怒髪天@新木場STUDIO COAST

怒髪天@新木場STUDIO COAST
怒髪天@新木場STUDIO COAST
「レディース・アンド・ジェントルメン! ウィー・アー・怒髪天! えー、本日はここ、新木場STUDIO COASTにお越しいただきまして誠にありがとうございます! 5月3日・千葉LOOKからスタートして、上は北から下は南まで(原文ママ)回って参りました!」……もはや怒髪天ワンマンの名物と化した、中盤の坂さんこと坂詰克彦(Dr)のMCショーに、会場一丸のうおおおという野太い歓声と万感の含み笑いで応えるオーディエンス。最新アルバム『オトナマイト・ダンディー』を引っ提げた怒髪天の全国ツアー『オトナマイト・ダンディー・ツアー2010“NEOダンディズム”』のセミ・ファイナル会場=新木場STUDIO COASTは、ステージの4人と満場の観客の魂が爆裂し響き合う怒濤のロック空間! 「ありがとう。最高! お前ら天才! 人を乗せる天才! 死んじゃうよ?……後ろの人(坂詰)が!」という増子直純(Vo)兄ぃの絶叫が、そんな心の業火にさらに油を注いでいく。

沖縄のファイナル公演が控えているので全曲順掲載は割愛するが、“やけっぱち数え歌” “オレとオマエ”“オトナノススメ”“我が逃走”といった『オトナマイト・ダンディー』の楽曲はもちろん、7月14日リリースの新作シングル曲“真夏のキリギリス”に加えそのカップリング曲=“夏のお嬢さん”(榊原郁恵のカバー)まで盛り込みつつ、“労働CALLING”に象徴される「日本のワーキング・クラスのプロテスト・ソング」サイド、“情熱のストレート”のど根性闘争サイド、“酒燃料爆進曲”のやさぐれ衝動逆噴射サイド……といった怒髪天の持てる武器を、Wアンコールまで含め全23曲の中にありったけぶち込んだ、まさに力いっぱいの内容だった。

「雨降ってたか? ギリギリか。帰りはヤバいな。まあ、どうせ帰りはビショ濡れだからいいか! やっと新木場まで戻ってきた! もう、すごい旅だった! 坂さんが5kgも……太るくらいに!(笑)」とか「昨日『ライブに向けてアイドリングが必要』と思って走ったら、1時間の予定が40分で太ももパンパン。ズボン細いし、今日は気持ちモニター高いしね。最後は足上がんないかもしんないよ?」とかいう増子兄ぃのMCも絶好調だったし、「こんなに人入ってどーすんの?」という兄ぃの顔は感動で真っ赤だった。

そして。ファイト一発!な逆ギレど根性感ではなく、身体の内から沸き上がる熱量を封じ込めた“俺ときどき…”“ふわふわ”のような楽曲も、この日のライブでは重要な位置を占めていたし、“労働~”のメタル×フォークロアや“GREAT NUMBER”のハード・ロック×津軽三味線のような音楽的雑食性とも相俟って、「不況ニッポンの酔いどれアジテーター」としてお茶の間レベルでも大躍進を遂げた怒髪天の「その先」の可能性を自ら描き出そうとする実験精神も随所で光っていた。が、何色の楽曲をやろうが、最後には全部引っ括めて真っ白にスパークさせて明日への活力に変える増子兄ぃのパワーは「健在」どころかさらに切実に、ダイナミックにオーディエンス1人1人に迫ってくる。「勝ってなくても、負けんなよおおおおっ!」というスクリームで巨大な空間を震わせた“酒燃料爆進曲”。《最後に勝つために 戦線離脱せよ!》と歌う“我が逃走”。「生きて、また会いにこいよ!」と、増子兄ぃは満場のフロアに向けて声を限りに何度も叫び上げていた。たとえ、カップ酒片手のやさぐれサバイバル理論では切り抜けられないほど世の中がシビアでダークでも、死ぬな、潰されるな、カッコ悪くてもとにかく生き延びろ、前へ進め……そんな渾身のメッセージが、活動開始から25年を超える怒髪天ヒストリーの重みと一体になって襲いかかってくる。

「バンドなんて、いい時ばっかじゃねえんだ。上がる時もあれば下がる時もある。自分たちでは気づいてなくてもハタから見れば低空飛行ってこともある。それでもな、『その日のことを思い出したら、つらいことがあっても頑張れる』っていう日があんだ。今日がそれだ!」という兄ぃのMCに、ひときわ大きな歓声が沸き起こる。「考えてたんだ。どうすればみんなと1対1になれるか。1対100とか1対1000とかじゃなくて。そのために……俺らが持ってるもん、全部届けるから! お前、名前なんてんだ? 名前言え! 俺らは……怒髪天だ!」という声に、2000人を超えるオーディエンスが一斉に名前を叫び上げ、それが巨大なエネルギーとなって波打っていく。「思いっきり届けっから、持って帰れ!」最高だ。Wアンコールでは「もう、靴も重いんだよ!」とブーツを脱ぎ捨て、ついに裸足で登場した兄ぃ。それでも、血の最後の一滴まで振り絞るように、喉も裂けよとばかりの大絶唱! 「全部届けたぞ!」と全身ズタボロで去っていく兄ぃの姿に、感激の声と拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

ちなみに。冒頭の坂さんMCコーナーには続きがある。「なんと、このツアーが終わりますと、恐ろしいことに夏がやってきます。夏フェスです! 詳しいことはウェブで! さらに、10月には『響都ノ宴』3デイズ(10月1日・2日・3日@京都磔磔)、同じく10月の12・13・15と東京でワンマンが決定しております! 3日間、すべて違う内容となっております! 1日でも逃すと……惜しいかも! これからの怒髪天、ますます目が離せません! いかがでしょう! 怒髪天に清き1票を!」……要は、「怒髪天2010」はまだまだ絶好調だということだ。(高橋智樹)
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