BLACK BORDERS @ 新代田FEVER

BLACK BORDERS @ 新代田FEVER
BLACK BORDERS @ 新代田FEVER
カワニシブラック(Dr/Vo)こと川西幸一(ユニコーン)、ノダボーダー(Vo/G)こと野田タロウ(ジァイアントステップ)の、元ジェット機リズム隊コンビ=BLACK BORDERSによる、3ヶ月連続の対バンイベント「Fever! Fever! Fever!」。先月の第1回にはknotlamp、THE BOHEMIANS、そして第2回となるこの日には、ゲストとしてHINTOが登場。会場となる新代田FEVERには、平日(しかも月曜日!)にもかかわらず多くのオーディエンスが詰めかけた。なおこの日のライブにはSPACE SHOWER TVのストリーミング中継が入っており、会場に足を運べなかった人もauのスマートフォンを通してライブの模様を観ることができるようになっていたそう。

定刻を少し回り、いつものSE少年隊“仮面舞踏会”にのって現れた本日のゲストHINTO。安部コウセイ(Vo/G)の「とうとう、もうすぐ夏が終わりそうですが、今日は楽しんでまいりましょう」という朴訥としたトーンでの挨拶から、1曲目は“びいち”。2曲目は安部と伊東真一(G)のギターが壮絶なデッドヒートを繰り広げた“トキメキドライ”。ハイハットを細かく挿入して緻密なビートを刻んでいく菱谷昌弘(Dr)、小柄な体を大きく揺さぶりながらベース・ラインを蛇行させ、フロアにうねりを生み出していく林束紗(B)、それこそトランス状態かって勢いで、髪を振り乱しながら激しくギターをかき鳴らす伊東、そして芯の通ったぶっとい歌を中央に屹立させて、オーディエンスの琴線を鷲掴みにしていく安部。そんな4人の音とキャラの立ちまくったアンサンブルと、その総体としての巨大なグルーヴで、終始フロアの高揚を煽り倒す圧倒的な展開が続いていく。

きらびやかな照明に彩られたダンサブルな“ぬきうちはなび”、場内の至る箇所からセンチメンタルが大噴出した“バブルなラブ”を終えたところで、安部がMC。「あのー、先程リハーサルで川西さんがやってたんだけど、ベードラ(バスドラム)がめちゃめちゃでけえ。大型犬の犬小屋ぐらい。それがおれはショックでした……(笑)」とフロアに和やかなムードを充満させる。続いて、ゆっくりと始まる安部のイントロから急転直下的に狂気のポストパンク祝祭空間へと雪崩れ込んでいく“バースデーパーティー”、外国人アルバイトに恋をした男の悲哀を切実かつコミカルに綴った“バイトさん”を連射。そしてじっくりと進行するAメロBメロから、疾走感溢れるサビが勢い良く解き放たれる瞬間に、途方も無いカタルシスがフロアを襲った“かんけいないね”を経て、ラストは安部がハンドマイクで飛び出し“メガネがない”でフィナーレ。この日はゲストとしてのアクトながらも、有無を言わさぬHINTOサウンドの説得力と迫力で、オーディエンスをまるごとノックアウトしてしまった4人なのであった。

BLACK BORDERS @ 新代田FEVER
短めのセットチェンジを挟み、The Horrors“Death At The Chapel”のSEで、お馴染み黒ポロ×ネクタイスタイルで決めたBLACK BORDERSがステージ・イン! 「BLACK BORDERSです! FEVER!」というノダの合図でキックオフ・ナンバー“KEEP ON WALK”を発射して、瞬く間にオーディエンスのテンションに火を灯してみせる。その後もサングラスをかけたカワニシの爆裂ドラムが炸裂した“ブラックスタイル”、「みなさんと一緒に踊りたいです!」というノダのアジテーションでフロアを揺らした“ダンシングオールナイト”と、ダイナミックに進んでいくライブ序盤。そして「今日はHINTOのみなさんと一緒にやれて本当に嬉しいです! なんせ僕は福岡に住んでいたので!(HINTO安部、伊東も福岡出身)」というノダのMCからの4曲目“TEENAGE RIOT”では、場内から大きなハンドクラップが巻き起こった。

「若い頃はさ、『そんなのロックじゃねえ』とか思いがちじゃん? もう…どうでもいいよね!」というカワニシの言葉で笑いが起こった中盤のMCでは、このライブの前日にノダが港北のIKEAでカワニシとばったり会った話をしてオーディエンスを驚かせる場面も。その後は“GOVERNOR”“DRUGS”を立て続けにプレイ。ノダの轟々と唸る低音ギターとハイトーン・ボーカル、カワニシが叩き出す豪快なビートとコーラス。それらを息の合ったコンビネーションで臨機応変に変化させていくスリリングなアンサンブルで、終盤に向けてフロアをさらにヒートアップさせていく2人。そして“ロックンロールナイト”“IT'S ONLY R&R”とノダが次々にコールアンドレスポンスを決めていき、イントロが鳴らされるやいなや大歓声が起こったカワニシボーカルの“High-Side”で本編は終了。アンコールでは、ノダによる「お前ら腹から声出せーい!」という甲高いコール(今年のサマソニでのX JAPAN・TOSHIのモノマネ)で“R&R FOREVER”へ突入! フロア中を巻き込んだ盛大な「ロックンロール」大合唱で、この日のイベントは大団円を迎えた。

BLACK BORDERS @ 新代田FEVER
人数が少ないぶんサウンド全体が弱くならないためのしっかり立ったメロディを、ベースレスなぶん単調に感じさせないための何通りものリズムパターンを必要とする、「2人」という編成にこだわるBLACK BORDERS。明らかに通常の3~5人組バンドよりも制約は多いはずだろうに、彼らはなぜそんなことを結成以来ずっと続けているのか。その理由は恐らく、彼が楽器数を犠牲にしてまで、2人でやることで演奏の自由度を極限まで高め(意思疎通すべき相手がひとりしかいないので必然的にそうなる)、もっとフリーキーにロックンロールを転がしていくことを選んだからだろう。そしてその先には、未だ手つかずの大きな可能性が広がっているという確信があるからだろう。そんな、彼らが2人でバンドをやり続けることの「意味」や「必然」のようなものが、はっきりと浮き彫りになったライブだった。(前島耕)


[セットリスト]
■ HINTO
1. びいち
2. トキメキドライ
3. ぬきうちはなび
4. バブルなラブ
5. バースデーパーティー
6. バイトさん
7. かんけいないね
8. メガネがない

■ BLACK BORDERS
1. KEEP ON WALK
2. ブラックスタイル
3. ダンシングオールナイト
4. TEENAGE RIOT
5. スターフィッシュ
6. GO AWAY
7. GOVERNOR
8. DRUGS
9. ロックンロールナイト
10. IT'S ONLY R&R
11. High-Side

アンコール
1. R&R FOREVER
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