BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST - All photo by 古溪一道All photo by 古溪一道
「気付いたら今、こういうふうにたくさんの人が観に来てくれて。俺たちが『イェーイ!』とか言ったら、『イェーイ!』って返してくれたりして……何だろうね、ちょっと信じられない光景だね。すっげえ嬉しいよ!」――そんな藤原基央(Vo・G)の言葉そのままに、ぎっしり満場の新木場STUDIO COASTには眩しいくらいの祝祭感があふれていた。最高の一夜だった。

今年9月の幕張メッセ2Daysを皮切りに、来年2月まで約5ヶ月・計29公演にわたって開催中の全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」。
全国アリーナ会場と東名阪ライブハウスの日程が複層的に入り混じる中、新木場STUDIO COAST公演2日目のステージに立ったBUMP OF CHICKENの4人が体現していたのは、結成21年目のタフな音の肉体性をもって高らかに鳴り渡る、音楽への初期衝動と根源的な喜びそのものだった。

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST
最新アルバム『Butterflies』の“GO”、さらに“アンサー”をはじめ『Butterflies』以降の配信シングル曲など、バンドの「今」を指し示す楽曲はもちろんのこと、「『あれ? この曲知らないな』と思ったら、新曲のつもりで聴いてください。それ、昔の曲なんで(笑)」という直井由文(B)の言葉からもわかるように、不動のアンセム“天体観測”をはじめバンド初期の楽曲群がライブの随所に盛り込まれていて、イントロが鳴った瞬間に満場のオーディエンスの驚きと感激の声を呼び起こしていたのが印象的だった。

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST
最新配信シングル曲“記念撮影”の透徹した音像と凛とした歌声が、オーディエンスの腕に光るPIXMOB(LED内蔵リストバンド)や目映いレーザー光線とリンクして描き出すハイパーな覚醒感。“アンサー”の《心臓が動いてることの/吸って吐いてが続くことの/心がずっと 熱いことの/確かな理由を》というフレーズに確かな生命力を与える升秀夫(Dr)のタイトなビート感。“ray”のカラフルなアンサンブルと共鳴するかのように、PIXMOBがハンドウェーブとともに左右に揺れ、フロアがジャンプと歓喜に震えた瞬間。増川弘明(G)の澄み切ったアルペジオから流れ込んだ“リボン”が、バンドの足跡と未来への福音の如くSTUDIO COASTを包み込んだ瞬間――。
4人の揺るぎないアンサンブルが、どこを切り取っても名場面と呼ぶべき多幸感を生み出したこの日のライブ。その中でもひときわ際立っていたのは、ステージとフロアの近さ以上に、バンドと観客が一丸となって描き出す一体感だった。

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST
直井の呼びかけに応えて会場一面に巻き起こる「コースト!」コールから、増川とファンとのコール&レスポンスに突入したり、オフマイクで「楽しーい!」と叫び上げる升に藤原が「楽しーい!」とオフマイクで続いたり、“アルエ”を演奏する前に藤原が「次の曲は、17〜18くらいの曲で。当時、だいたいチャリンコ乗ってて。どっか行こうと思って、何もしないで30分くらい走って帰ってくるっていうのがだいたい日常で(笑)。その時に、むちゃくちゃ夢中になったアニメがあって――そのアニメの中の女の子を、好きになりすぎちゃって(笑)」と少年時代の思い出を惜しみなく語ったり……といったシーンの数々は、メンバー4人の開放的なモードを明快に象徴していた。
そして、そのワクワクするような開放感は取りも直さず、結成21年目にしてなおも沸き立つ初期衝動を、藤原/増川/直井/升が今この瞬間に確かに感じていることの表れでもあった。

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST
藤原「あらゆる衝動を自転車を漕ぐことでしか消化できなかった、千葉県佐倉市臼井っていう町の我々だったんですが。それがね、ギター持って、曲作ってみようってなると……そういうものに全部ぶち込まれちゃうんですね。でも、そんなすっごい個人的な想いで書いたんだけどさ、こんだけ大勢の人の前で歌うなんて思わなかったよ。20年ぐらい前の曲だよ?」
増川「……急に恥ずかしくなってきた(笑)」
――といったバンド黎明期のエピソードを振り返るやりとりに、BUMPの核心に直に触れるようなリアルな感覚がフロアに広がり、会場の一体感をよりいっそう高めていく。

「俺んちの、雨戸を閉めた六畳間の中で、だいたいの曲が生まれた」と10代の頃を回想していた藤原。「自転車しか漕いでなかった奴が、ギター持つと、こんな景色にも出会えるんだなあと思って――21年やってるわけですけども、六畳間の雨戸を閉め切って曲書いてた頃なんかには、なかった曲があるんだよね。みんなで歌える曲ってのがあるんだよね。なんかね、作る意味が今はあるんだ。それがすげえ嬉しい、一緒に歌おう!」……一切の虚飾を排した藤原の言葉に導かれて、オーディエンスの歌声がさらに熱量を増していったことは言うまでもない。
そんな中、初期の名曲のモチーフを総括するような詞世界を持つ“fire sign”(『ユグドラシル』/2004年)が、増川・藤原・直井のブルースソロバトルや観客のコーラス、炎の色彩を照らし出すPIXMOBの光と乱反射し合いながら、壮大な高揚の風景を繰り広げていた。

BUMP OF CHICKEN/新木場STUDIO COAST
熱演を終えた後、舞台にひとり残った藤原が再び「あらゆる衝動はチャリンコにぶつけるしかなかったわけですよ、僕の10代後半は」と語り始める。
「俺、高校やめたばっかで、『何しようかな』、『どうすればいいのかな』って――考えたって答えもないし、ほんと何にも考えることないまま、ただ漫然と『今、一番やりたいこと/やるべきこと』みたいな感じでギター弾いて、ちょっとずつ曲を作って……それを今、当時来たこともない、聞いたこともない新木場っていう場所で、こんだけの人が聴いてくれてて。俺じゃねえ奴が、こんだけ声合わせて歌ってくれるっていうのは――そんなの、ほんと想像つかなかったんだよ」
万感の想いとともに語る藤原に、オーディエンスがじっと聞き入っている。そして、「ベタなこと言うよ? 『音楽やっててよかったな』って、みんなに思わせてもらった。本当にどうもありがとう!」という心からの言葉とともに深々と一礼する藤原に、割れんばかりの拍手喝采が降り注いでいった。
ひたむきに音楽を探求し続けてきたBUMP OF CHICKENの「原点」と「最進化形」に同時に向き合うような至福の時間が、そこには確かに流れていた。ツアー次回公演は11月18・19日、広島グリーンアリーナ!(高橋智樹)

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終演後ブログ
【速報】BUMP OF CHICKEN新木場2日目。「音楽やっててよかった」と藤原基央は喜びを語った
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