間もなく客電が落ち、“Deerhounds”からライヴはスタート。細美武士(Vo&G)、masasucks(G)、ウエノコウジ(B)、堀江博久(Key)、柏倉隆史(Dr)という、これまでも見続けていた布陣に、一瀬正和(Dr&Percussion&G)、中村公輔(Manipulator)、坂本美雨(Vo)、徳沢青弦(Cello)、梶谷裕子(Violon)、菊地幹代(Viola)、木ノ脇道元(Flute)、武嶋聡(Clarinet&Saxphone)、類家心平(Trumpet)、滝本尚史(Trombone)、庄司知世(Horn)というメンバーが加わり、初っ端から目にも耳にも鮮烈な印象を与える。オーディエンスの拍手も、お約束とは全く違う、感動に溢れた音色がした。続く“Flyleaf”で、細美はギターを持たずに、身振り手振りも交えながら歌う。実に気持ちよさそうだ。アレンジが変わっても、大所帯になっても、生き生きと躍動する歌に、改めて細美のヴォーカリストとしての才能を感じる。祝祭のパレードに似合いそうな“Ghost In The Rain”、ピアノやドラム、ホーンとの絡みに斬りこんでくるギターが刺激的だった“My Own Worst Enemy”、広いバックに映像が表れ、より空間に引き込まれた“Bittersweet / Hatching Mayflies”……セットリストが進んでいくうちに、あれ?と思った。今までの彼らのライヴの中で、最も“ドキドキ”するだろうと思って来たけれど、実際には、今までの彼らのライヴの中で、最も“しっくり”きている自分がいたから。これは、彼らの楽曲の世界観が、こういった編成や演出で、最も具現化されたからではないだろうか。“The Ivy”では、混沌から美へと抜けていくようなオープニングの魅力が最大限に引き出されていたし、“Little Odyssey”では、チェロとピアノと歌だけで、限りなく純粋にメロディを際立たせていた。
“Monkeys”と“ベテルギウスの灯”は、いつもの布陣だけになって演奏。マイクを持ってオーディエンスに近づく細美に、ライヴハウスと変わらないスタンスでやっている、という意思を感じた。そして「この5人で演奏するのは、暫く最後です」という言葉も。そう、この日を最後に堀江はthe HIATUSから離脱するのだ。オーディエンスの拍手とシンガロングを、笑顔で受け止めるような仕草を見せる堀江。本当に素晴らしい“バンド”になったんだなあ、そう思うと切なさが込み上げてくる。
そのピースフルな空気のまま、アンコールが沸き起こる。すると、堀江がステージに立ち「3年間ありがとうございました!」と挨拶すると、メンバー一人一人がバラの花を一輪ずつ持ってくるという素敵な場面も! そして、ジェイミーも加わったフルメンバーで“紺碧の夜に”を高らかに響かせる。続く“Silver Birch”では、ストリングスやホーンのメンバーがずらっと前に出てきて、細美の歌もエモーショナルになっていき、誰もが完全に開放されてフィナーレを迎えた。演奏を終えて抱き合うメンバーたちからは、アーティストとしての達成感や、仲間を思う気持ちが伝わってくるようだった。ライヴの流れは見事に起承転結を描いていたけれど、the HIATUSの歴史にとっても、一つの“結”を見せてくれるライヴだったと思う。だからこそ、次の“起”が楽しみで仕方がない。(高橋美穂)