『IT’S TOO LATE』のPVでもお馴染みの、メンバーそれぞれに色が異なるネクタイ姿で登場したBAWDIES。「今日はもう楽しむだけです!いいですかー!? Are you ready!?」とROYが告げて、まずはアップ・テンポなモータウン・ビートの“EMOTION POTION”から演奏がスタートする。早々に炸裂するROYの絶唱ソウル・シャウター・ボーカル。本当、いいかげん慣れろよと自分でも思うが、それでも彼の強靭な喉には聴く度に驚かされる。そして、夏の大掛かりなツアーやフェス転戦、そして今回のツアーを通して言えることなのだろうが、バンドのアンサンブルが飛躍的に安定感を増していることが冒頭数曲で分かる。以前ならガレージ・サウンドの衝動的表現そのままに頭っから転げ回っている印象があったけれど、今のBAWDIESは勢いをキープしたまま、楽曲のフックの豊かさや個々の演奏の見せ所をきっちり押さえてプレイしているのだ。もの凄く頼もしいバンド・サウンドになった。
「みんなでやってこそのロックンロール・パーティだと思うんですが、どうでしょうか!?」というMCには大きな歓声が上がり、そして放たれた“KEEP ON ROCKIN’”ではアップ・テンポに転がっていた演奏を途中でピタリと止め、場内にオーディエンスのハンド・クラップだけを響き渡らせるという「演奏」、そしてコール&レスポンスへと繋げてゆく。古いリズム&ブルースやマージー・ビート、ときにサーフ・サウンドやオーセンティックなファンクといった古典の「啓蒙」を掲げながら、それを理屈ではなく極めて楽しい参加型の体感として伝えてしまう彼らの手捌きは、本当に見事なものだ。悔しいけれど、こういうザラついた、原初の生々しいロック・サウンドやビート感というのは、現在のポップ・ミュージック・シーン全体で見渡したらまだまだマニアックな嗜好として看做されてしまうものだと思う。ロックは刻々と進化するアートだから、ある意味仕方のないことだ。でも、だからこそ、歴史の隅の方に埋もれてしまった音の宝物もたくさんある。BAWDIESは骨董品の収集家などではなくて、埋もれた音の宝物を探し出す冒険家なのだ。“EVERYDAY’S A NEW DAY”では、フロア一面のスウェイが舞っていた。
4つ打ちビートのダンサブルでダイナミックな新曲が披露された後、「これだけ大きな会場ということで、楽屋もでかいんですよ。テーブルが4つあって、最初は1人ずつ座ってみたんだけど、落ち着かなくって結局、一か所に集まってしまうという。ダメですね我々は」。「ダメですね。でもまあ、それだけ仲がいいってことで」というやりとりが。でもほんと、古い仲間同士で、こんなロックンロール・バンドをやり続けることが出来るのって、もちろん苦労もあるだろうけど素敵なことだ。「BAWDIESから最高の愛を!」という言葉とともに繰り出されたのは、スウィートでスウィンギンなソウル・ナンバー“BABY SUE”。僕は、彼らのこういうメロウな楽曲も好きだ。「セックス・ピストルズはお好きですかー!? お口に合いますか!? セックス・ピストルズ、召し上がれー!」というROYの前フリに続いて飛び出したのはピストルズ“PRETTY VACANT”のカバー。TAXMANもJIMも、2人してギター・リフをキメキメなのが可笑しい。
「(ドラマーの)MARCYはね、何かお願いごとをしたときは、やってくれるんです。優しいんです。でも、自主的に何かをすることがない(笑)。ひとつだけ彼が自主的にやったことってのが、高校のときにスター・ウォーズごっこしてて、TAXMANがダース・ベイダーで、JIMがオビ=ワンで、ホウキで戦ってて、僕は審判だからヨーダ役だったんだけど、そのときにMARCYが率先して、横でカタカタカタッてC-3POの真似をして、ガンバッテ、って。それだけです!」。すいません、個人的にツボに入ったんで、そのまま書き写させてもらいました。なんかなあ、普通、いなたいロックンロールをやるバンドって、こういう脱力系のMCとか厳禁だったりするものだけど、BAWDIESはどれだけ自然体でいても音を出して歌い出せばビシッと決まってしまう。得というか、ズルイというか。
そしてTAXMANがリード・ボーカルを務める“SO LONG SO LONG”まで一気に駆け抜け、クライマックスで「今回、この曲をやるためにツアーしてきました」と披露されたのが、“IT’S TOO LATE”だ。ファンキーなギターとダンサブルな4つ打ちビート、キャッチーなコーラスが入れ替わり立ち代わりで顔を見せる、紛れもないBAWDIES印のロックンロール。ストレートなロックンロールをプレイするバンドは、それが歴史の中からの借り物ではなく、自分たちの血肉となったグルーヴであることを、早々に楽曲で証明しなければならない。メジャー・デビュー・シングルにこの曲を提示できたことは、BAWDIESの今後のキャリアの中で大きな財産となってゆくはずだ。ミッシェルの“世界の終わり”やハイロウズの“ミサイルマン”などと同様の意味を持つ、オリジナルのグルーヴによって生み出された、ロックンロールのデビュー・シングルだからである。
アンコールの最後に「もう手も足も疲れてるはずだよ!? どこに届いてないの!? お尻か!」とROYが告げて“SHAKE YOUR HIP”で踊り尽くすまで、どこまでも痛快でエネルギッシュで、熱いけど何か爽やかさすら感じさせるステージ。BAWDIESのロックンロールはこれから、まだまだ面白くなる。そんな確信を抱かせてくれた一夜であった。(小池宏和)
セットリスト
1.EMOTION POTION
2.I’M IN LOVE WITH YOU
3.KEEP ON ROCKIN’
4.IT’S A CRAZY FEELIN’
5.EVERYDAY’S A NEW DAY
6.新曲
7.BABY SUE
8.NOBODY KNOWS MY SORROW
9.PRETTY VACANT
10.FORGIVE ME
11.MY LITTLE JOE
12.新曲
13.I BEG YOU
14.LEAVE YOUR TROUBLE
15.SO LONG SO LONG
16.IT’S TOO LATE
17.YOU GOTTA DANCE
アンコール1
18.TINY JAMES
19.WHAT’D I SAY
アンコール2
20.SHAKE YOUR HIP