●セットリスト
[第1部]
1.脱コミュニケーション
2.Wake Up
3.新しい季節へキミと
4.星の砂
5.悲しみの果て
6.ワインディングロード
7.リッスントゥザミュージック
8.昔の侍
9.大地のシンフォニー
10.絆
11.too fine life
12.珍奇男
13.今をかきならせ
14.風に吹かれて
15.桜の花、舞い上がる道を
16.笑顔の未来へ
17.ズレてる方がいい
18.俺たちの明日
19.マボロシ
20.朝
21.悪魔メフィスト
[第2部]
22.Easy Go
23.デーデ
24.かけだす男
25.旅立ちの朝
26.風
27.四月の風
28.so many people
29.ファイティングマン
(アンコール)
EN1.今宵の月のように
EN2.ゴクロウサン
新年の祝祭感も多幸感も根底から震撼させるように、冒頭から暗闇に響き渡るディストーションギターのフィードバックノイズ。そして、宮本浩次(Vo・G)が繰り出すミステリアスなイントロのフレーズから、“脱コミュニケーション”の紅蓮の音像へ――。エレファントカシマシ恒例の「新春ライブ」は、1曲目から持てるエネルギーのすべてを極限炸裂させるかのような、凄絶な幕開けを迎えた。
宮本浩次/石森敏行(G)/高緑成治(B)/冨永義之(Dr)の4人にサポートメンバー=ヒラマミキオ(G)&村山☆潤(Key)を加えた6人編成で、“脱コミュニケーション”から最新アルバム『Wake Up』の表題曲“Wake Up”へ流れ込んで《ゆこう go go》の激唱で空気を震わせ、一面に拳を高々と突き上がらせていく。
さらに、続く“新しい季節へキミと”では金原千恵子(Violin)・笠原あやの(Cello)らストリングスカルテットが参加。伸びやかなメロディと楽曲を10人一丸となって壮麗なロックシンフォニーへと昇華してみせた。「エブリバディ!」と呼びかける宮本に応えて、満場の観客が舞台に手を振る。最高の一体感が生まれていく。
昨年同様に本編は二部構成の形で行われた今回の「新春ライブ」。第1部で特に印象深かったのは、最初と最後に配された『悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜』曲の緊迫感がライブを支配していたこと。“脱コミュニケーション”の熾烈なダイナミズムと呼応するかのように、第1部の締め括りには鳥のさえずりのSE“朝”からカオティックな“悪魔メフィスト”を轟かせて、警告灯の如き照明とともに武道館をスリリングな戦慄と高揚感で包んでいた。
そしてもうひとつの特徴は、アコギ/ピアノ/バイオリン/チェロの“風に吹かれて”、ストリングス+ピアノの“マボロシ”で見られた、「宮本+サポートメンバー」という編成での演奏。ロックの高純度結晶の如きバンドアンサンブルと鮮やかなコントラストを描き出し、武道館の広大な空間をも遥かに凌駕するスケールと奥行きを備えた音楽世界を編み上げていた。
宮本の荒ぶる歌声とせめぎ合いながら、剥き身のロックを1曲また1曲と響かせていく石森/高緑/冨永。そして、その演奏を一身に受け止めながら、1曲ごとに血の一滴まで燃やし尽くすような絶唱をなおも高ぶらせていく宮本。そんなライブの中でも、オクターブ超えのアップダウンを繰り返すメロディを鮮やかに歌い上げていく宮本の姿は、それ自体が奇跡のようだ、と改めて思わずにいられなかった。
さらに、“Wake Up”、“Easy Go”とともにこの日『Wake Up』から披露されたのは “旅立ちの朝”。ストリングスを迎えての流麗なサウンドスケープが、《橋を渡り山を越えて今 俺よ もう一度起て》と終わりなき旅と闘いへ自らを駆り立てる宮本の情熱を目映く映し出していた。
ほとんどMCらしいMCもなく駆け抜けたこの日のステージの中でしかし、メンバーを紹介しつつ「すごく盛り上がって、最高の『新春ライブ』になりました!」と呼びかける宮本の言葉は、さらなる「その先」を希求する衝動に満ちているように思えた。
第2部の終盤、“風”、“四月の風”に続いて“so many people”を宮本が歌い始めたのは当初の予定とは異なっていたようで、この曲を弾くはずだった金原らストリングスチームが慌てて舞台に合流。そんなサプライズな展開までもが、この日のアクトにおいては最高のスパイスとして機能していた。
珠玉のロックンロールナンバー“ファイティングマン”では「いい顔してるぜ、エブリバディ! よく見えないけど」とオーディエンスを煽りまくり、最高の表情でクラップの波を巻き起す観客に「カッコいいぜ!」と渾身の投げキスで感謝の想いをアピールする。そんな宮本のバイタリティあふれる佇まいが、1月の武道館をむせ返るような熱気で満たしてみせた。
終演後ブログ