爆風を巻き起こすようなバンド・パフォーマンスはもちろん、幾度も絶頂値を更新し続けるオーディエンスのフィーバーっぷりにも圧倒された、何しろ濃密な90分だった。
フロアには開演前から興奮を抑えきれない幾つものコブシが突き上がり、波打つようにクラウドが揺れる。暗転と共にステージには巨大なバック・ドロップが掲げられ、「9mm Parabellum Bulletです!」と卓郎が一礼。4人でひとしきり爆音を掻き鳴らして“Cold Edge”に雪崩れ込めば、耳をつんざくような特大のオイ・コールが勃発!
ZEPPに流れる血流が倍速で巡り出し、規定値を超えるアドレナリンが放出され、早くも2階席まで総立ち状態となった。さらに「いこうぜ!!」と卓郎がアジって“エレヴェーターに乗って”へ。濛々と焚かれるスモークと真紅のライトがあいまって、ZEPPには最前線の戦場さながらの光景が立ち現れる。続けて“Vampire Girl”(サビではフロア中が大合唱!)→“Invitation”(卓郎と滝のユニゾン・ギター、炸裂!)と速射砲的に畳み掛けていくキューミリ。何というか、波動拳→昇竜拳→真空竜巻旋風脚!と必殺技のスーパー・コンボをいちいちクリティカル・ヒットさせていくさまは(あくまで喩えですが、あるいは滝君からは昇竜拳でてたかもしれない・笑)、見ていて実に爽快。そう、軽快なスティック捌きでビートの絨毯爆撃を仕掛けるちひろに顕著なように、ロック・バンドとして自らを相対化したうえでのエンターテインメント性が尋常じゃないのだ。目も、耳も、意識も、一瞬たりとも逸らすことができない。五感すべてがキューミリに捕らえられてしまったようだ。
ブレイクでは、フロアのそこここから「タクロー!」「ちひろ~!」と歓声が上がる。それを聞いて卓郎、「卓郎とちひろが混ざると『コンニャロ!』に聞こえるね」と笑わせる。続けて「『Revolutionary Tour 2010』へようこそ! 楽しんでいこうじゃないか! これは吉井和哉さんかもらったギターなんだ。でも、やるのは俺らの曲なんだけどね(笑)」と、再び“Wanderland”、“Mr.Suicide”と攻撃再開。中でも「『Termination』ってアルバムの曲を聴いてください」と届けられた“Heat-Island”、“Caucasus”のフェーズは個人的なクライマックスと言えるもので、頭がオカシくなっちゃうそうなビートの連打と破滅的な(しかし驚くほどタイトな)アンサンブル、和彦の気狂いシャウトはマジ凄絶だった。楽曲の情景とマッチした照明も効果的で、3本目にして『Revolutionary Tour 2010』が高い完成度に達していることを感じさせた。
「よぉ、荒くれ者ども! ケガ人はいねぇか?ケガだけはしないで下さい」と終盤も壮絶な肉弾戦を繰り広げるフロアに卓郎が注意を呼びかけつつ、「お台場! 声が小さいぜ! オダイヴァー!!!」とアジテートし、“Finder”、“Heart-Shaped Gear”では狂乱のダンス・タイムを現出。続落する日経平均も低迷する内閣支持率も勢い急騰しちゃうんじゃないかと思ってしまうくらい(残念ながらそれは錯覚でしたが……)天井知らずの熱狂で次々に未体験ゾーンに踏み込んでいったキューミリ。<世界を変えるのさ! 俺たちが! 思い通りに!>と叫んだ“The Revolutionary”ではバンドの意志に賛同するようにフロア全面にコブシが屹立。その光景は実に壮観で、少なからず感動的でもあった。「もうちょいイケそうだな!? もうちょいイカないと俺らに追いつけないと思うから!」とアンコールでもすこぶる挑発的に、超人的な激演を繰り広げてライブを締めくくった4人。一体、ファイナルの横浜BLITZ(6月30日)の頃にはどうなっちゃってんだろう!?
9mm Parabellum Bullet、つくづく底知れないバンドである。(奥村明裕)
<SET LIST>
1.Cold Edge
2.エレヴェーターに乗って
3.Vampiregirl
4.invitation
5.Wanderland
6.Mr.Suicide
7.3031
8.光の雨が降る夜に
9.Heat-Island
10.Caucasus
11.次の駅まで
12.キャンドルの灯を
13.Finder
14.Heart-Shaped Gear
15.命ノゼンマイ
16.Black Market Blues
17.Punishment
18.Talking Machine
19.The Revolutionary
20.Lovecall From The World