ホワイト・ライズ @ 渋谷duo Music Exchange

ホワイト・ライズ @ 渋谷duo Music Exchange - pics by Ryo Nakajima(SyncThings)pics by Ryo Nakajima(SyncThings)
ホワイト・ライズ @ 渋谷duo Music Exchange
圧巻のライヴだった。もともと年若なUKギター・バンドとしては珍しく骨太なライヴ・パフォーマンスに定評があるホワイト・ライズだけれど、2009年の初来日時の演奏とは比べ物にならない飛躍を遂げていたのではないか。ニューウェイヴ~ポスト・パンクの血統を受け継いだバンドは得てして雰囲気先行のアート・ロック・パフォーマンス(またの名をヘタウマ)になりがちなわけで、前回来日を原宿アストロホール時の彼らにも未だにかすかにその手の線の細さは残っていた。しかしそんななよなよして曖昧な部分は、今回の渋谷Duo Music Exchange公演では完全に払しょくされていたと言っていい。

デビュー・アルバム『TO LOSE MY LIFE』(2009)で全英1位を獲得、当時18~19歳かそこらでシーンのトップを極めたホワイト・ライズが、今年1月にリリースされた新作『RITUAL』を引っ提げて来日を果たしたのが今回のDuo公演である。震災の影響で延期となった4月の公演の振り替え公演だが、『RITUAL』のリリースから9カ月以上が経ち、各地でツアーを重ねた上で日本にやってきたのが結果的に今回のステージの迫力と説得力にも繋がっていたように思う。『RITUAL』というアルバムの壮大なスケールと複雑な構成を彼ら自身がきっちり血肉とするにはある程度の時間が必要だったはずで、この日のステージはまさにその血肉化の成果を披露する場となっていた。

ホワイト・ライズ @ 渋谷duo Music Exchange
セットリストは『TO LOSE MY LIFE』のナンバーと『RITUAL』のナンバーがほぼ半々のバランスで組まれていた。冒頭は“Farewell To The Fairground”、“Strangers”と新旧アルバムからとりわけ「ホワイト・ライズらしい」シンセ主導の華麗なニューウェイヴ・ナンバーが連打される。“Farewell~”などはユクセックの傑作リミックス・バージョンを彷彿させるビートの尖り具合が最高で、シンセの煌めくレイヤーにフックを与えていく。十代の彼らのナイーヴさがそのまま硬質な魅力に繋がっていた『TO LOSE MY LIFE』の楽曲が、あの蒼い緊縛フェティッシュなニューウェイヴがみるみるほぐれ、新たな色気を湛えていくのを感じる。続く“To Lose My Life”は最初のクライマックスだ。ぶっとくセクシーなベースと4つ打ちドラムスが絡まり合うダンサブルなアレンジに進化を遂げていて、サビでわざわざペースを減速させてオーディエンスの合唱を煽るという余裕の演出までかましてくる。

続く“Holy Ghost”は『RITUAL』の奥行きと立体感を象徴するナンバーで、ダーク・エレクトロの「ダーク」の種類を一曲の中で幾重にも提示していく。この日の彼らのパフォーマンス上で『TO LOSE MY LIFE』の楽曲が大らかに解放され、色気を増していったとすれば、『RITUAL』の楽曲はその複雑な構成の中にひしめいていた楽曲毎の個性がはっきりフォーカスされ、クローズアップされていく印象を持った。“Streetlight”はメロディラインがもろザ・スミスで、ホワイト・ライズのストーリーテリングの究極を記録したナンバーだと分かり、“Peace & Quiet”はアルバム制作時にナイン・インチ・ネイルズの『フラジャイル』を熱心に聴き込んでいたとハリーが言っていたのも納得な、インダストリアルと2010年代エレクトロニカが奇形な融合を果たしたナンバーだと分かる。このバンドが、こんなにも思い切りがよくクリアなタッチで、写実的に演奏するバンドに成長するとは思いもしなかった。本編ラストのその名も“Death”が、マーチング・ソングのように前に進もうとする気持ちを鼓舞するナンバーになり変っていたのもびっくりしたけど、それが『RITUAL』で「光を見つけた」と言っていた彼らの現在地なのは間違いない。

ホワイト・ライズ @ 渋谷duo Music Exchange
シャツのボタンを上まできっちりとめて髪は7:3、見るからに物憂げな未成年としてデビューし、ニューウェイヴ・リヴァイヴァルの最終ランナー的に2000年代の最後に滑り込んできたホワイト・ライズが、その十代ならではの内省と孤高の季節に別れを告げたパフォーマンス、それがこのDuo公演だったと言ってもいいかもしれない。アンコールでは“Unfinished Business”、“Bigger Than Us”という新旧のシンガロング・アンセムを披露、2年ぶりの彼らの来日は大団円を迎えた。(粉川しの)
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