開演前のフロアは期待と緊張が入り混じり、一種異様な高揚感と分厚い熱気に充ち満ちていた。客電が落ちたのは、25分押しの19:25、抑えきれずに暴発した大歓声の中、ビートルズの“ブラック・バード”に迎えられて4人が登場。Galileo Galileiの東京初ワンマン、記念すべき1曲目に選ばれたのは、新曲“夏空”だった。伸びやかで抜けがよくて、それでいて情熱もしっかり内包している尾崎雄貴(Vo/G)の声、そこに他の楽器パートが加わり一体となってゆくバンド・サウンド。恐ろしくストレートである。余計な添加物が一切含まれていない純度100%のロックにオーディエンスはぐいぐい引き込まれ、一曲目にしてフロアには壮観なスウェイが舞っていた。
4月1日の大阪公演も残されているので公演の詳細は控えるが、これまでにリリースされた2枚のミニアルバム『雨のちガリレオ』、『ハマナスの花』の収録曲をほぼ網羅したセットリスト。MCでも語られたように彼らは上京してまだ2週間しかたっていない。二十歳にも満たない4人が上京して2週間(しかもドラムの尾崎弟は16歳で、編入のため受験勉強中)、右も左もわからない東京で初のワンマンライブを行う、会場には満員のオーディエンス。彼らが抱える不安とプレッシャーには計り知れないものがあっただろう。そして、今宵のライブでそれを吹き飛ばしてくれたのはまぎれもなくオーディエンスであった。どの曲がプレイされてもフロアからハンド・クラップが自然に沸き起こり、ジャンプし、スウェイし、拳を上に突き上げ、「がんばれー!」という声援が何度も飛び、4人の演奏をこれ以上ない形で支えていく。バンドはそれに呼応するように輝きを増していった。
Galileo Galileiは、誰にも打ち消すことのできない孤独感を、誰もが観たことのある情景と等身大の物語に乗せて歌う。ともすれば内省的になりがちなものだけど、彼らの視界は内に向けられていない。尾崎雄貴は「MCが苦手なGalileo Galileiですけど…」と語っていたものの、終盤では嘘みたいにオーディエンスと積極的にコミュニケーションを計っていたし、むしろ人懐っこくて外交的で、自己の内面に潜む感情をメロディと等身大の物語に変換させ、外へ向けて伝導させていく回路が異常発達している。ポップなメロディ、ストレートなバンド・サウンド、背伸びしない等身大の物語、どれをとっても驚くほど作為的な部分が感じられなくて自然なのである。だから彼らは「ポップ」というものに対して斜めに構えたりしない、もしかしたら斜めの構え方すらわからないのかもしれない。それがこのバンドのポップに対する向き合い方を示していると思う。
すでに巷では「モンスターバンド」という実態の掴みづらい触れ込みで紹介されている彼らだが、オーディエンスの中にいた4人がいきなりステージに上がって歌いだしたような、そんなライブだった。(古川純基)