METAMORPHOSE09 @ 伊豆 自転車の国サイクルスポーツセンター

今年でめでたく10回目の開催、伊豆修善寺のサイクルスポーツセンターに開催地が落ち着いてから5回目を数えるMETAMORPHOSE。このイベントはまず気候・環境の心地よさが個人的に大好きで、毎年とても楽しみにしている。箱根の山々が水墨画のように目に映るターンパイクの長い峠を車で抜けて伊豆に向かうときにも、ときおりパッカーンと海が奇麗に見えたりして、やたらめったら高揚感が募ってしまう。この時期の陽が落ちた伊豆高原は涼しく快適なコンディションで、翌朝にかけて踊り明かすにも絶好の開催地と言えるだろう。

さて18:00、メタモ最大のステージとなるSOLAR STAGEにて、まずは最初のアクトとなるゆらゆら帝国がスタート。序盤はインストでノイジーかつタイトなロックンロールをまっすぐにプレイする。サイケ&ミニマルな、ダンス系アクト主体のメタモにもピシャリと嵌るゆらゆらの同時代性が披露されるかと思っていたのだが、むしろロックンロール・バンドとしてのエッジを見せつけるような内容になった。“できない”も鋭角にドライブしてゆく。“あえて抵抗しない”はギターレスで坂本がマラカスを振りつつ歌うおなじみの変則プレイだが、がっちりとロックしているのが素晴らしい。そして遂に“学校へいってきます”でディープなサイケデリアが花開いた。美しい。ノイジーにハイライトを形作ってゆく。ラストは“無い!!”で、ブライトなノイズを振り撒いていった。

小高い丘の上にある、野外レイヴ感のひときわ強いPLANET STAGEに移動し、邦人ビート・クリエイターとして大きな支持を集めているNujabes。スウィートでメロウなファンク、或いはブラジリアン・ハウスなどのブレイクスに、極めて日本人的と言えるキメの細やかなメロディを編みこんで気持ちよく踊らせてくれる。生のホーンも加えつつ、情感あふれるトラック群を披露していった。SOLAR STAGEに戻って、今度はビル・ラズウェルのバンド・プロジェクト、メソッド・オブ・ディファイアンスだ。ジャズ・コンボに近いものかと思っていたが、ゴリゴリのバウンス・ナンバーやヤバいぐらいクールなダブ・ファンクとパーティ・チューンを連発してくれる。熱い。Pファンク人脈のバーニー・ウォーレルによるシンセ・サウンドが実に印象的で、途中ソロ・プレイも挟み込まれたDJ KRUSHのビートもでたらめにかっこいい。ホーン・セクションや扇動的なラガマフィン・ボーカルに至るまで、がっちりした曲調にもかかわらずすべてが高揚のために機能していた。ラズウェルによるディストーショナルな爆裂ベース・プレイでクライマックスを迎えたが、アンコールの催促に応じてメンバーが再度登場。ここでステージ中央に立ってメンバーを紹介してくれた巨漢は、なんとアフリカ・バンバータだ。熱狂の中、バンドはアンコールへとなだれ込んで行った。

さて、ここで再びPLANET STAGEに引き返してメタモ常連のEYEちゃんを見ようと思っていたのだけれど、今年はPLANET STAGEへと向かう導線が、奇麗に整備されたBMXコースを大きく迂回しなければならないものになっていて(もともと会場がそういう場所なので仕方ないが)、移動に時間がかかるのでHMVの出店テントでロコ・ダイスのミックスCDを購入し、サイン会に参加してみる。「あとで楽しませてよ」「おう、まかせとけ」と言葉を交わして握手。キラキラした瞳が印象的なナイス・ガイだった。なんだかんだで、メタモでの僕はSOLAR STAGEに居座る時間が長い。ライブ・アクトが多いという理由もひとつだけど、夜空の下で踊る広いアスファルト敷きの観客エリアが、開放的で踊り易いからだ。ここは普段は5kmサーキットと呼ばれるロードレーサー用の幅広な走行コースで、スタート/ゴール地点にあたる平面部分にSOLAR STAGEが設営してある。うまいこと考えたなあ、といつも感心する。ちなみにコースはずっと走っていくと割とアップダウンがあって、通称「心臓破りの坂」と呼ばれる急な上り坂が設けられていたりもする。なんでそんなことを知っているかというと、小学生のときにサッカー・チームの合宿で何度か走らされたからだ。ああ、あの時に比べたらメタモは天国だなあ。

さあ、ここで今年のメタモの目玉アクトと呼んでも差し支えないだろう、25年ぶりの来日を果たしたタンジェリン・ドリームである。僕は70年代のジャーマン・プログレ/クラウト・ロック作品しか聴いたことがなかったのだが、その後の活動で展開してきたという映画のサウンド・トラック作品を思わせるような、ときにジプシー音楽風であったりする大ぶりで美しいメロディが折り重なるミニマル・サウンドを披露していった。シンセサイザーと、何か巨大な操作基盤から生み出されるエレクトロニックなサウンドを下地に、激しいギター・リフのダンス・ロックが繰り出されたり、無数のパーカッションを一人で叩き分けてゆく女性パーカッショニストがいたりと、バキッと立ったライブ感の強いサウンドだ。ミニマル・ミュージックがポピュラリティを獲得してゆく、その歴史を描き出すようなステージである。以前メタモに出演したマニュエル・ゲッチングやアシュ・ラ・テンペルとはまた大きく違う、ジャーマン・ミニマルの野心的な創造性が響き渡っていた。

多目的アリーナ内のLUNAR STAGEで、先ほどサインを貰ったロコ・ダイスのDJセット。基本的にはストイックなテック・ハウスなのだが、ときおり悪戯小僧のように細やかな一瞬のカットを挟み込んだりしてフロアの反応を確かめつつ盛り上げる、茶目っ気プレイであった。そしてSOLAR STAGEでのプレフューズ73のライブだ。これはもう、ズタズタのエレクトロニック・ノイズからグルーヴが生まれ、その遥か彼方に途方も無く美しいメロディが見え隠れする、スタイルとして極まった凄絶で感動的なパフォーマンスであった。前半にエモーショナル&アグレッシヴに攻め立て、後半をドラマティックに仕上げるという構成も見事。スコット・ヘレンは相変わらず意欲的な創作活動を続けているが、プレフューズの先鋭的な表現文法は今も極めて有効だ。僕が観た中ではこれが今年のベスト・アクトであった。

さて。もはやテクノ・クリエイターというより現代のミュージシャン・オブ・ミュージシャンズ=リッチー・ホウティンで2時間がっつり踊りたいのはやまやまなのだが、今年はちょっと思うところあって後ろ髪引かれつつLUNAR STAGEのアフリカ・バンバータへ。というのも、MOD/プレフューズ/バンバータ、それにNujabesや音楽的ルーツで言えばロコ・ダイスを加えても良いのだが、これらのブッキングはエレクトロニック・サウンドとヒップ・ホップの相互関係を歴史的に紐解いてゆく、今年のメタモの裏テーマでもあるからだ(と勝手に解釈している)。そしてバンバータ御大は、煽り立てるMCやドレス・アップした女の子たちでステージを華やかに演出しつつ、チャッキチャキのエレクトロやオールドスクールをベースにパーティをぶち上げる。追悼マイケル・ジャクソンでは“ビリー・ジーン”や“ブラック・オア・ホワイト”をミックスして盛り上げるが、VJがまた素晴らしくて、マイケルの写真を細かく時代順にペーストし、徐々に顔が変化しながら振り向くマイケル像を映し出してしまうのだ。最悪&最高。映像がビートにしっかりシンクロしているのもいい。JB、パーラメント、ノーティ・バイ・ネイチャー、エミネムとエレクトロ・ファンク〜ヒップ・ホップ総ざらいの大ネタ連発もミックスも御大だからこその説得力だ。というわけでリッチー・ホウティンは最後の30分ほどしか踊れなかったのだが、なんだろうなこの皮膚に吸い込まれるように浸透してゆく音、徹底してミニマルなのに体の芯から気持ち良くしてくれるビートは。ミニマルと言えばリッチーの背後の映像も幾何学的で極めてミニマルなのだが、すごくカッコいい。少しだけでも観れて良かった。

そして最後は、PLANET STAGEのラリー・ハードに行ったりSOLAR STAGEのロータスを観たり、またラリーに戻ったり。ロータスは、惜しくもキャンセルとなったサウンド・トライブ・セクター・9の穴を埋めておつりが来る、アクロバティックでアッパーなライブトロニカ・バンドの本領を見せつけていた。音を綿密に構築してゆくSTS9よりも、バンド・アンサンブルが生々しく躍動している感があった。ラリー・ハードはソウルフルなトラックで明け方に気持ちよく踊らせてくれたディープ・ハウス。徐々に空が白んでくるこの時間帯のPLANET STAGEの景観は本当に美しい。それにしても、タンジェリン・ドリームは確かに凄いが、バンバータやラリーといったその道の先駆者が顔を揃えていたのもなかなか凄いことだ。この後のUR組のロス・ヘルマノスやrei harakamiは名残惜しいが、朝の強い陽射しを浴びながらの帰路の運転が心配なので、今年もこれぐらいの時間で失礼します。来年もやってください。また来ます。(小池宏和)
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