毛皮のマリーズ@SHIBUYA-AX

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ステージにまだ姿を現していない志磨の、甘い歌メロが響き渡る。“Mary Lou”。メジャー初となるこのシングルをリリースした毛皮のマリーズの、『コミカル・ヒステリー・ツアー』ファイナルとなるSHIBUYA-AX公演だ。そしていよいよ、転がり出すビートとともに舞台上に躍り出る志磨。サスペンダーで白いパンツを吊り、両の手には真っ赤なボクシング・グローブを嵌めている。あら素敵。さすがに大喜びで沸き上がる満場のオーディエンスであった。いや、足癖の悪い志磨のことなので、これはボクシングではなくムエタイなんだろうか。この姿は、JAPAN編集部・井上さんの日記によると、往年のデヴィッド・ボウイになぞらえたものだそうだ→(http://ro69.jp/blog/japan/45127)。不勉強にも知りませんでした。

越川の思い切りの良いギター・リフが掻き鳴らされ、続けて放たれるのはインディー時代の作品から“ベイビー・モートン”だ。今回のマリーズは立ち上がりからバッキバキのロックンロール・サーカスである。志磨がスタンド・マイクを抱えた志磨が若かりし日のチャック・ベリーのように軽やかにステップを踏む“ボニーとクライドは今夜も夢中”へ。うむ、ロックンロールは素晴らしい。率直であれば率直であるほど、いかがわしければいかがわしいほどに素晴らしい。そんな風に感じさせて止まない、いきなりの直球ロックンロール連打なのである。

「こんな日が来るのを、ずっとずっと待ってました、オライ! 今夜はAX、隅から隅までよろしくなー。楽しんで帰ってください。あと、今日は懐かしい曲も、やります。こんな曲を。覚えてるかな?」と、アコースティック・ギターを抱えて穏やかな、そして悲しみが滲むナンバーを歌い出す。“或るGIRLの死”だ。効果的に美しいピアノとオルガンの音色を加えてゆくのは、当時からレコーディングにも参加していたサポート・メンバーにして、自身のバンドのニュー・アルバムを2日前にリリースしたばかりのソウル・フラワー・ユニオン、奥野真哉である。先週、赤坂ブリッツで素晴らしい新作ライブを見せてくれていた。

“ザ・フール”の《タラリラ……》という長いコール&レスポンスをオーディエンスと一緒に歌い終えると「しゅ……しゅごいね。ありがとうございます」。とご満悦そうな志磨である。「昔、ここで西くん(越川)と一緒に警備員やったことある。ね? 警備員。……警備員のみなさーん! 今日は最後まで、楽しんでってください。我慢出来なくなっちゃうのがロックンロールだから! やってる私が許可します。そして、ガッポリ日給を稼いで帰ってください」とルーズなブギー・ロック・チューン“金がなけりゃ”に傾れ込んでいった。うまい。そして、メジャー・デビュー・アルバムにこの曲を入れたマリーズの図太さ、確信犯的クレバーぶりにはつくづく恐れ入る。不景気で染みったれたことばかり言うよりも、今の時代にはこういうメッセージを投げ掛けた方が余程刺激的だ。こういうセンスにおいて、やはり志磨は優れて鋭い表現者である。

「ヒロティが歌います!」と栗本(B.)にリード・ボーカルを譲り渡して披露されたのは、同じくメジャー・デビュー作から“すてきなモリー”だ。栗本のマイクには深いリバーブが効かせてあって、これがコーラスのときにはとても良い味を出していたのだが、せっかくキュートで抜けの良い声をしているので、リード・ボーカルのときにはちょっとリバーブを落とした方がいいのでは? と思った。そして一転、パンキッシュに爆発力を見せつける必殺ナンバー“愛する or die”、さらにはエルヴィス・プレスリーとエディ・コクランに揃って追い立てられるような“犬ロック”と、ド派手なロックンロール・モードで畳み掛けてゆく。ステージ上空からカラフルな証明が煌めく中で披露されたモータウンな“BABYDOLL”では、越川がエモーショナルなギター・ソロを弾き倒してパーティに花を添えていた。

歌の物語にブルース・ハープで情感を加えた“人生 II”を披露すると、富士山がシンバルを震わせる中で、志磨がこんなふうに語る。「今日は、今年最後のワンマン・ライブです。2010年はエポックな、エポックなことが多過ぎて、私たちはどうにかなってしまいそうでした。あなたに会えたこの2010年は、余りに甘く、美し過ぎやしないかと、私は、しょー思うのです」。そしてドラマティックな名曲“ビューティフル”を、熱く歌い上げる志磨。ここからのクライマックスは見事だった。「僕と君だけの国家を歌おう! 国歌斉唱!」と続けざまに放たれた『Mary Lou』収録の“コミックジェネレーション”では、志磨と越川が一本のマイクに寄り添って、叫ぶようにメロディを投げ掛けてくる。

「ありがとう2010年! なかなか良かったぜ。……俺たちは手強いぜ? 俺たちは、強い! 俺たちは、負けない! なぜなら! 愛を知ってるから。それでも構わないと言うなら、カモン、2011年。一緒に年を取っていこう」。“ジャーニー”ではそんなふうに告げてフロアへと飛び込んでゆく志磨である。本編最後の“REBEL SONG”まで、実にドラマティックなステージングであった。17曲。曲数だけで言ったら決して多くはない。そして、彼らは「高度な音楽性」とかそういう物差しで見れば、実に稚拙極まりないロックンロールをやっているだけだ。しかし、一曲一曲が長く引き延ばされた、反復するリズムとコードの中で演奏が熱を帯び、高揚感を募らせ、そこに投下される選び抜かれた一言一句が無敵の瞬間を生み出すことを、彼らは知っている。逆に言えば、どんなに高度な演奏技術を持っていても、その無敵の瞬間をつかまえることが出来ない限りロックンロールは成立しないことを、彼らは知っている。

アンコールでは、かつてジョン・レノンが使用していたエピフォン・カジノと同じように塗装を剥いだギターを抱えて志磨が姿を現す。最後の最後に奥野が奏でるメロトロン風のサウンドの中で歌われた“平和”では、《二人のために》と歌われるフレーズで志磨が二本指を高く、真っ直ぐに掲げる。それは、偶然にも、何かを象徴するサインに良く似ていた。(小池宏和)

セット・リスト
1:Mary Lou
2:ベイビー・モートン
3:ボニーとクライドは今夜も夢中
4:或るGIRLの死
5:ザ・フール
6:金がなけりゃ
7:すてきなモリー
8:愛する or die
9:犬ロック
10:BABYDOLL
11:人生 II
12:ビューティフル
13:コミック・ジェネレイション
14:ジャーニー
15:REBEL SONG
EN-1:デュマフィスの恋人
EN-2:平和
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