BiSH/国立代々木競技場 第一体育館

BiSH/国立代々木競技場 第一体育館 - All photo by sotobayashi kentaAll photo by sotobayashi kenta

Opening
1.LETTERS
2.SHARR
3.MONSTERS
4.GiANT KiLLERS
5.TOMORROW
6.DEADMAN
7.DiSTANCE
8.BUDOKANかもしくはTAMANEGI
9.My distinction
10.PAiNT it BLACK
11.SMACK baby SMACK
12.STORY OF DUTY
13.DA DANCE!!
14.リズム
15.stereo future
16.Nothing.
17.FOR HiM
18.OTNK
19.My landscape
20.FREEZE DRY THE PASTS
21.プロミスザスター
22.スパーク
23.オーケストラ
24.ALL YOU NEED IS LOVE
25.サラバかな
26.beautifulさ
(アンコール)
EN1.I'm waiting for my dawn
EN2.BiSH-星が瞬く夜に-


ついにこの日がやってきた。BiSH、実に332日ぶりの有観客ワンマンライブ「REBOOT BiSH」。今年1年、彼女たちが何をしてきたか、そしてその裏側でどれほど悩み、考え続けてきたか。12月24日、クリスマスイブの国立代々木競技場 第一体育館に集まった清掃員(BiSHファンの呼称)たちには、それが痛いほどわかっていたのだろう。場内には開演前から緊張と期待が入り混じったような独特の空気が流れていた。

2020年1月に行われた沖縄でのライブから今日までの時間がカウントされ、メンバーそれぞれの「ただいま」と6人声を重ねての「おかえり」という言葉が聞こえてくるオープニングムービーが流れ、ステージに張られた紗幕に6人のシルエットが浮かび上がる。BiSHがこの日の1曲目として選んだのは、2020年、彼女たちからすべてのファンへのメッセージとして届けられた“LETTERS”だった。

BiSH/国立代々木競技場 第一体育館

力強いバンドサウンドの上でリンリン、ハシヤスメ・アツコと繋がった歌のバトンが、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、アイナ・ジ・エンドと繋がる。そしてアユニ・Dが声を張り上げるBメロを経てメンバーがユニゾンするサビへ。シルエットの状態なのに、6人がどんな思いで、どんな表情でステージに立っているのかが、まざまざと目に浮かぶような気持ちの入った歌だ。そして落ちサビの頭でアイナがアカペラの歌声を響かせると、紗幕が一気に落ちる。観客の前についに姿を見せたBiSH。それだけでとてつもない感動が襲ってきた。メンバーもおそらく同じだったのだろう。チッチはすでに泣いている。最後をおなじみのBiSHポーズで決めると、客席からは優しい拍手が6人に送られた。

「BiSH、再起動」。チッチの宣言から、“SHARR”に突入。リンリンのシャウトが響き渡り、さらに“MONSTERS”で客席一面のヘドバンを巻き起こす。ハシヤスメが「清掃員! おまえらの心の叫び、もっと聞かせてくれよ!」と煽り立てて、攻撃的でパワフルなBiSHの健在ぶりを見せつける。ここからはまさに怒涛の勢い。“GiANT KiLLERS”ではリンリンが「代々木ー!」と客席に向かって叫び、“TOMORROW”ではアユニが腕を目いっぱい遠くへと伸ばす姿をカメラが捉える。どの曲も、思いがあふれるような激しさと力強さだ。そして「はじめまして、私たちBiSHです」といういつもの名乗りからメンバー個々の自己紹介へ。いつもなら清掃員からの間の手が入るところでも、今日は声を上げるのはメンバーだけなのが少しさびしい。アイナは後のMCで「自己紹介どうやるのか忘れてた」と言っていたが、それぐらい久しぶりの「はじめまして」だったのだ。でも「今日久しぶりに会えたこの気持ちを大切に、目いっぱいBiSHを体感してください!」というチッチの言葉に応えるように、会場の熱はいっそう高まっていった。

BiSH/国立代々木競技場 第一体育館

“DiSTANCE”の《今僕はあなたなしでは難しいの》、“BUDOKANかもしくはTAMANEGI”の《そこに立つための資格を/掴みたいんだ》、そして“My distinction”の《一度きり この日々を やりきってやるって決めて》……すべての曲の歌詞が、今この場所で違う意味合いをもって響いてくる。それこそ、彼女たちが常に誰かを救おうと歌い続けてきた証拠だ。最新配信シングル曲“STORY OF DUTY”の有観客ライブ初披露では、ハードなダンスと歪んだボーカルが繰り広げられる、久しぶりのストロングスタイルな新曲に客席も手を挙げて応えてみせる。

“リズム”を終えてのMCでは、ハシヤスメがマイクを通さず「代々木ー!」と絶叫して、「クリスマスですが、何かない? 欲しいものとか」とざっくりとしたフリでトークを回していく。その問いに「地位と名誉」とさすがの答えを返したのはアユニ。だが彼女も「緊張で足は震えるし、声もまともに出ない……」と本心を露わにする。そんな彼女に駆け寄り、抱きしめるメンバーたち。アユニが加入したての時に行われた日比谷野外音楽堂でのライブを再現するかのような光景に、客席からも拍手のエールが届く。最後はハシヤスメがずっとやりたかったということで、「アリーナ!」、「スタンド!」と煽って“stereo future”へ突入していった。

BiSH/国立代々木競技場 第一体育館

ライブ後半もセットリストには新旧のBiSHナンバーがずらりと並ぶ。明るい光が6人を照らし出した“Nothing.”のラストでは6人が手を繋ぎ客席に笑顔を見せ、イントロから盛り上がった“OTNK”で再びヘヴィなサウンドを響かせると、続いて披露されたのは“My landscape”。バンマス西村奈央の弾くピアノと歌で始まり、曲の大半を同期のストリングスとピアノだけで聴かせる特別なアレンジで演奏され、曲のクライマックス、アイナが力強く前を見据えて歌った《My landscape》という大サビの入りとともにバンドが力強く加わってくる。それまでうずくまったり倒れ込んだりしながら踊っていた6人が立ち上がる――まさに「REBOOT」の名にふさわしい再生と復活のパフォーマンスだった。

リンリンが主役の“FREEZE DRY THE PASTS”を経て、ここからライブは怒涛の名曲ゾーンへ。“プロミスザスター”を観客の手拍子のなか力強く歌い上げると、チッチの「ここからまた始めていきます」という言葉から、文字通りBiSHの始まりの1曲となった“スパーク”へ。おなじみ「花いちもんめ」の振り付けでは6人全員が笑顔だ。そしてここで歌われたのが、清掃員とBiSHを繋ぐ曲“オーケストラ”だった。チッチが優しく歌う横で、アユニが目に涙を浮かべている。そして最後のサビ、アイナが歌うパートで、ファンからのサプライズ。このライブの直後に迎える誕生日を祝うため、彼女のカラーである赤いペンライトの光が客席一面を美しく染め上げたのだ。その光景を見たアイナは思わず声を詰まらせていた。本編ラストは“beautifulさ”。万感の「とげとげダンス」が代々木第一体育館いっぱいに広がった。6人それぞれが客席に近づいて手を振ったり笑いかけたり、アイナとリンリンがふざけ合ったり、チッチにアユニがしがみついたり。クソみたいな状況のなかですべてを受け入れ前を向く、BiSHなり、そして作詞をしたリンリンなりの最大限のポジティビティが、新たな光となって降り注ぐような名演だった。

BiSH/国立代々木競技場 第一体育館

アンコールでは6人一人ひとりが締めの挨拶。アユニは「夢見心地な気分なんですけど、これは現実ですね」、リンリンは「こうして実際にまた会えてうれしいです」、ハシヤスメは「明日からもがんばってください。私たちもがんばります」、モモコは「前は当たり前だったけど、今は奇跡のような一夜をありがとう」、思い思いに今日という日の感慨を口にする。アイナは「『私は“オーケストラ”や“プロミスザスター”をあとなん回歌えるんやろう』って悩んでいたんですけど、『あとなん回』じゃなくて、なん回でもあなたたちの顔を見ながら歌いたいです。元気でも、元気でなくてもいいけど、生きていてください」と語り、その言葉を引き取ったチッチは「ここまで生きてくれてありがとう、出会ってくれてありがとう、そしてこれからもよろしくの気持ちです。大好きです!」と清掃員に笑顔を見せた。そしてこの2020年にあって確かな希望を刻んだ名曲“I'm waiting for my dawn”を歌い切ると、最後はもちろん“BiSH-星が瞬く夜に-”。この日最高の一体感を生み出して、BiSHの「再起動」は完了した。そう、これが始まり。また会える日が今から待ち遠しくなる、頼もしいBiSHによる確かな手応えのあるライブだった。(小川智宏)



  • BiSH/国立代々木競技場 第一体育館 - 『ROCKIN’ON JAPAN』2021年2月

    『ROCKIN’ON JAPAN』2021年2月

  • BiSH/国立代々木競技場 第一体育館 - 別冊 BABYMETAL

    別冊 BABYMETAL

  • BiSH/国立代々木競技場 第一体育館 - 『ROCKIN’ON JAPAN』2021年2月
  • BiSH/国立代々木競技場 第一体育館 - 別冊 BABYMETAL

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする