そんな記念すべきツアーファイナルのチケットはソールドアウトだ。否が応にもオーディエンスの期待が高まる中で行われたこの日のライブは、その期待を軽く上回る、本編、アンコール合わせて全18曲の「凄まじい」という形容詞がこれ以上ないほど当てはまる凄まじいライブとなった。
「本日はー、ご来場いただきましてー、誠にありがとうございますー」
開演前、木村哲朗(G/Cho)によるゆるーいナレーションが流れ、会場に笑いが起こる。その後もたたみかけるように木村による英語版(言えてない)、イタリア語版(もっと言えてない)のナレーション。
その後、照明が落ち、鹿野隆広(Dr)、ジョニー柳川(B/Cho)、木村哲朗の順にメンバーがステージに登場し、最後に登場した秋葉正志(Vo/G)の「元気ですかー!!」というシャウトから始まった一曲目、木村の重厚なギターリフをバックに、秋葉正志の、本物のロックシンガーにのみ与えられる天才的なボーカルが爆発する王道のロックチューン“愛をさがして”が始まった瞬間に会場が開演前の何倍もの熱気を帯びたのがわかった。シンプルなロックンロールをスカッとするほどの爆音でかき鳴らすこのバンドの最大の魅力は、なんと言っても秋葉のボーカルだろう。がなりながら、吐き捨てるように言葉を発する秋葉のボーカルには、暴力的だけどどこか少し悲しみを帯び、私たちの心をどうしようもなく揺さぶり、前に転がっていく力を与えてくれる、あのエレカシ宮本に通ずるような不思議な力があるのだ。
ライブ中盤ごろの、『素晴らしいね』からの軽快なポップチューン“9 to 5”辺りから、メンバー全員が爆音でドライブしまくるザ・ビートモーターズのロックンロールを、これでもかというほど表現した12曲目、“素晴らしいね”にかけての彼らのギアの上がりようには、本当に凄まじいものがあった。
サウンドの土台を支える鹿野のパワフルなドラミングやジョニーのバンド全体にうねりを与える独特のリズムに、ライブ序盤と比べてさらに重厚さを増した木村のリフ、前段で述べたような圧倒的な説得力を持つ秋葉の天性のがなり声が乗っかったとき、そこに生まれる「無敵感」はもはや新人バンドのそれではなく、まるで長年のツアーによって鍛え上げられたライブバンドのそれを見ているかのような気分だった。これで初の全国ツアー、初のワンマンライブというのだから、思わず「嘘だろ?」と言いたくなる。
彼らの本物のロックバンドとしてのポテンシャルの高さに終始驚かされっぱなしだった今日のライブで、最もそれを強く実感したのがアンコールで “ばらいろの世界”を披露した時だった。CDに収録された音源よりも明らかに長い時間、あまりにも男臭く、不器用なまでにまっすぐな爆音を吐き出しながらメンバー全員がステージ上を跳ね回り、何度も繰り返される秋葉の「レットミーヒアユーセイイェー!!」というコールにオーディエンスが全力で「イェー!!」と食らいついている光景は、ザ・ビートモーターズを含め、その場所にいた全ての人が一つのかたまりとなって、一点に向かって転がっていくような、そんなすさまじいものだった。
初めから終わりまで、一度もぶれることなく自らの信じるロックンロールだけをぶつけ続けた、1時間半にも及ぶ彼らのツアーファイナル、初のワンマンライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
小細工無しのバンド編成、オールドスタイルで男臭い王道のロックンロール。それさえあれば彼らは会場の全てをぶち抜いてしまえるほどの膨大なエネルギーを放つことができる。それを全身で感じ、確信させてくれた今日のライブは、アルバム、ツアータイトル通りの本当に素晴らしいものだった。(前島耕)
1 愛をさがして
2 アンドレア
3 車でGOしたのさ
4 恋するふたり
5 かちこち先生
6 スマイルをおくれよ
7 ひとりのほうだけ
8 ボーイフレンド
9 9 to 5
10 ロック・フェスティバルの日
11 夢のしわざ
12 素晴らしいね
13 きれいな少女
14 素敵なお友達
15 ガールフレンド
16 無理をしないで
17 ジェット先生
アンコール
18 ばらいろの世界