LOUD PARK 09(2日目) @ 幕張メッセ9・10・11ホール

この日はメイン・ホール後方の「指定席」に若干余裕があったのを見ればわかる通り、超満員だった前日に比べればやや動員は落ち着いている。が、それはあくまで「相対的に」の話であって、朝10時の開場からヘッドライナー=SLAYERが「オヤスミナサイ!」という挨拶とともに22時にステージを去るまで、幕張メッセの巨大な空間は終始オーディエンスのもうもうとした熱気に包まれまくっていて……というわけで、日本最大のメタル/ヘヴィ・ロック・フェス「LOUD PARK 09」2日目レポートです。日本のロック・フェスにしては稀有な「女子トイレがあまり混んでなくて、そのぶん男子トイレにその10倍くらいの列が生まれる」という状況が、この会場の男女比を顕著に表していると言っていい。

この日も朝11時から開演。スウェディッシュ・メタル・コアのDEAD BY APRIL、そしてメロディアス・ハードな新星H.E.A.T.というスウェーデン勢が2日目メイン・ホールの幕開けを飾ると、LAZARUS A.D.の重戦車スラッシュ・メタル攻撃を挟んでさらにブラジルのメロディック・パワー・メタル=HIBRIAの超絶ハイトーン・ヴォイスが響き渡り……と、2日目はいきなり怒濤のメロディ攻撃。第3のステージ=SANCTUARY STAGEでも、平均年齢19歳(!)のドラマチック・ハードコア5人衆=CROSSFAITH、今や関西圏のみならず日本を代表するメロディック/クラシカル・メタルの星となったGALNERYUS(メンバーチェンジ直後で、ベーシストTakaはこれがガルネリ初ステージ。そしてヴォーカルはなんと小野正利!)、メタルとプログレの境界線からクラシカルな大輪の花を咲かせるROYAL HUNT from スウェーデン!……と、前半戦はとにかく幕張メッセ中にハイトーン・ヴォイスとメロディアスなギター・ソロとシンセ・サウンドが渦を巻く展開になった。

そんな空気を一気に塗り替えたのは、メイン・ホール/BIG ROCK STAGE(向かって左側)に登場したHATEBREED・ジェイミーの「デストローイ!」のデス絶叫であり、鳴った後にはぺんぺん草も生えないであろうほどのNAPALM DEATH(@メイン・ホール/ULTIMATE STAGE)の重轟音であり、その両者の侠気の限りを尽くしたようなド迫力のステージだった。その気迫に負けじと、続くPAPA ROACHのジャコビーはステージから降りてモッシュピット中央の通路を練り歩き、ジェリーは(派手なソロなどはないものの)ドラマチックな輝きに満ちたギター・フレーズでメッセの空気を面白いようにかき混ぜていった。そして、32フレット(!)の極限カッタウェイ・ギター使いのヘルゲ・エンゲルケはじめ、2005年にほぼオリジナル・メンバーで復活したジャーマン・メロディック・ハードの雄=FAIR WARNING! サポート・キーボードのキラキラした音像を、トミーのハスキー・ヴォイスとヘルゲのソロが燃やし尽くすかのように炸裂していた。

一方、GOTTHARDがスイス発とは思えないほどアメリカン・ハード・ロック王道なサウンドを聴かせていたSANCTUARY STAGEに、最後に登場したのはANVIL! 昨日と今日と、映画『アンヴィル』のプロモーションのためにリップス&ロブのサイン会が会場内で計3回行われていたのだが、この日のステージには監督のサーシャ・ガバシまで登場。「16歳の時に、このバンドに魅了されてツアー・スタッフになりました。カナダ一のメタル・バンドをこうして紹介できるのは幸せです。ANVIL!」という煽りに導かれてANVILの3人が登場すると、ホールを埋め尽くしたオーディエンスから怒号のような歓声! 「アイ・ラヴ・ユー! ユーアー・フ●ッキン・オーサム!」とリップスも感無量。ブレイクの波に見放されて30年、それでもメタルにメタルを塗り重ねてきた50代男の、燻し銀のような輝き! 「ヘヴィ・メタル・イズ・タイムレス!」とリップス。最高だ。最後は当然“メタル・オン・メタル”大合唱!

いよいよ終盤戦! 「ニホンニ、カエッテコレテ、スゴク、ウレシイデス!」という朗らかなMCとは裏腹に、サイレンのようなギター・サウンドとデス・ヴォイスでもって満員のフロアを瞬時にブルータルなメタルとハードコアの洪水に巻き込んだCHILDREN OF BODOM! ファンタジックなシンセ・サウンドも、その壮絶な音楽世界を哀しく、美しく煽るための死化粧のように鳴り響いていた。さらに、ULTIMATE STAGE最後を飾るのはROB ZOMBIE! ステージ上の3つの小型モニター画面に揺らめく炎。バックドロップの巨大ドクロ。巨大ヴィジョンに映し出されるモンスターの姿……禍々しさの極みのような舞台に蠢くメンバーの、さらに禍々しい出で立ち。そして、頭にぐいぐいとビートと轟音を押し込んでくるような、エネルギッシュなアンサンブル! 「ゾーンビ! ゾーンビ!」のコール&レスポンス、そして彼らが去った後に残された後には「666」の文字が光る。あまりに異形で美しいステージだった。

そして……20:20、ヘッドライナー=SLAYER登場! この日の彼らのセットも、前日のJUDAS PRIESTと同じく100分に及ぶ渾身の内容(これでも今回っているツアーのメニューよりは格段に短い)。新作アルバムから“血塗ラレタ世界”“ヘイト・ワールドワイド”も披露しつつ、“エンジェル・オブ・デス”など超攻撃型リストでオーディエンスをひたすら圧倒する。カオティックな世界の中で正気を保つために彼らはこの地獄のようなスラッシュ・メタルを必要としてきたのか、あるいはこの地獄の轟音に魂まで乗っ取られたメタルの化身なのか。地獄が先かメタルが先か……などということを考えさせられるのも、重金属音楽の祭典=LOUD PARK特有の空気感があればこそ、なのだろう。最後にトムが「シー・ユー・トゥモロー!」と言っていた通り、SLAYERは19日(月)は新木場スタジオコースト単独公演! これを書いている時点では当日券が少々あるようなので、彼らの音で骨の髄まで焼き尽くされたい方はぜひ。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする