OGRE YOU ASSHOLE × ディアフーフ @ 恵比寿リキッドルーム

54-71と渋谷にあったレコードショップ「some of us」の小林英樹が立ち上げたレーベル<contrarede>が主催する対バンツアー『contrarede presents CHAMPION ROAD Vol.1』。日本のOGRE YOU ASSHOLEと、彼らが兼ねてから対バンを望んでいたというディアフーフの2組による東名阪ツアーで、今宵はそのファイナル、恵比寿リキッドルーム。ディアフーフの来日としては、昨年1月末~2月に行われたジャパン・ツアー以来だからおよそ1年ぶりのこと。(サトミとグレッグは昨年のサマソニにも遊びにきていたようです)ちなみに54-71は過去にディアフーフと2マンライブも行っている。

まず先攻のディアフーフ。後方のスクリーンには古い紙幣、ポートレイト、風景、頻繁にでてくるアジア系女性(サトミ?)など様々なものがコラージュされたエキセントリックなVJ。そこに登場した4人は、左からサトミ(Vo/B)、ジョン(G)、グレッグ(Dr)、エド(G)の順に並ぶのだけど、1対3、左端のサトミと3人の間にはだいぶ距離があり、彼女だけが全く別の部屋にいるようにも見える。ライブはキュートでどこか無機質なサトミの歌声と最高のリフをあわせ持つ“パンダ パンダ パンダ”ではじまった。

サトミは、英語と日本語が交錯するマジカルな詩世界を、童謡的なメロディにのせ、無邪気に空へと放り投げるように歌う。その一方で、ミッドセクションのバンドアンサンブルでは恐ろしいほどパワフルに残りの3人がロックする。ディアフーフの音楽には、子供の頃に誰もが一度は描くであろう絵本のようなあどけない世界、そしてそれを切り裂く音の破片が同居するという奇妙なパラドックスがあるけれど、その相関関係がステージ上のサトミと3人の位置にも現れているような気がした。しかし、ジョンとエドのツインギターが暴れ回った中盤のインスト・ナンバー“レインボウ・シルエット・オブ・ザ・ミルキー・レイン”を皮切りに、バンド自身が定めていた立ち位置をどんどん突き崩していく。

まず、いつもの怪しげな日本語でMCの主導権を完全に握ったグレッグがぶち壊しにかかる。いきなり4人が中央に集まってひそひそ話し出すと「サミット、スゴイハヤイ、オチャハサービス」、何にも問題なんて起こっていないのに「モンダイナイ、ダイジョブ」を連発、「オガワ、サイゴノショウダカラ」、オガワ?オウガだろう!…サトミが一切ツッコミを入れないのもまた面白い。完全に放し飼い状態である。そこからはグレッグがギターを持ち出しドラムレスになったり、センターマイクでグレッグが歌いサトミがドラムを叩いたり、エドがベースをやったりとやりたい放題。インストや即興的な流れが多かったのもあると思うけど、中盤からラストの“ミルキング”までは時間が歪曲して加速したり失速したりするような不思議な感覚だった。最後はサトミが「サンキュー、ありがとう!次はOGRE YOU ASSHOLEです」と言い、ディアフーフは嵐のように去っていった。彼らの奏でる音楽を聞き、プレイする姿を見ているとなぜかバカみたいに笑顔になってしまう。理由もなく幸せな気持ちでいっぱいになってしまう。そういうライブだった。

そして、虹が映し出されるスクリーンをバックに登場したOGRE YOU ASSHOLE。いつものように右から出戸(Vo/G)、平出(B)、勝浦(Dr)、馬渕(G)という順だが、ボーカルのサトミが左に陣取っていたディアフーフとは逆の並びである。こうしてセンターにボーカルが立たないバンドを連続で見せられると、こっちがスタンダードのように思えてくる。というか、OGRE。余談&凡庸な言い方だけど、その並びやたたずまいのかっこよさに磨きがかかっていた。いや、それだけじゃない。一曲目、“ピンホール”のイントロが鳴らされた瞬間、ビリビリくる音圧で吹っ飛ばされそうになったのだ。先ほどのディアフーフはスカスカな構造に一音一音の衝撃をもたらすタイプのバンドだし、その後というのもあると思うけど、今宵のOGREは音の強度と聴き手を引き込む求心力がいつもの5割増しくらいに感じられた。

MCで出戸は「ディアフーフと一緒に回っていい刺激になりました。今までで一番楽しいツアーでした」と語っていた。あと「グレッグとかあんなにいいアメリカ人ははじめて。あんまり食っちゃいけない食べ物とか教えてくれたし」とグレッグの話がでるとフロアが笑いにつつまれる一幕も。ライブでは“ヘッドライト”や“ネクタイ”など昨年の楽曲はもちろん、“コインランドリー”、“アドバンテージ”といった人気曲や初期の“ロボトミー”、“どっちかの角”など新旧まんべんなく全13曲が披露された。一音一音が綿密に練りこまれたツインギターに、おそろしく安定感のあるリズム、たまに顔を出すダンサブルな4ビート。OGREの音楽は、ディアフーフとはまた違う、無国籍というか異国というか、独特の時の流れを喚起させてくれる。

本編ラストには、昼であればまどろみと夢を、夜であれば逆に覚醒を促すような“ワイパー”が届けられた。単純に盛り上げただけでは終わらない、OGRE独特のカタルシスがにじみでている楽曲である。計8分にもわたるこの曲は、4分台から同じギター・フレーズが休みなく反復され、新たな音が加味され、あるいは取り除かれながらゆっくりと前進していく。頭の中で組み立てられるドラマチックな物語が幾度となく解体と構築をくり返し、聴き手のインスピレーションを極限まで刺激してくれる。素晴らしいトリップ・ミュージックである。そしてアンコールで披露された“ステージ”でライブは幕となった。今宵は、ディアフーフ目当てと思われる外国人も多く訪れていたが、ライブを終えたOGREに彼らの歓声と暖かい拍手が贈られていたのが印象的な夜だった。(古川純基)
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