「ただいま東京! みんなの祈りが通じて、ここにプリティが立ってるよ!」と牧。「大好きなみんなに音楽を届けたいから、万全な体で全国回って、帰って来たぞただいまー!」とプリティ。そこから“パラノーマルワンダーワールド”へ。最新アルバム『THE WORLD』のオープニングを飾るこの曲。ジョン・レノンや松任谷由実も多大な影響を受けたプロコル・ハルム、その“青い影”を彷彿させる美しい和音を軽快なビートに乗せ、人間の切なくも愛らしい毎日を歌ってみせる。最高のロックンロールは最高のポップスでもあるのだと宣誓するような、そんな境地にgo!go!vanillasは達したのだと断言するような、極上の演奏ぶりだった。その後も牧と柳沢が向かい合ってギターをかき鳴らしたり、セイヤが次々にスティックを上へ投げ放ったり、いつも以上にはっちゃけながら、“チェンジユアワールド”を始めとするキラーチューンを連続投下。会場全体を揺らすほどの盛り上がりを作っていく。
「1回死にかけた俺は、本物のデッドマンになったわけなの(笑)」というプリティのMCから、“デッドマンズチェイス”へ突入。やっぱり彼らの高速2ビートが持つ爆発力はハンパない。元来ロックンロールは、4ビートによるたっぷりとした「間」で、ギターのホンキートンクな味を生かすものだ。最たる例はザ・ローリング・ストーンズあたりか。でもバニラズはあえて疾風怒濤のリズムにすることで、「踊れる」ことが求められた2010年代の荒波を乗り越えた。これって、画期的な闘い方だったと改めて思う。
ラストスパートはまさに一気呵成、息つく暇もなかった。「プリティ、おかえり!」、「バニラズ、おかえり!」、「全員揃ってgo!go!vanillas」というコール&レスポンスを経て、“カウンターアクション”の《それでも僕らはそう生きていく》、“平成ペイン”の《あなたと行くのさ この道の行く末を》という歌詞が響き渡る。さらに「むちゃくちゃ幸せやあ!」と牧が語り始める。「3人でのツアーは、強くならなきゃって思ったけど、弱い部分もたくさん出ました。そのなかでも何も変わらなかったのは、自分たちの音楽が最高だってことと、聴いてくれてるみんなが大好きだなってことです」。そして「4人でこの曲をやりたかった。プリティが死にかけたときに、この曲が俺たちを支えてくれた」という“No.999”にて、万感の本篇を締めくくった。
アンコールは、まずプリティがひとりで姿を現した。「こうやって演奏してるとさ、俺の生きる場所って本当にステージだと思う」。「この話はするか迷ったんやけど、みんなになら言えるなと思って。事故って頭打ったせいで、目覚めたときに『俺は高校生だ』って思い込んでて。しかもバスケ部の(笑)。でもある日、牧に『お前は高校生じゃない、バンドマンだ!』って言われて、記憶が戻ったんよ。スラムダンクみたいな世界にいたんやけど、俺高校のとき、パソコン研究会やってん(笑)」。「帰ってこれたのは、走り続けてくれた3人のおかげやと思うし、スタッフさん、みんなの気持ちのおかげやと思います」。そして再びメンバー全員が揃うと、牧がプリティに「お前が寝てるときに、みんなこの曲を歌って、『起きろ!』って言ってくれたんやぞ。今日は一緒にでっかい声で歌おう!」と誘い、“おはようカルチャー”へ。とんでもなく壮大なシンガロングが鳴り響いた。さらにもう数曲を披露したのちライブは見事終幕。去り際の4人は、この記念すべき1日はゴールなどでなく、新たなスタートなんだと噛みしめるような、そんな笑みを浮かべていた。(秋摩竜太郎)