マイケル・シェンカー・グループ @ 中野サンプラザ

ライブレポートの前に、マイケル・シェンカー・グループとはなんぞや、ということをちゃんと説明した方がよさそうなので(昨日の私のブログ参照)、まず最初にそれを書いておきます。
ウィキとか見ずに、己の記憶と認識を頼りにトライしてみますね。

マイケル・シェンカー・グループとは、ドイツ人ギタリスト、マイケル・シェンカー(ドイツ読みではミヒャエル・シェンカー)が率いるロック・バンド。
1970年代、兄のルドルフ・シェンカーが在籍していたドイツのヘヴィ・メタル・バンド(って当時はまだヘヴィ・メタルって言葉はなかった気がするが)、スコーピオンズに加入して世にその存在を知られるようになる。のちに、UFOへの加入→脱退を経て、ソロ・デビュー。そのソロ・デビュー・アルバムを作ったメンバーが礎になってマイケル・シェンカー・グループというバンドが誕生、1980年代に主にヨーロッパと日本で吹き荒れた(アメリカでもちょっと吹き荒れた)NWOBHMブーム(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル・ブーム)の牽引者的存在となる。
特に日本では、レインボーのリッチー・ブラックモア、ヴァン・ヘイレンのエディ・ヴァン・ヘイレン、ラウドネスの高崎晃と並ぶギターヒーローとして、カリスマ的な人気を誇る。が、性格がめちゃくちゃだったり、ドラッグにはまったりというようなことなども含めて、メンバーがどんどん替わったりしているうちに、90年代、メタルというジャンル自体がグランジ/オルタナティヴに息の根を止められ、シーンの第一線から退く。
が、現在もヨーロッパや日本などの「あの頃」を知る熱いファンの前で、活動を続けている。
トレードマークはフライングVのギター。このギターを日本のメタル・キッズに根づかせたのは、この人と故ランディ・ローズ(オジー・オズボーン・バンド/クワイエット・ライオット)。

と、こんなところでしょうか。なお、MSG(という略称です)に限らず、この頃のメタル・バンドは本当にメンバーチェンジが激しいものですが、今回の来日のメンバーは、

ボーカル=ゲイリー・バーデン:オリジナルメンバー。のちに元レインボーのグラハム・ボネットにとって替わられる。
ベース=ニール・マーレイ:ホワイトスネイク、ゲイリー・ムーア・バンド、ブラック・サバスなどに在籍してきた、80年代メタルファンなら誰でも知ってる名ベーシスト。海外進出していた日本のバンド、VOWWOW(現BOWWOW)に在籍した時期もあり。
ドラム=サイモン・フィリップス:THE WHO、ミック・ジャガー、ホワイトスネイク、TOTOなどなど、70年代から現在まで活躍する超有名セッションドラマー。80年代には、スティーヴ・ガッド、村上ポンタ秀一と並んで、「最もドラムマガジンで特集される人物」だった。という認識です、私。
ギター&キーボード=ウェイン・フィンドレイ:すみません、私、この人だけ知りません。調べてみたら、1999年に加入して、3年後にはいなくなったけど、2006年に戻ってきた人のようです。

というラインナップ。つまり、80年代メタルキッズにとっては、「嘘ぉ!?」みたいな、いい意味で「こんなのMSGじゃない!」みたいなことになっているわけです。

どうする。行くしかないでしょう。MUSEの武道館と同じ日だけど。
というわけで、中野サンプラザへ。同じくサンプラへ詰めかけたのは、書くまでもないが、現在41歳の私がまったく浮かない客層。2F席から見下ろすと、スーツのジャケットを脱いでワイシャツ&ネクタイ姿になっているファンが、そこここに見受けられる。
要は、「洋楽の現役感ゼロ」な空間。ここに、「今日MUSEだったんだよな……」とか思っている人、たぶん俺以外誰もいないと思う。下手すると、「MUSE? 薬用石鹸?」って感じだと思います。

定刻より10分ほど遅れて、MSG登場。もう、火のついたように盛り上がる(そう、「アガる」というより「盛り上がる」感じです)客席。
で、セットリストは、こういう……はっきり言って「懐メロバンド」のセオリーに、極めて忠実なもの。翌日もここサンプラだし、あと渋谷C.C.レモンホールと大阪なんばHatchの公演もあるので、一応具体的には書かないでおきますが、もう、「あの頃」を再体験しに集まったファンたちが、やってほしい曲は全部やる、それ以外はやらない、という徹底した姿勢。少なくとも私に関しては、二度のアンコールが終わって客電がついた段階で「そういえばあの曲はやんなかったな」と思い当たるもの、ゼロでした。

こういう懐メロ中の懐メロみたいないにしえの洋楽の来日公演、いっぱいあるけど、一応現役のロック・ファンであり音楽業界関係者である身としては、それらの中でもっとも「行く自分を正当化しづらい」のが、このへんの80年代メタルものや産業ロックものである。
AC/DCやストーンズやTHE WHOは、普通に現役ファンも行くものだし、THE POLICEは「まさかの再結成」という意味においてレジェント感がでかかったため、そのへんのうしろめたさをうやむやにできたし、こないだ高橋智樹が行ったアース・ウインド&ファイアーだと「でも音楽の歴史に残るすばらしいもの」みたいな位置づけが可能だし、ビルボードライブ東京に来るスティーリー・ダンとかクール&ザ・ギャングとかロディ・フレイムなら「来る方も行く方もわかってんだから外野はウダウダ言うな」と開き直ることができる。
というような「ごまかし」が効かないのです。悪い意味で「三つ子の魂百までも」な、イタい自分と向き合わざるをえなくなるのです。

で。本当にイタいのは、「というわけなので、懐かしかったけど居心地悪くてなんか気まずい2時間弱でした」ってことは、全然なかったという事実です。つまり、本当に、本気で、楽しかったのです、私は。
だって、やっぱり曲いいんだもん。で、マイケル・シェンカーのギタープレイ、おそろしく衰えていないんだもん。次から次へとくり出される代表曲。そしてあの「フライングVで足をはさむ」ポーズからくり出され、次から次へとびしびしキマる、あのリフ、あのギターソロ、あのインスト。
当時の80 年代メタルの再発CDを今聴くと「あちゃあ、なんでこんなの一生懸命聴いてたかなあ俺は」ってことがよくあるんだけど、MSGはそれにあてはまらない。そして、年とともにすっかり衰えて、「かつて自分の作ったリフなのに全然弾けない」という一時期のジミー・ペイジのような人もいらっしゃるが、マイケル・シェンカーはバリバリ現役なのだ。他のメンバーも。

でも、ボーカルのゲイリー・バーデン、歌、弱かったじゃん。という声もあるやもしれぬが、この人は全盛期からそうだったから、大丈夫です。「声域狭い」「声量ない」って、当時UKのプレスとかにさんざん叩かれて、挙句追い出された人だから。
ってことを考えると、むしろ、若い頃よりよくなっているとすら言えます。

基本的に懐メロバンドとはいえ、そのいわば「懐メロ規模」を、日本だけでなくヨーロッパ全土で展開している、つまりずっと活動を続けているので、衰えないんだなあ。と、聴きながら、つくづく思った。
特に、リフのキレ。マイケル・シェンカーって、「速弾き」とか「泣きのギター」とかいう以上に「とにかくかっこいいリフを作る人」という認識を僕個人はしていて、そこが好きだったんだけど、そのあたりをもうほんと、堪能できるライブでした。

なお、MSG、今年、30周年だそうです。ステージのバックのバンド・ロゴのところにも、それが謳われていました。

にしても。
このRO69のライブレポートのコーナー、半年前とか1年前に比べて、どんどん原稿が長くなる傾向にある。で、誰よりも僕がそうで、他のライターのみなさんがそれにつられているフシがあったので、年明けに「ちょっと意識して短く書くようにしましょう。まず私が率先してそうします」と宣言して、だからエレカシとDIR EN GREYは、意識してタイトに書いた。
その努力が、こうして水泡に帰してしまいました。しかもMSGで。
ライターのみなさん、くれぐれも見習わないでください。(兵庫慎司)
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