the HIATUS/東京国際フォーラム ホールA

the HIATUS/東京国際フォーラム ホールA - All Photo by 三吉ツカサ(Showcase)All Photo by 三吉ツカサ(Showcase)

●セットリスト
01.Ghost In The Rain
02.The Flare
03.The Ivy
04.Hunger
05.Servant
06.Thirst
07.Unhurt
08.Deerhounds
09.Horse Riding
10.Bonfire
11.Time Is Running Out
12.西門の昧爽
13.Antibiotic
14.Waiting For The Sun
15.Little Odyssey
16.Tree Rings
17.Regrets
18.Insomnia
19.Storm Racers
20.Lone Train Running
21.紺碧の夜に
(アンコール)
EN1.Twisted Maple Trees
EN2.Firefly / Life in Technicolor
(ダブルアンコール)
WEN1.Moonlight


the HIATUS/東京国際フォーラム ホールA
「『10周年だから』っていうのも、もちろんあるんですが……一度の人生なんで、どんどん行ったことのないところに行ってみたいと思って。国際フォーラム、みなさんに連れてきていただきました!」
2009年のthe HIATUS活動開始から10周年を記念して行われたワンマンライブ「the HIATUS 10th Anniversary Show at Tokyo International Forum」。満場の東京国際フォーラムの客席を見回しながら語りかける細美武士(Vo・G)の表情は、どこまでも晴れやかだった。

最新アルバム『Our Secret Spot』を携えての全国ツアー「Our Secret Spot Tour 2019」を完走したばかりのthe HIATUS。
だが、この日のホールライブでは一転、1stアルバム『Trash We'd Love』の“Ghost In The Rain”で幕を開け、“The Flare”から“The Ivy”へと紅蓮の音世界を畳み掛けるカオティックな展開、さらに新作からの“Hunger”と“Servant”を経て“Thirst”、“Unhurt”へ流れ込み、精神と思考の奥底へと潜行していくようなハイパーな緊迫感を編み上げていく――といった具合に、10年のキャリアを凝縮したような高密度なセットリストで舞台に臨んでいた。
10年間の道程の中で生み出してきた楽曲を、最も研ぎ澄まされたthe HIATUS最進化形の音像として響かせることで、バンドの10年史のみならずオーディエンスの10年間をもアップデートしていこうとするような、切実で誠実な時間が刻一刻と流れていく。

エモーショナルなギタープレイで唯一無二の音楽世界を強烈にドライブさせるmasasucks(G・Cho)。豊潤で鋭利なアンサンブルの中に凛とした透度と輝度を漂わせる伊澤一葉(Key)。緻密に織り成されるthe HIATUSサウンドにロックンロールの匂いと強度を与えるウエノコウジ(B)。一切のステレオタイプを排し、精緻かつダイナミックなビートを繰り出す柏倉隆史(Dr)……ロックシーン屈指のプレイヤーたちの繰り広げる渾身の熱演が、生命力そのもののような細美武士のボーカルワークと渾然一体となって、国際フォーラムの広大な空間を荘厳なまでの高揚感と歓喜で満たしていく。
細美がアコギをかき鳴らし歌う“Horse Riding”のシャッフルビートが、驚くほどのスケール感の地平を切り開いた瞬間。音の幾何学模様の如き伊澤のピアノフレーズが印象的な“Bonfire”が客席一面のクラップを呼び起こした瞬間――。
人間の憂いや悲しみ、嘆きといった感情に真っ向から対峙し、「その場限りの楽しさ」ではなく「今を生きる者の誇り」を軸として楽曲へと結晶させてきたthe HIATUS。その探求と闘いの歴史が、オーディエンスの熱気によって一つひとつ祝福されていくような感覚が、この日のライブには確かにあった。

ライブ中盤にはMONOEYESでもお馴染みのもうひとりのドラマー=一瀬正和も登場。「幽霊部員です!(笑)」と会場を沸かせつつ、“Antibiotic”や“Waiting For The Sun”ではツインドラムでの演奏を披露。さらに、“Little Odyssey”では2012年のホールツアーにも参加したチェリスト=徳澤青弦が細美の絶唱&伊澤のピアノとともに澄み切った音空間を創り上げたかと思うと、続く“Tree Rings”ではバイオリンの伊藤彩&皆川真里奈も加わり、8人編成のフォーマットで響かせる壮麗なサウンドスケープは“Regrets”から“Insomnia”へスリリングなまでに激しく美しく高まり、「行こうぜ!」の細美のコールに応えるように《Save me》の割れんばかりのシンガロングが眩しく弾ける。

the HIATUS/東京国際フォーラム ホールA

ストリングストリオが舞台を去り、メンバーが改めてそれぞれの想いを語る。「10年後に我々がどんな音楽を鳴らせてるのか、今からすごく楽しみです」とさらなる意欲を覗かせたウエノ。「またワイワイしましょうよ。the HIATUS、『11年目』始めます!」の宣誓で客席を歓喜で沸かせたmasasucks。「いつもバンドメンバーに支えられてます。大事な居場所になりました」と感慨のあまり声を詰まらせる柏倉。「お客さんもそうだろうけど、『ここにいたら間違いねえな、曲がっていかねえな』って」と実感を込めて語る伊澤。常に熾烈なまでに真摯に音楽と向き合い続けたthe HIATUSだからこそ描き出せた、メンバーもオーディエンスも一丸の信頼関係。それこそがバンド自身の至上の原動力である――ということを、その表情がリアルに伝えていた。

そして、4人の万感の言葉を受けて細美が語る。
「俺たちの10年間を祝ってくれる、っていうのももちろんあるだろうけど、みんなの10年間も、たぶんすげえいろんなことがあったと思うんだ。その10年を共有できたし、いろんなシーンを俺たちの曲がもしかしたら飾ったりね。この曲を聴くと、辛かったこと、楽しかったこととか思い出したりする、っていう一日になってたらすげえいいなと思う。これからもよろしくお願いします!」……会場に満ちあふれる多幸感はそのまま“Storm Racers”で客席一丸のクラップとして炸裂し、“Lone Train Running”、“紺碧の夜に”の本編フィナーレでは客席を揺さぶるほどの祝祭感と狂騒感を生み出していった。

the HIATUS/東京国際フォーラム ホールA

一度舞台を後にしたものの、アンコールを求めて鳴り止まない手拍子に応えてすぐに5人が再登場。「夢の中にいるみたいでした」と最高の一夜の喜びを明かしつつ、続けて「明日からは『10周年って何だったっけ?』っていうぐらい振り返らずに、ここから先を考えて生きていこうかなって」と未来への意志を語る細美の姿は、揺るぎない挑戦精神に満ちていた。

“Twisted Maple Trees”を壮大な福音の如く鳴り渡らせ、“Firefly / Life in Technicolor”で爽快なポップの風を吹かせたところで終了――かと思いきや、熱い手拍子に導かれてもう一度メンバーがステージへ。
「目に焼き付けといていい? この、一生に一度の国際フォーラム! じいさんになった時に、孫に言うから(笑)」と言っていた細美だったが、この日最後のMCでの「10年やらなきゃこんなご褒美はもらえないんだな、と思うと――それぐらい大きなご褒美だった。いい一日だった。『あと10年やればもう一回こんないい日が来るんだな』と思うと、やってみたい気もするね」という言葉は、この日のライブの特別な存在感を何より雄弁に物語っていた。
この日のラストを飾った“Moonlight”のやわらかなメロディとアンサンブルの包容力は、the HIATUSという表現者集団が体現する希望そのものとして深く胸に響いた。(高橋智樹)

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