABEL on Life Line」ツアー中に壁に直面[註:アルカラは田原和憲(G)が事実上の脱退。HEREは宮野大介(Dr)が耳の不調により一時バンド活動から離脱]したことに触れて、「『俺たちはいつでも駆けつけるから、乗り越えていこうぜ』って(アルカラ・稲村)太佑さんに送ったら、次の日メール返ってきて。『乗り越えていく奴同士、頑張ろうにゃん』って(笑)。嬉しくなりましたよ」と語る菅原の言葉にも、この1年をひたむきに疾駆してきた力強さが宿っている。
「来年どうやっていこうかっていう悪巧み」を画策中、という菅原の言葉からも、「その先」の挑戦と冒険へと沸き立つエモーションが窺えたこの日の9mm。その未来へ向けた確かな足取りを雄弁に物語る、圧巻のロックアクトだった。(高橋智樹)
終演後ブログ