桑田佳祐/横浜アリーナ

桑田佳祐/横浜アリーナ - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代

●セットリスト
01. こんな僕で良かったら
02. 若い広場
03. 炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]
04. MERRY X'MAS IN SUMMER
05. 可愛いミーナ
06. 真夜中のダンディー
07. 明日晴れるかな
08. いつか何処かで (I FEEL THE ECHO)
09. ダーリン
10. NUMBER WONDA GIRL〜恋するワンダ〜
11. 赤い靴 〜 SMILE~晴れ渡る空のように~
12. 鏡
13. BAN BAN BAN
14. Blue ~こんな夜には踊れない
15. なぎさホテル
16. 平和の街
17. 現代東京奇譚
18. ほととぎす [杜鵑草]
19. Soulコブラツイスト〜魂の悶絶
20. 悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)
21. ヨシ子さん
22. 真赤な太陽(美空ひばりカバー)〜波乗りジョニー

(Encore)
EN1. ROCK AND ROLL HERO
EN2. 銀河の星屑
EN3. 白い恋人達
EN4. 100万年の幸せ!!


桑田佳祐/横浜アリーナ - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代
宮城・セキスイハイムスーパーアリーナを手始めに全国5大ドームを駆け抜けた「桑田佳祐 LIVE TOUR 2022「お互い元気に頑張りましょう!!」 supported by SOMPOグループ」(通称:5倍返しツアー)の本公演。さらにその追加公演として開催がアナウンスされたのが、年の瀬の横浜アリーナ3デイズ(12月28日・30日・31日)だ。「年末も、お互い元気に頑張りましょう!!」の掛け声のもと繰り広げられた公演のうち、12月30日の模様をレポートしたい。

桑田佳祐/横浜アリーナ - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代
全公演チケット完売、計40万人超を動員という盛況ぶりの中で行われた今回のライブツアーは、 桑田佳祐が 1987年にシングル『悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)』でソロデビューを果たしてから35年に当たる。期間中の11月23日にリリースされた最新ベストアルバム『いつも何処かで』は、それにちなんでか2枚組でトータル35曲を収録しているのだが、ツアーやベストアルバムを含め2022年の桑田佳祐の活動が大々的に周年を掲げることはなかった。それは、現在の桑田がまだ長い道のりの途上にいることを表しているのだろうし、ツアータイトルにも窺えるように「今」と「これから」を見つめているからだろう。

激しい雨の降りしきるSEが聴こえる中、「若い広BAR」という名のバーを舞台にライブは幕を開け、バーテンダーやホールスタッフ、サラリーマン男性に扮したダンサーたちも目につく。ジャジーなピアノ演奏に導かれるバンドサウンドが鳴り始めると、ドアを開けてコートを羽織った姿で登場し盛大な拍手に包まれながら“こんな僕で良かったら”を歌い出す桑田佳祐である。今回のセットリストは『いつか何処かで』の収録曲を中心に構成されているのだが、いきなりベストアルバムには未収の『明日晴れるかな』(2007年)のシングルカップリング曲でスタート。ファンを喜ばせるツボを知り尽くしている。

桑田佳祐/横浜アリーナ - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代
バンドメンバーは、斎藤誠(G)、中シゲヲ(G)、角田俊介(B)、片山敦夫(Key)、今ツアーが初参加となる曽我淳一(Key)、河村“カースケ”智康(Dr)、山本拓夫(Sax)、寺地美穂(Sax)、菅坡雅彦(Tp)、TIGER(Cho)、小田原 ODY 友洋(Cho)という辣腕揃い。ドゥーワップ風の“若い広場”、今やライブ序盤の鉄板ナンバーとなった華やかなディスコテイストの“炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]”と、多彩極まりない桑田佳祐の音楽性をがっちり支え、華やかに味わい深く演出するメンバーである。

「どうもありがとうー! こんばんはー! 私、原 由子の夫です」とあらためて挨拶する桑田は、今回のツアーに備えて毎日3本の葛根湯を飲んできたと報告。「私のライブ、盛り上がりませんから。すぐに終わります!」(←ジョークである)、「いいの? パーン!とか出ませんよ!?」(←1発目のテープキャノンはもう出た)、「波乗りの歌とか、やりませんよ?」(←大嘘である)というふうに、もちろん歌声含めて絶好調だ。

ソロデビューよりも時期を遡るKUWATA BANDの“MERRY X'MAS IN SUMMER”では、門松付きのソリに晴れ着サンタの女子ダンサーが乗り込む、和洋折衷のカオティックな演出が楽しい。斎藤の骨太なリフと中の雄弁なギターソロが交錯し、桑田も自らディープ・パープル“スモーク・オン・ザ・ウォーター”のリフを奏でてフィニッシュする“真夜中のダンディー”にもまた、和洋折衷でロックの高みを目指したKUWATA BANDのスピリットが織り込まれるようだ。

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各地公演でご当地曲(12月10日の東京ドームで観た時は“東京音頭”)を披露しつつ“SMILE〜晴れ渡る空のように〜”に繋ぐ一幕は今回、横浜にちなんで童謡“赤い靴”。《おじいさんに つれられて〜》《ひいじいさんに つれられて〜》と空耳ネタを用いた歌詞に替えて歌うのだが、なんとレッド・ツェッペリン“天国への階段”のイントロや間奏フレーズを絡めたアレンジで、いわゆるマッシュアップの演奏を完成させてしまう。ちょっと思考・感情が追いつかないすごさだった。

さらに今回のツアーで重要だったのが、アコースティックコーナーで披露された楽曲たちである。軽やかなカントリーテイストの奥底から孤独な内省の時間を浮かび上がらせる“鏡”や、アコースティックアレンジでありながらむしろ楽曲のスケール感と包容力が際立つKUWATA BANDの“BAN BAN BAN”、トーチが灯されるステージ上で妖艶に舞うダンサーたちを迎え、甘い狂気に誘い込む“Blue 〜こんな夜には踊れない”。アコースティックだからといって静謐なだけではない。むしろエレクトリック編成すら凌ぐほどにパワフルでエモーショナルな時間を生み出してみせた。

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果てしなく揺れ続ける孤独な恋心のドリームポップ“なぎさホテル”や、シビアな現実を越えてゆくためのモータウンポップのリズム“平和の街”といった新曲群を披露したあとは、もはや誰にも止められない新旧のヒットパレードでクライマックスへと向かう。「もう疲れちゃったわあたし……」と美空ひばりの声真似を切り出すと、バンドメンバーも付き合いジャッキー吉川とブルー・コメッツの物真似で“真赤な太陽”をカバー。歌い終えた桑田が立ち去ろうとすると水着ダンサーが大挙して押し寄せ、桑田の胸に張り付けられていた「ひばりちゃん」のタグをひっぺがしてド派手に“波乗りジョニー”を繰り出し、本編クライマックスを迎えるのだった。もちろんこのあとにはアンコールに応え、「また帰ってくるよーっっ!!」と告げる万感のフィナーレへと向かった。(小池宏和)



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