椿屋四重奏 @ 渋谷C.C.Lemonホール

椿屋四重奏 @ 渋谷C.C.Lemonホール
椿屋四重奏 @ 渋谷C.C.Lemonホール
椿屋四重奏 @ 渋谷C.C.Lemonホール
ライブというよりもロック・ショウを見ているようだ。きっと椿屋四重奏のステージを見た誰もが思うことだけれど、特に今宵は “ショウ”という言葉が、いつにもましてふさわしく思えるライブだった。椿屋恒例のシリーズライブ熱視線も今回で7度目。“熱視線7「TUMBLING VACATION」”と銘打った夏のショートツアーのファイナル、場所は渋谷C.C.Lemonホール。中田裕二(Vo/G)の敬愛する沢田研二のコンサートが、ちょうど一ヶ月前にここで行われていたという事実も、なんとなく運命めいたものを感じてしまう。

ステージがライトアップされると、メンバーが十分な間をとって、1人ずつ姿を現す。小寺良太(Dr)、永田貴樹(B)、安高拓郎(G)、そして中田裕二(Vo/G)。1人また1人とメンバーが現れる度に黄色い歓声が上がる。一際大きな歓声が上がった今日の中田のたたずまいは、上下グレーのセットアップ。彼が中央に陣取ると、耳を劈くようなドラムソロにはじまり、リズムとアンサンブルはジャジーに、メロディはドリーミーに。今日の椿屋は“恋わずらい”で幕を開ける。

椿屋四重奏のロックを語る時に、どうしても“艶”とか“和”みたいに表現される中田のボーカルが注目されがちだが、ライブを見る度に僕が思わず着目してしまうのは、ボーカルに併せて色を変える多種多様なバンド・サウンドだったりする。例えば、“moonlight”のようなバラードに大胆な打ち込みを動入したり、“共犯”では、艶とはかけ離れたファンキーなギターでモータウン調のソウルフルな演出を施したり、それに中田はワイルドなラップをのせたり。実は、艶の裏側には、こうした実験的な音楽性が、いくつも溢れているのだ。特に、バンドサウンドの4つ打ちがすっかり当たり前のフォーマットとなった今、“踊り子” のような楽曲は稀少である。ダンス・ビートや4つ打ちを使わずに、乱暴な8ビートと鋭利なカッティング・ギターで生み出されるロック本来のグルーヴでオーディエンスは腰を左右に振り、ステップを踏む。人々を踊らせるという、ロックがそもそも持っていたグルーヴが、ふいに蘇ってきた瞬間だった。

今日のようなホールライブの場合、客席とステージの間に高低差と距離があり、オーディエンスとバンドの熱はなかなか循環しにくい。それを感じたのか、中田もMCで「あれですね、久々のホールだから慣れていないのですね。おいおい慣れてくれよ!」とつっこんでいた。自分自身へのツッコミなのか、オーディエンスへなのかよくわからないが、確かにスタート数曲は、そんな瞬間もあった。しかし、“パニック”あたりからのアップリフティングな楽曲の連続で、何かが吹っ切れたように、ステージを軽やかに動き回り、演舞のように倒れこんで歌い、髪を振り乱してシャウトする。こういう姿を見ると、実にホール映えするバンドだなとつくづく思う。「もう、どこに出しても大丈夫なバンドですよね!」と、中田自身も何か手ごたえを感じていたようで、最後には、自信に満ちた表情をしていた。

アンコールは、“紫陽花”、“君無しじゃいられない”の2曲。「君なしじゃ!」「いられなーい!」とお決まりのコール&レスポンスや間奏中のメンバー紹介&各ソロをバッチリキメて、大団円…。と、思いきやダブルアンコールで再登場して、“螺旋階段”をプレイ! スパイ映画のように妖しく刻むギターリフ、ラジオから聴こえてくるような昭和歌謡の香り漂う中田の艶かしい声。ライブが今始まったかのような豪熱がホール全体にほとばしり、この日一番の盛り上がりを迎え、ライブは終了。ラストは、一昔前の洋楽の来日ライブのように、メンバー同士しっかりと手をつないで一礼。こういうシーンって、今どきの若いバンドにはあまり見られない光景だ。最後までロックを演じきった、2時間半のスペクタクルなショウはこうして幕を閉じた。

なお、セットリストをご覧の通り、今回のライブでは新曲を5曲演奏している。椿屋四重奏は、8月に、4枚目となるオリジナル・アルバム『CARNIVAL』をリリースし、これらの新曲も収録されるようだ。「今日は“CARNIVAL”の前夜祭だ!」と中田が語っていたように、今宵のショウの次に彼らが目指すべき場所はどこなのか、次に彼らが提示するロックとは何なのか。それは8月に明らかになるだろう。(古川純基)

1.恋わずらい
2.LOVE 2 HATE
3.アシンメトリー
4.OUT OF THE WORLD
5.LOVER
6.新曲
7.波紋
8.ジャーニー
9.moonlight
10.共犯
11.新曲
12.新曲
13.小春日和
14.新曲
15.パニック
16.マイ・レボリューション
17.アンブレラ
18.新曲
19.踊り子
20.幻惑

<encore>
21.紫陽花
22.君無しじゃいられない

<encore2>
23.螺旋階段
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