ケイティ・ペリー @ 新木場スタジオコースト

ケイティ・ペリーの歌唱力・表現力については自分なりに認識しているつもりだったけれど、全っ然甘かった。膨大なアイデア/クリアな世界観とそれを描き出すために成される入念な下準備があって、そこに親日家としての彼女からとめどなく溢れ出す愛情までがどばどばと加えられ幸福なライブ空間を形作ってゆく。ショーケース・ライブやプレミア・イベントなどを勘定に入れると、このところは毎年来日しているケイティだけれども、2月にヨーロッパからスタートした『カリフォルニア・ドリームズ・ツアー 2011』は英米で初登場1位(日本においてもオリコン洋楽1位)を記録したメジャー2nd『ティーンエイジ・ドリーム』を引っ提げた本格的なワールド・ツアーであって、来日後には北米エリアへと凱旋帰国しツアーを続行する予定になっている。

今回のライブレポートでは、まだ24日の東京・新木場スタジオコースト2日目と26日のZepp Osaka公演とライブ日程を残しているのでセット・リストや演出の詳細については触れないが、『ティーンエイジ・ドリーム』で打ち出されたケイティの揺るぎないメッセージを更に掘り下げ、コンセプチュアルに伝えるというものになっていた。キッチュでロリポップな、極彩色の女子世界ステージ・セットと衣装に包まれ、激しいダンスと衣装チェンジをくり返しながらしっかりとその歌声を届けてくれる。

音楽的な部分では『ティーンエイジ・ドリーム』のエネルギッシュなダンス・ポップが中心になっているが、メジャー・デビュー作『ワン・オブ・ザ・ボーイズ』に見られた華やかなアメリカン・ポップ・ロック・サウンドもバンドによって盛り込まれていて、このテイストが好きな僕には嬉しかった(彼女の声はバンド・サウンドの中でも良く映える)。中には、意表を突くようなスペシャル・アレンジで届けられるナンバーもあって、ダンス・ポップの高揚感を引き立てる練り込まれたセット・リストになっている点も特筆すべきだろう。コンセプトに則った形で選曲されたカバー・レパートリーにも唸らされる。

そして、ケイティが衣装をチェンジしている合間にはステージの物語を支える映像が挟み込まれ、鮮やかに着飾ったダンサー達も活躍する。多彩なダンスを繰り広げる彼らとケイティとの連携がまた素晴らしくて、歌の世界観を視覚的に伝える驚くべきパフォーマンスが随所に見られた。ステージ・セットについては、彼女ほどの成功を収めているアーティストとしては高額な予算を投入したものではない。むしろ、どこか手作り感を受け止めさせるということに注意を払っているようでさえあった。

これがレディー・ガガであれば、赤字覚悟のとんでもないステージ・セットを作り上げ、観る者を圧倒するスペクタクルとしてその巨大なイマジネーションを見せつけてゆくことだろう。ガガの表現にはそういう必然がある。ところが、ケイティはそうしない。艶やかな衣装チェンジや高度なダンス・パフォーマンスを盛り込んでも、そこには手作り感があって、ファンタジーが現実と地続きであるということを一貫して伝えようとしている。それこそが、『ティーンエイジ・ドリーム』そして『カリフォルニア・ドリームズ・ツアー 2011』の本質なのだというふうに。

とうの昔に形骸化し、今や空虚さの象徴であるはずのカリフォリニア的/ハリウッド的アメリカン・ドリームのイメージ(ロックにおいてはレッド・ホット・チリ・ペッパーズやマリリン・マンソンが10年以上前に決定的な止めを刺している)を、敢えてケイティは踏まえ、それを踏み越えて新しい命を吹き込もうとする。アメリカン・ドリームの体現によってこそ救われた自身の人生を物語化してメッセージとして伝えるものこそ、アルバム『ティーンエイジ・ドリーム』であり『カリフォルニア・ドリームズ・ツアー 2011』なのだ。

だから、空虚さの象徴となってしまった「夢」を戦うケイティの表現は、徹底的に誠実な心のこもったものでなければならない。たとえ今や本人がセレブリティ・ライフを送っていたとしても、こと自身の表現の場においては誠実でなければならない。歌は過剰なまでにエモーショナルなものになる。現実と地続きの歌はエモーショナルにならざるを得ない。どれだけ演出を凝らしても、今回のステージがケイティの歌に集約されていたのは、そのためだ。とことん誠実なパフォーマンスでなければ今日に「夢」を語ることなど出来はしないからだ。そういう舞台で打ち上げられた“ファイヤーワーク”は、まさに圧巻の一語に尽きるものであった。

彼女は「18か19のとき、休暇を使って初めて日本に来たの。本当にこの国が大好きなのよ」と語り、また「《今は日本に行くべきときではない》って言われたんだけど、私は《今こそ、日本にいくべき最高のタイミングじゃない》って言い返してやったわ。気持ちを強く持って、必ず再建してね」とエールを送ってくれた。今回の来日中はビルボード・ミュージック・アウォードでの3部門受賞という嬉しいニュースも飛び込んでくる一方、お気に入りの国を紹介するべく同行させた昨年結婚したばかりの夫=ラッセル・ブランドが入国を拒否されるというトラブルもケイティのツイッターで明らかにされた(理由は不明だが以前は派手な生活ぶりが報じられていた人でもある)が、さすがに彼女のこの日本贔屓ぶりを目の当たりにしたら、ちょっと可哀想になってしまった。次回は彼女に免じて、情状酌量をお願いしたい。今の日本で「夢」を歌ってくれることは、他の何にも代え難い大きな価値があるはずだから。(小池宏和)
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