直球どストレートなメロディーが脳天を直撃する“テレパシー”で、初っ端から会場からハンドクラップが沸き起こり、とにかく熱い! 全国行脚を経てオーディエンスとのコミュニケーションはより固く揺るがないものになっているようだ。伝えたい、繋がりたいという思いを彼らがオブラートに包むことなく見せて、真っ直ぐに飛び込んでいったからこその一体感なのだと思う。フュージョンやAORの要素をふんだんに取り込みつつ竹内電気なりのポップ観を詰め込んだ“summer time”や“do not disturb”といったお馴染みのキラーチューンは当然のように盛り上がるのだが、そことは明らかに違う種類の、これまで恥ずかしさや照れから隠されていたいわゆる王道なポップ観を迷わず出してきたという点で、本気で「ポップ」と格闘して、お客さんと向き合っているのだ。
揺れるようなワルツのリズムと口笛、甘いメロディーと胸をキュッと掴まれるようなせつなさがこみ上げてくる“帰り道”は限界までメロディーに寄ったまじりっけのない純度100%のポップだし、歌い続ける意味を切々と歌い上げた“もしも”は、軽快さや愉快さとはかけ離れたシリアスで重みのあるものだった。一方で“Don't Stop The Time”のようなスティール・パンが聞こえてきそうな南国ムード溢れるダンス・ナンバーでは、斉藤がギターを下ろしてハマーダンスを取り入れたご自慢のダンスを披露し、会場を笑いと歓声の渦に巻き込む。この振り幅は観ていて本当に痛快だ。新たな可能性を迷わず手に入れて、どんどん自分たちのものにしていく彼らは、雑食系ポップ・モンスターにほかならない。
MCではツアーの思い出話に花を咲かせていたのだけど、それがいちいち面白くて会場を沸かせていた。一時期体重100キロ超えした斉藤は、ライブ中にジャンプすると膝が痛くなってしまったそうなのだが、痩せるという選択よりもバッシューを履いて膝への負担を減らすことしたということで、エアマックスを自慢していたり、今日も登場から「おっ!」と驚かせた山下の金髪は、ツアー中にのどを痛めて町の薬局のおばあちゃんに相談したところ「歌を歌う人?」と聞かれて「はい」と答えたら、「えっ!冗談で言ったのにー」と言われて、ショックを受けたことから金髪にしたというメンバーも知らなかった理由を話してみたり……加藤は天才的な脱線っぷりを見せて、完全自分ペースで、終にはメンバーのモノマネ披露コーナーに突入してみたり。(斉藤のEXILE・ATSUSHIの歌まねは絶品!)完全フリースタイルなMCも含めて竹内電気の自由度はどんどん高まっていく。
エモーショナルに突き抜ける息をもつかせない後半戦に突入して、ますます会場のボルテージは最高潮へと達する。“Jynga Jyanga”のハイトーンの声を振り絞った《シャバダバ》大絶唱はものすごい切れっぷり。サティフォのギターソロも超冴え渡っている。甘いメロディーとは両極にある男臭さ全開の竹電を開陳させてますますエキサイトしていく。バッシュー効果もあってかここ一番のハイジャンプで飛び上がった斉藤は「全然まだまだ足りない! 俺に力を分けてくれー!」とフロアを煽り、エネルギッシュなナンバーを畳み掛けていく。クライマックスにはBLITZは汗と笑顔と昂揚感に満ち溢れ、まだまだ終わってほしくないという何ともいえない切なさに包まれる。
『PLAY』収録曲を網羅しつつ、過去曲のメドレーはあるわ、モノマネまで飛び出すわのやりたい放題、竹電のエキスが凝縮されたおいしいとこ取りの約2時間。「SHY」を卒業して一皮向けた竹電が照れも恥じらいも取っ払って真っ向勝負で届けてくれたポップ・ミュージックに心から飛び込んだ一夜だった。「また会おうぜ!」「また来るからね!」とステージ去り際に口々に叫んでいたメンバー。「東京の人に忘れられたくないから」と7月には自主企画イベント『御奉仕』なども含め東京ライブもたくさん控えているので、今の直球ストレートな竹内電気にドーンと飛び込もう。(阿部英理子)