3月29日SHIBUYA-AXから始まった全28本の『TOUR MATSURI SESSION』の27本目、つまりセミファイナルの日比谷野音ワンマン。
ZAZEN BOYSは、この季節に、ここ日比谷野音でワンマンをやることが多い。ということに関しての、向井のMC。
「毎年6月に、野外でやるというのは、天気どんなもんかな、と思うんですが。でも、毎年、ぎりぎりのところで、うまくかわしてきたんですが……(タメて)……降りました」
場内、自虐的な笑いに包まれる。そう、雨だ。しかも大雨。伝説のTHE MODS雨の野音はこんな感じだったんだろうか、と思わせるほどの降りっぷり。ただ、季節柄、寒くはなかったので、お客さんのあがりっぷりに悪影響は与えていなかった。逆に、雨のせいでヘンにテンションが上がっているような感じもあって、面白かった。
もうひとつ、向井の、雨にまつわるMC。さっきのは前半のMCでしたが、これは後半。
「雨音が、16ビートを刻んで。そう思うと、雨もいいもんだ、と、思おうとしております」
というわけで、まだファイナル(30日、大阪BIG CAT)が残っているので、詳しい曲目や曲順は伏せますが、だんだん、どんどんすごくなる、今のZAZEN BOYSの現在形を見せつける、とにかく濃い2時間半弱だった。野音のステージ上にもうひとつステージが組まれてフロアが高くなっている、いわば「高床式ステージ」に、予定より10分押しの17:40に登場した4人は、それから20時までの2時間半弱、その濃さをひたすら放ち続けた。
思えば、ZAZEN BOYSが始まって、最初にライブを観た頃、NUMBER GIRL後期から表れ始めた、ファンクやヒップホップの要素を、このバンドになって、より推し進めようとしているのかな――と、感じた記憶がある。ZAZEN BOYSがさらに本格的に転がり始めた頃は、レッド・ツェッペリンとダブの融合だなと思ったこともあるし、向井がシンセを弾き、4つ打ちのリズムでループの多い曲がレパートリーに加わり始めた頃は、テクノやハウスにも手を伸ばし始めたと感じたこともある。
今のZAZENはそのすべてだ。というと「そりゃそうでしょ」と言われそうだが、「それぞれのタイプの曲があるからそのすべて」というような、足し算による「すべて」ではなく、「1曲にいろんな要素が入っている」という掛け算的な「すべて」でもなく、もっと根源的に、最初から、ZAZEN BOYSのロックがそのすべての音楽を包括しているみたいな、そんな大きな「すべて」なのだ。
例えば、ZAZEN BOYSが、ダブばっかり出るイベントや、ハウス&テクノ一色のレイヴに出たとする(実際出てますが)。そこで、ダブっぽい曲はウケるけどロックっぽい曲はだめ、とか、テクノっぽい曲ではあがるけど他はウケない、とかじゃなくて、今のこの目の前でやっているまんま、どんなジャンルのイベントに出ていっても、すべての曲がハマるし、ウケるんじゃないかと。ウケないわけはないと。そんなような全能感を感じた。
そんなバンド、他に国内に例がないし、海外でもほんとに稀なんじゃないかと思う。あ。ひとつだけいた、国内に。ゆらゆら帝国だ。
ちなみに、ものすごく降っていた雨は、全体の3分の2を超えたあたりで小雨になり、アンコール時にはやむ寸前になっていた。それを受けての向井のMC。
「やみましたね! みなさん『今やんでも……』ってとこでしょうが(笑)」
アンコールが終わって外に出ると、完全に雨は上がっていました。翌朝は快晴でした。
あ、それから、8月に台湾のフェスに呼ばれたので行ってくる、ということと、9月に東京と大阪のホールで、オール・シッティング・ライブをやる、そこでゲストに落語家の立川志らくを迎えてセッションをやる、ということを、告知しておられました。東京は9月10日C.C.Lemonホール、大阪は9月4日、大阪厚生年金会館だそうです。(兵庫慎司)
ZAZEN BOYS @ 日比谷野外大音楽堂
2009.06.28