梅雨時にもかかわらず、見事なまでに晴れ渡った空模様。その青空の元に流れる、早くもアルコール注入済みのオーディエンスの奔放なムード。そして、ランダムに並べられた木箱に照明などがセットされた(まるでどこかの倉庫のよう)、いつになく凝ったステージセット。夕刻を迎えた日比谷野外大音楽堂には既にパーティを楽しむには申し分ない環境が整っていて、唯一足りないピースといえば、SPECIAL OTHERSの音楽のみ。あー、開演が待ち切れない!
定刻より5分押し(17時35分)で、おなじみの民族音楽が場内に響けば、湧き上がる大歓声! メガネ姿の芹澤(Key)、ハットで常夏スタイルの宮原(Dr)、短髪になってスッキリした印象の又吉(B)、小粋なワーク・スタイルの柳下(G)が揃ってステージに登場し、ひとしきりジャム・セッションを繰り広げる。そして、4人の波長がピークにまで高まったところで“wait for the sun”へ! フロアも勢いよく体を揺らし、腕を突き上げてフィーバーする(アウトロでは「オーオーオオーッ!」と特大のシンガロングが!)。そう、スペアザ2度目となる野音ワンマン『QUTIMA Ver.13』は、冒頭から最高潮の盛り上がりとなった。
続けて又吉がアップライト・ベースに持ちかえて、“Bump”の弾むようなグルーブがみるみる野音をリフト・アップ。そして、ヤギー(柳下)のインプロ(即興演奏)から“Uncle John”へと雪崩れ込めば、場内には自然発生的にクラップの輪が広がり、どこかからシャボン玉が飛んできたりもして、とにかくスゲェいいムード!
抜けるような快晴、格別な解放感、至上の音楽――宮原の言うとおり、「楽しくない要素はどこにもない」のだ。なにより4人の発する一音一音が活き活きとダンスしていて、自ずと踊り出さずにはいられない。その磁場はあまりに心地よく、あわよくば何も考えず、何もメモらず、ただ音楽に身を任せていたかった……(職務放棄するわけにもいかないので、気合い入れてレポート続行!)。中盤に差し掛かったヤギーは、ノッてきた証拠である(と筆者が勝手に思っている)ガニ股を連発。饒舌かつ熟達したリード・ギターを響かせ、アッパーな“PB”ではハピネスが弾けるように2,800人が大フィーバー! ひとしきり打ち上がった後の、ビアーを求めて売店に走るお客さんの勢いもまた熾烈だった。
15分ほどのブレイクを挟んで、2ndセットがスタート(スペアザのワンマンは、いつも前/後編に分かれているのです)。ちょうど陽が暮れかかってきた頃合いで、ここからメンバーの背後にセットされた照明が威力を発揮しはじめる。“Good Morning”ではブルーやグリーンの光線が美しくも幻想的な情景を浮かび上がらせ、その“音楽そのものを照らし出す”というような趣きのライティングに誰しもが陶酔。オリエンタルな長編“THE GUIDE”、そしてプログレッシブに高みへと駆け上がる“IDOL”、さらにスペアザ屈指のシンガロング・ナンバー“Laurentech”と畳み掛けた終盤は掛け値なしに圧巻で、オーディエンスを一人残らず“ここではないどこかへ”と導く様は、間違いなくこの夜のハイライトと言えるものだった。メンバー自身も興奮を隠せないようで、「なんていうか、幸せです。ハッピーです。とりあえずサイコーってことです! 家宝ものだね!」(宮原)、「野音って、言葉にできないけど、スゲーいいね。ホント、音楽やってきてよかったなって」(芹澤)と感慨深げに語り、割れんばかりの喝采を浴びていた。
アンコールでは、6月22日リリースのMONGOL800・キヨサクとのコラボ・ソング「空っぽ」に触れ、さんざん本人が出てきて新曲、初披露! みたいな空気を醸し出しておいて、「まさか、まさかの、今日はやりません!(笑)」(宮原)。「2,800人からブーイング浴びたの初めて(笑)」とヤギーも苦笑いだったが(あいにくモンパチがツアー中だったそう)、ラストに狂乱のダンス・ナンバー“AIMS”投下で再びテッペンへ! “コラボレーション・イヤー”と位置づけた2011年の夏も、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2011』、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2011 in EZO』など各地のフェスに出演が決定しているので、どこかでキヨサクとの共演が目撃できることを楽しみにしたいと思う。最後に、ヤギーが披露した一句を添えてレポートを締めたいと思います。「この景色この音この人 忘れません」――天晴れっ!(奥村明裕)
SPECIAL OTHERS @ 日比谷野外大音楽堂
2011.06.04