神宮司「みんなの拍手が降ってくる!」
と思わずメンバー自身も驚いていたほど満員の、しかも熱気に満ちたオーディエンスに迎えられて、武道館2Days公演・2日目のステージに立ったレミオロメン。昨年リリースの4thアルバム『風のクロマ』を引っ提げての全国ツアーも後半戦=『風のクロマII』に差し掛かり、Key・皆川真人&G・河口修二のサポート・メンバーを擁したその演奏にはいよいよタイトな求心力と強さが宿ってきている。
「みんなに楽しんでもらえるような曲順で、いっぱいやっていきたいと思います!」と宣誓する藤巻。『風のクロマ』の楽曲を中心にしたメニューであるのはもちろん、折しもベスト・アルバム『レミオベスト』をリリースした直後ということもあって、“雨上がり”など初期の楽曲から“粉雪”のような超代表曲まで織り交ぜながら、レミオロメン自身のキャリアもそっくり抱えてみんな一緒に「その先」へ向かおうとする、意欲的なステージだった。
たとえば“幸せのカタチ”の、藤巻のフルアコの音色&前田のチョッパー・ベースが絡み合って豊かな響きが生まれる瞬間。たとえば“青春の光”の、ラウドでアグレッシブなサウンドの海から藤巻の歌メロが天高く飛翔する瞬間。たとえば“夢の蕾”の≪雪をかぶった夢でも/あなたへと続いていく≫というフレーズが壮大なスケールでもって響き渡る瞬間……それら1つ1つをいくら因数分解しても、こうして武道館を揺るがすほどの高揚感を生み出しているレミオロメンの魔法はまるで解けない。歌声とメロディとバンド・サウンド、という極めてシンプルな要素を、藤巻/前田/神宮司の3人はひたすら真摯に育み続け、ついにはぶっとい幹と豊かな枝葉を持つポップ・ミュージックの大樹となったレミオ。その果実を、1万人のオーディエンスとともに分かち合うような、実にピースフルな空間がここにはあった。
終盤、アルバム『風のクロマ』について静かに語る藤巻。前作アルバム『HORIZON』から2年半くらいの間、混沌とした時間を過ごしてきたこと。その苦悩を超えて生まれたアルバムに「色の鮮やかさ、グラデーション」という意味を持つ「クロマ」という言葉を与えたこと。自分がもともと持っている色と、人と関わることで生まれる色があるということ。それでも透明にはなれないから、自分の持っている色を大切にしたいということ……それら1つ1つが鮮明なメッセージとなって、この日集まった1人1人の心に染み入っていくのがわかる。
藤巻「アンコールも、ほっこりやっていきましょう!」
前田「もっこり?」
という脱力なMCの掛け合いも、オーディエンスの熱気にさらに油を注ぐものだった。そして、いよいよフィナーレ……というところで、「来年もやりたいです。来年もここでみんなと会いたいです」という前田。その言葉を受けて、藤巻が言う。「来年、レミオロメン結成10周年なんですよね。啓介の家のこたつで『レミオロメンやんない?』って言ってから(笑)。だから……何かやれたらいいですね」。1万人の観客から静かに湧き上がった拍手は、やがて大きなうねりとなって武道館いっぱいに広がった。
皆川&河口とともに5人で深々と客席に一礼し、感動的な一夜を締め括ったレミオロメン。今回の武道館2Daysの後は静岡/大阪/札幌/仙台/神戸/福岡とツアーを回り、そして……5月5日(火・祝)と6日(水・休)にはツアーの集大成とも言うべきさいたまスーパーアリーナ2Days公演が控えている。そこには何色の風景が広がっているか――心震わせながら待っていてほしい。(高橋智樹)