PUFFY@日比谷野外大音楽堂

PUFFY@日比谷野外大音楽堂
5月13日でデビュー15周年を迎えたPUFFY。「まさか15年も続くなんて!」(亜美)「本人たちもそうだし、全員そう思ってたと思いますけど。四発屋くらいかなと思ってたけどね(笑)」(由美)と15年を思いながら、相変わらずなゆるゆるトークを繰り広げる2人。4月2日の大阪公演からスタートしたライブツアーが本日、デビュー10周年記念ライブ以来となる日比谷野外大音楽堂でファイナルを迎えた。本来であれば、15周年を記念した内容で届ける予定だった今回のツアーだが、3月の震災を受け、PUFFYの2人が今できることをしっかり届けるという意味で、ツアータイトルを『PUFFY TOUR 2011“Time For ACTION”』に変更。デビュー15周年という感慨深さはもちろんだが、それ以上に今日のライブはPUFFYのこれからの「ACTION」を提示したことに大きな意味を持たせたパワー漲るステージだった。

PUFFY@日比谷野外大音楽堂
デビュー15周年を記念して立ち上げられた期間限定のファンクラブ「劇団アセス」をモチーフにした出番前映像に始まり、1996年のデビュー当時から振り返るアーティスト写真が次々と流れ、長いようであっという間の15年の時を会場全員が共有する。おなじみのハイスタの“Can't Help Falling In Love”のSEにのって、バンドメンバー、そして亜美、由美がステージに。盛大な手拍子と大歓声で迎えられる中、聞こえてきたのはあのオリエンタルなシンセのイントロ。そう“アジアの純真”だ。1曲目から壮大に会場を揺らし、15周年の幕開けに相応しい祝祭ムードに包まれる。そのまま加速度を上げて、川西幸一(Dr)の激烈ビートが刻まれると“Hi Hi”へ雪崩れ込み、ダイナミックなバンド・アンサンブルに乗って“ジェット警察”で一気にヒートアップ。そんなバイタリティ溢れる立ち上がりから、8月17日にシングルとして発売が決定した新曲“SWEET
DROPS”を早くも披露。渡辺シュンスケ(Key)の可憐なシンセのラインに導かれるように2人の甘いハーモニーが響き渡る優しい歌だった。

そして、もちろん最新アルバム『Thank you!』からのナンバーもプレイ。2人が吹き鳴らすブルースハープが哀愁を誘う民生節全開の“マイカントリーロード”では、地に足をつけてマイペースに歩み続ける2人の今とこれからを歌うような揺ぎ無さを感じる。さらに、「斬新で新しい試みをした曲があるので聴いてください」と言って始まったアルバムの中でも一際挑戦的な“Wake up, Make up”では、なんとスチャダラパーのANIとBoseがゲスト参加!
これまでのPUFFYにはなかったクラブミュージックの要素を取り入れ、全編打ち込みのダンスミュージックにANIとBoseのラップと流石組のダンサーが彩りを添えて軽やかにジャンルを飛び越えていく。

その後もアバンギャルドにはじける“くちびるモーション”、骨太なバンドサウンドに踊らされる“Shall We Dance?”、当時のPV映像とともに軽快に駆け抜けていった“サーキットの娘”と、胸の高鳴るような陽気で小気味のよいナンバーのオンパレードにオーディエンスの熱気も急速的に増していき、少し前にパラパラと降り出した雨もすっかり止むほどの熱さを見せていた。そして、15周年の特別感を出すために用意してきたという“カニ食べ行くのでしょう”というメドレーへ突入。その前のMCでは特別感を出してキャラをつくっていこうと、なぜか2人揃って真矢みき風の口調で今回のメドレーを説明するもグダクダな展開になり、会場の笑いを誘う。そんな2人の関係性が15年間続いてきた一つの理由でもあるのだなと、とても微笑ましく思える。で、どういうメドレーかというと『Bring it!』ツアーの時に作ったメドレーを2011年版にしてバンマスの木下裕晴が新たに作り直したもので、“渚にまつわるエトセトラ”の《カニ食べ行こう》というフレーズと“海へと”の《行くのでしょう》というフレーズを中心に、そのほかの名曲の歌詞を組み合わせ一つの曲にしてしまうという一味変わったごった煮メドレーだ。長年PUFFYの振り付けを担当してきた南流石も登場し、会場一体となって踊りながら斬新なメドレーに心躍らせる。「この先を歌いたいのに…」とオーディエンスに思わせたことを本人たちも自覚してのことか、次の曲で「思いっきり歌って踊ってください」と本家本元の“渚にまつわるエトセトラ”をフルでプレイし、野音がさらなる大合唱と突き上がる拳で埋め尽くされ多幸感に満ち溢れた。

疾走感溢れるロック・サウンドに乗って《過去 今 未来 愛 ひとは素晴らしく 日々よくばる》とこれからも飽くなき追求心とともに前へ進んでいくという宣言のように逞しく歌い上げた“欲望”や、赤い銀テープが空いっぱいに舞うという感動的な演出とともに感情を吐き出すように歌われた“赤いブランコ”。後半で見せたシリアスなロック・モードに立ったPUFFYの姿は、ロック・アイコンとしての存在感をより一層強め、改めて彼女たちの底力というものを見せ付けた瞬間だったと思う。そして、「15周年を迎えて、お互いに思ったこと、みなさんに思ったことを歌詞にしてみようということで作った曲です」と語り、本編ラストは“ハッピーバースデイ”。15年分のPV映像がバックに流れる中、2人の出会いに対して感謝の気持ちを素直に言葉にした心温まるハッピーソングに絆され、会場にはたくさんの笑顔の花が咲いていた。

アンコールは今できることをしっかり届けるという思いをこめた『Time For ACTION』という今回のツアータイトルに相応しい締めくくりだった。最後の曲は“誰かが”。この曲が今、この情況下で歌われることの意味はとても大きい。《誰かが倒れたら 起こせばいい それだけでいい》《誰かが立ったなら ささえればいい それだけでいい》、その当たり前でシンプルで屈強な言葉が私たちの背中を後押ししてくれるような気がして、何かできることを「ACTION」していこうという気持ちにさせられた。15周年を迎えたPUFFYの過去、現在、そしてこれからの「ACTION」を共有した素晴らしい一夜だった。(阿部英理子)
PUFFY@日比谷野外大音楽堂

1.アジアの純真
2.Hi Hi
3.ジェット警察
4.SWEET DROPS
5.きれいな涙が足りないよ
6.マイカントリーロード
7.Wake up, Make up
8.くちびるモーション
9.Shall We Dance?
10.サーキットの娘
11.カニ食べ行くのでしょう
12.渚にまつわるエトセトラ
13.マイストーリー
14.欲望
15.赤いブランコ
16.すみれ
17.ハッピーバースデイ

アンコール
1.とくするからだ
2.愛のしるし
3.誰かが
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