ビバ・ブラザー @ 恵比寿リキッドルーム

ビバ・ブラザー @ 恵比寿リキッドルーム
ビバ・ブラザー @ 恵比寿リキッドルーム
いよいよ明日から始まるサマーソニック2011、その先陣を飾るように最速で来日して単独公演を敢行したのがこのビバ・ブラザーである。言うまでも無く彼らは現UKロックの復活と再興のシンボルであり、彼らのデビュー・アルバム『フェイマス・ファースト・ワーズ』は80年後半~90年代前半のUKロック、つまりはパンク以降のUKロックが最も輝いていた時代の黄金律を更にエッセンシャルに凝縮し直したかのようなとんでもない作品になっている。つまりビバ・ブラザーは未来への扉をブチ開ける革新的ニューカマーと言うよりも、古典的かつ王道な普遍性で勝負するタイプのニューカマーであって、その点について彼ら自身が何の迷いも言い訳もないのがこのバンドの気持ち良さだ。

まずは、ステージ上に登場した4人の佇まいが最高なのである。デビュー当時のギャラガー兄弟が着ていたような微妙なサイズ感の柄シャツを着用し、ギターはもちろんハイポジで、一方のベースはもちろんローポジというUKギター・バンド伝統のセットアップ。そしてド新人バンドの初来日公演の一発目のステージに既に黒人女性ヴォーカルとサポート・キーボードが参加しているという、照れることなく形から入るスケール感覚。思わず懐かしいやら微笑ましいやらでニヤニヤしてしまったが、最初の一曲の出だしの一音、その100%の確信と共にブン投げられた直線剛速球にピンと背筋を伸ばされた気がした。

セットリストに関してはサマソニでのステージをお楽しみにということで詳細は伏せるが、「全曲シングル・カットできるくらい強力なポップ・ソングしか収録されていない」と彼らがうそぶいた『フェイマス・ファースト・ワーズ』の10曲を、自分達のビッグマウスを証明する最大のチャンスとして全力で再現するのがビバ・ブラザーのライブである。妙な駆け引きや緩急は一切なし、そもそもアルバム自体が緩急とは無縁の「アンセム×10」という構成のため、ライブ・パフォーマンス自体も次から次へと畳みかけるような必殺技の応酬になる。

ビバ・ブラザー @ 恵比寿リキッドルーム
爆音ながらも超ストレートエッジでシンプルな演奏と歌唱ゆえ、このバンドのソングライティングの力学と構成要素がアルバム以上にはっきり示されていくのが興味深いライブだった。意識が混濁しない清廉サイケデリックはストーン・ローゼズの系譜であり、アイロニカルなメロディーとコーラスでぐんぐん上昇していくポップ・ソングの源はブラー、ブルージーなロックンロールは中期プライマル・スクリーム、そしてもちろんオアシスも外せない。ビバ・ブラザーにおけるオアシス要素はざっくり2通りあって、ひとつは『ディフィニトリー・メイビー』期のぶっといグルーヴとサイケデリックとラッディズムへのオマージュであり、もうひとつがノエルのヴォーカル・ナンバーを彷彿させるメランコリックな男泣きの歌メロへのオマージュだ。こう書いてしまうと本当に身も蓋もないけれども、それぞれのバンドの最強最高の美点のみを超厳選してかっさらうそのシビアなセンスは流石と言わざるをない。

「ここから革命が始まるんだ!」と真顔で宣言するリー(Vo&G)のMCも最高だ。彼らの目にはキャパ1000弱のリキッドルームが数万人収容のスタジアムのように映ってるんじゃないかと思うほどの振る舞い、言動、そして音楽。この2011年にこの底抜けの潜在的大物メンタリティはもはや天晴れとしか言いようがない。

ビバ・ブラザーがリアム・ギャラガーに同族嫌悪的にディスられる理由も、モリッシーにその若さと傲慢と蒼さを愛される理由も共に理解できたような一夜だった。明日から始まるサマソニでは彼ら念願の「一番デカいステージ」=マリン・ステージに登場するので、参戦される方はぜひ見逃さないでほしい。「ヘッドライナーのつもりでやる」と意気込んでいた彼らだが、バックステージでビーディ・アイを率いるリアムと鉢合わせしたらどうしよう……なんて下世話な興味も尽きません!(粉川しの)
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