Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館 - All Photo by TAKAHIRO TAKINAMIAll Photo by TAKAHIRO TAKINAMI

●セットリスト
01. Isolation
02. Spirit Inspiration
03. Like a Shooting Star
04. You’re in Motion
05. Brotherhood
06. The Poison Bloom
07. In Future
08. Directions We Know
09. Midnight Train
10. 村雨の中で
11. Red Light
12. Damage
13. Gravity
14. 青の雫
15. Mirror Ocean
16. Bog
17. Milestone
18. Rendaman
19. 白昼
20. Out of Control
21. きらめきの花
22. November 15th
(アンコール)
En1. シナプスの砂浜
En2. Shimmer Song
En3. Around the Clock


「早いもんで、バンド始めて10年になります。俺たちは自分たちを信じて10年間、毎年曲を作り続けて、音楽で証明してきたつもりだけど……ここにいるみんなが、俺たちの10年の証明だと思うんで!」
ありったけの想いとともに呼びかける村松拓(Vo・G)の言葉が、日本武道館ソールドアウト満場のオーディエンスの熱い拍手喝采を呼び起こしていく――。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

2008年の活動開始から今年で10周年を迎えたNothing’s Carved In Stoneにとって初の日本武道館ワンマンライブとなった、「Nothing's Carved In Stone 10th Anniversary Live at BUDOKAN」。
「武道館に立ちたかったんじゃなくて、武道館にみんなを集めたかったんだよね。本当にそれだけ!」と村松は晴れやかな表情で語っていたが、ロックの核心をソリッドに研ぎ澄ませてきたナッシングスの4人と、その音楽を愛し続けてきたファンとの揺るぎない絆が、そのまま無上の多幸感となって咲き誇ったような一夜だった。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館
Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

ステージ背後のLEDビジョンでは開演時間:17時半までのカウントダウンが刻まれ、暗転した会場にライブタイトルと「Are You Ready?」の文字が浮かんだ途端、場内は雄叫びの如き歓喜の大歓声に包まれていく。
そして、村松拓/生形真一(G)/日向秀和(B)/大喜多崇規(Dr)がステージに登場、4人で呼吸を合わせて轟かせた1曲目――1stアルバム『PARALLEL LIVES』の幕開けを飾る“Isolation”に応えるように、見渡す限りに拳が突き上げられ、客席が激しく揺れる。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館
Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

さらに“Spirit Inspiration”、“Like a Shooting Star”とキラーナンバーを連射。迷いと葛藤の渦から力強くポジティビティを突き上げるような村松のエモーショナルな絶唱も、衝動がそのままギターの響きになったような生形のエッジィなリフや渾身のソロプレイも、ミステリアスなラインや鋭利なスラップでアンサンブルを躍動させる日向のベースも、一音一音に大胆さと精緻さが宿ったような大喜多の鮮烈なドラミングも、すべてがナッシングスという強靭なロックのプリズムとなって響き渡り、観る者すべての魂を鼓舞する原動力となっていく。至上の風景だ。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

“You’re in Motion”では4人の熱演とせめぎ合うように舞台狭しと火の玉が噴き上がる――という大会場ならではのサプライズもあったが、それ以外は特殊な演出を盛り込むこともなく、バンドが歌い奏でる音楽だけでオーディエンスと対峙していたし、それがこの日のアクトの高純度なロック祝祭感にもつながっていたと思う。
「よく来たね! 俺たちNothing’s Carved In Stoneの4人と、俺たちの音楽に共感してくれる、俺たちと似た魂の形を持った感性の人間が、ここに……こんなに来たね!」という村松のMCにも、この瞬間の充実感が滲む。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

「踊ろうぜ!」の呼びかけとともに武道館を震わせた“Brotherhood”、インダストリアルな質感のアンサンブルとレーザー光線の輝きが乱反射する“In Future”など、これまでリリースされた9作のアルバムを網羅しつつ、約2時間の本編の中で大きなストーリーを編み上げるかのようなセットリストを構築していたこの日のアクト。
中でも“Directions We Know”、“Damage”など、今年2月リリースの最新アルバム=『Mirror Ocean』から最も多くの楽曲が盛り込まれ、磨き抜かれた「最新型」の音像を武道館の広大な空間に展開していたのが印象的だった。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館
Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

ライブ中盤、日向のハイブリッドなベースと生形の生音っぽいギターサウンドのコントラストの果てに壮大な音風景を繰り広げた“Gravity”に続けて、村松がアコギを構えて歌ったのは“青の雫”。震災に寄せて作られたというこの曲の前に、「遠く離れた人のことを思う曲っていうよりは、この曲を持っていつでも俺たちはつながってるんだっていうか、『あいつも今日はどこかで頑張ってんのかなあ』みたいな……そういう曲になりました」と村松は語っていた。透徹した音と言葉のひとつひとつが、彼らのひたむきな想いそのもののように思えて、胸が熱くなった。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

再び火の玉とともに撃ち放った“Rendaman”から、ライブはさらなるクライマックスへ。“Out of Control”で武道館をでっかく揺さぶり、「最高だぜ!」と村松の歓喜のコールが響く。そして、「1万人くらいいるんじゃないの? もっと見してくれよ!」と会場一丸のクラップを煽りつつ、「10年やってこれたのは、みんなのおかげ。必要なもの――それはみんなの笑顔だよ! 誰も置いていきたくない! ついてこいよ武道館!」の魂の絶叫が、“きらめきの花”で一面のハンドウェーブとシンガロングを巻き起こしていく。
「最高の景色をありがとう! 10周年に相応しい、始まりの曲をやって終わりにします」という言葉に続けて披露したのはもちろん、バンド結成当時の心象風景がリアルに焼き込まれた名曲“November 15th”。武道館激震レベルの高揚感で、本編を締め括ってみせた。

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「ナッシングスの武道館も悪くないだろ? 今日みんなわかっちゃっただろ? こういう、でかいところが似合うバンドだって」……アンコールで“シナプスの砂浜”、“Shimmer Song”を演奏した後、感慨深げに語りかける村松の言葉に、観客の惜しみない拍手と歓声が広がっていく。
「みんなの応援、しっかり届いてるから!」と客席の隅々にまで手を振ってみせた大喜多。「俺がしゃべったら台無しだから……」と照れ臭そうにMCを避けていた日向。その様子を見て「ちゃんと喜んでるんですね、今日を」とその想いを代弁していた村松。「今日は来てくれてありがとう。次はまたライブハウスで!」と「その先」への情熱を覗かせていた生形。「長い長いバンドになると俺たちは思ってます。ついてきてください! また会いましょう!」の村松のコールに続けて、会場が客電で真っ白に照らされる中、ラストにひときわ強烈なロックの絶景を描き出した“Around the Clock”が、武道館を高らかな歌声で満たしていった。

Nothing’s Carved In Stone/日本武道館

11月15日(木)には大阪・なんばHatchで「Live on November 15th 2018」を開催することを発表していたNothing’s Carved In Stone。
「今メンバーで話してるのは――10周年をきっかけにして、2年か3年ぐらい本気で突っ走ってみようぜ、みたいな話をしてるんだ。何をするとかはまだ内緒で申し訳ないんだけど、そこだけは信じてください」と村松はバンドの「これから」への意欲と決意を語っていた。ナッシングスの10年間の金字塔にして、さらなる冒険への壮大な羅針盤でもあるような、最高のロックアクトだった。(高橋智樹)

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