LiSA/横浜アリーナ

LiSA/横浜アリーナ - All photo by 上飯坂一All photo by 上飯坂一

●セットリスト
1.Thrill, Risk, Heartless
2.Rising Hope
3.JUMP!!
4.rapid life シンドローム
5.アシアトコンパス
6.1/f
7.LOSER ~希望と未来に無縁のカタルシス~
8.the end of my world
9.DOCTOR
10.Blue Moon
11.TODAY
12.紅蓮華
13.ROCK-mode'18
14.ADAMAS
15.LiTTLE DEViL PARADE
16.Psychedelic Drive
17.Rally Go Round
18.Hi FiVE!
(アンコール)
EN1.スパイシーワールド
EN2.Catch the Moment



LiSA/横浜アリーナ

「忘れないで。どんな日が続いても最高の今日は自分で作れます。だから1日1日、全部を楽しんでください。世の中の全部を楽しんでこう! OK?」

ライブハウスもホールもアリーナもフェスも、国内外問わず、様々な会場をとっておきの遊び場に変えてきたLiSA。そんな彼女が横浜アリーナ2デイズ公演=「LiVE is Smile Always~364+JOKER~」で私たちに伝えたのは、この世界の全部を、自分たちの日常そのものをあなただけの遊び場に変えてしまえばいいんじゃない?という、過去最大級のメッセージだった。

LiSA/横浜アリーナ

物語の舞台は、トランプのマークをシンボルとした4つの国から成り立つ世界。ある日を境に暦が崩れ始め、原因を究明すべく選ばれし5人の冒険者が旅に出発することになる――そんなことを伝えるアニメーションがまずオープニングに放映された。これ以降もライブの随所にVTRが挿し込まれ、その物語とともにセットリストが進行していく。「私は誰なんだろう」、「生きている意味なんてあるのかな」と悩む5人目の冒険者は、おそらくかつてのLiSAの投影なのだろう。

“Thrill, Risk, Heartless”から演奏がスタート。フードを深く被ったLiSAは、濁流のようなバンドサウンドを従えながら手でピストルを作り、その銃口を私たちに向けた。観客と声で交戦するような“Rising Hope”の光景は何度見ても壮観。最初の2曲こそ鋭利だったが、MCでは一転、「ついにやってまいりました、平成ラストの日! そんな大事な日を任せてもらったからには……期待しかしないでね?」といたずらっぽく告げてみせた。

LiSA/横浜アリーナ

“rapid life シンドローム”直後のコール&レスポンス以降は、曲により、男女2名ずつのダンサーが登場。“アシアトコンパス”ではダンサーとともに軽やかにステップを踏み、“LOSER ~希望と未来に無縁のカタルシス~”では激しくエレキを掻き鳴らす。さらに骸骨の人体模型と絡みながら唄う“DOCTOR”では、骸骨の頭部にカメラが仕込まれていたため、LiSAの艶めかしい表情・しぐさが大画面に映し出されていた。

――と、前半戦からして見どころ満載だったが、この日は特に、バラード曲の存在感がこれまでのライブよりも際立っていた。“1/f”は、LiSAがスタンドマイクに向かい、その後ろでダンサーが舞う。LiSAの歌はどんどん剥き出しになっていき、ダンサーの動きはまるで彼女の情動を視覚化しているようだった。ギターの残響音が鳴るなか、ゆっくりと花道を歩き、“Blue Moon”はセンターステージから披露。ペンライトの光による青い海の真ん中で歌われた《変わらない優しさが今は悲しいんだ/そっと夢見た エタニティー》というフレーズは一層切なく感じられた。続く“TODAY”は冒頭が無伴奏で、アコースティックギターをはじめとしたバンドサウンドが次第に加わっていくアレンジ。岐阜の山奥で一人歌っていたという原風景があるからか、これだけ多くの人に求められるようになろうとも、彼女の歌はどこか孤独である。アニメーション内にあった「一人では生きられないからこそ一人を感じることもある」という一節の意味を痛感させられた場面だった。

LiSA/横浜アリーナ

「悲しいことも苦しいことも、全部背負って令和に進む準備はいい? 全部、最高に咲かせましょう!」。そうして演奏されたのが、7月にリリースされるニューシングルの表題曲“紅蓮華”だ。傷だらけになっても咲き誇れ。何度でも這い上がる意思を体現する彼女の歌は、凛とした立ち姿をしている。人生というキャンバスを感情という色彩で塗りつぶすかのように。LiSAの纏う真っ白なドレスは、照明により深紅に染まっていった。

世界を切り拓く切り札、JOKERは自分自身。そんな言葉とともにアニメーションが終了すると、“ROCK-mode'18”以降は怒涛の展開。“ADAMAS”では、LiSA+ダンサー4名が頭を振り乱しながらフロアタムを叩き、客席からは雄叫びのような歌声が上がった。「LDP!」コールとともに“LiTTLE DEViL PARADE”へなだれ込んだ頃には、場内は凄まじい熱量に。1万3千人が一体に――というよりかは独自の意思を持った数々の「1」をLiSAの音楽が率いている、と言う方がきっと正しいだろう。その熱狂は“Hi FiVE!”で本編を終えるまで冷めることがなかった。

LiSA/横浜アリーナ

アンコールで披露された“スパイシーワールド”は、自分のことを「無敵でいたいと思うのに肝心なところでダメダメ」だと言い、そんな自分に対し「ギリギリでいいんだよ」と言ってくれる存在がファンのみんななのだと語る、LiSAの等身大の言葉が詰まっていた。また、ステージに再登場した時、自分のことを話すよりも先に「本当に君たちはすごいよ! 本当に本当にすごかったよ!」とオーディエンスを賞賛していたのも印象に残っている。そのような人だからこそ多くの人に愛されるようになったのだということが、“Catch the Moment”の温かな大合唱に表れていた。守るべき存在――言うまでもなく、LiSAにとってのそれはファン一人ひとりのことである――ができるということは、弱みができるということでもあるが、いざという時に踏ん張るための理由ができるということでもある。そうやって、弱さも強さも携えながら、一歩ずつ進んでいくのがLiSAの闘い方なのだ。

LiSA/横浜アリーナ

終演後に客席の様子を動画で録っていた時、自身の決め台詞「今日もいい日だっ」を「今日もいい令和だっ」とアレンジしてみせたLiSA。しかしこの日はまだ平成だということにすぐ気づき、数秒後には慌てて訂正。そういうおっちょこちょいな一面もまた彼女らしい……のか? ともかく、そのおかげでみんな笑顔でカメラに映れたのだから、オールOKということで。最後の最後まで、愛おしい瞬間だらけのライブだった。(蜂須賀ちなみ)

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