ART-SCHOOL @ 新木場STUDIO COAST

ART-SCHOOL @ 新木場STUDIO COAST
ART-SCHOOL @ 新木場STUDIO COAST
ART-SCHOOL @ 新木場STUDIO COAST
9月末に、ベース宇野剛史とドラム鈴木浩之が年内いっぱいで脱退することを発表。その時同時にアナウンスされた、ワンマンとしての最後のステージ、つまり「脱退ライヴ」的な趣旨であるライヴがこれ。都内のライヴハウスではおそらく3番目に収容人数の多い新木場スタジオコースト(1番は東京ドームシティホール、2番はZepp Tokyoだと思います)がソールドアウト、それも2Fの立見席まで超満員。当然、2人の最後のライヴだからだけど、ただ、最後まで観て、何か、それだけじゃないものを感じた。

まず、セットリストは以下。

1.ガラスの墓標
2.BOY MEETS GIRL
3.水の中のナイフ
4.BLACK SUNSHINE
5.DIVA
6.OUTSIDER
7.欲望の翼
8.ウィノナ・ライダー・アンドロイド
9.左ききのキキ
10.羽根
11.乾いた花
12.サッドマシーン
13. LOST IN THE AIR
14.クロエ
15.アパシーズ・ラスト・ナイト
16.リリィ
17.僕が君だったら
18.フリージア
19.MISS WORLD
20.ロリータ・キルズ・ミー
21.あと10秒で
22.スカーレット
23.FADE TO BLACK

アンコール
24. SWAN DIVE
25.シャーロット
26.foolish
27.UNDER MY SKIN
28.ニーナの為に

アンコール2
29.斜陽

19時に始まって、終わって時計を見たら21:15。2時間15分で29曲。という、とにかくひたすら曲をやる、ゆるんだりたるんだりする時間がない、とてもタイトなライヴだった。選曲は、ご覧のように、これまでのART-SCHOOLを総括するようなもの。って、それはそうですが。こういうライヴで、過去のレアな曲をいっぱいやったり、新曲を連発したりするわけはないし。
要は、やめていく2人と、ファンのために行ったライヴなわけであって、正しくその趣旨に沿った内容だった。そして、その空気を、メンバーの4人も、客席のファンも、しっかりと共有していた。という、ステージの上も下も2Fの客席も含めて、今ここにいる全員の間に「ブレのない」2時間15分だった。
2人が去っていくのは、そりゃもちろん悲しいけど、でも、絶望して泣き叫ぶようなことはない。やめていく2人の事情も、残る側の2人の事情も、ファンだったら、なんとなくわかるので。という空気。だから、4人がすさまじい爆音を吐き出してぶっちぎれる瞬間も、ホールの中のムードはちょっとウェットで感傷的だったし、逆に、MCで戸高が1回、理樹が1回、ふたりが今日で最後であることを告げた時も、フロアいっぱいにあたたかい拍手は起こったけど、「ああもう悲しすぎて信じられないどうしよう」みたいな悲痛な空気には、ならなかった。理樹が途中で「ずっとライヴがしたかった」と言ったり、「閉じているバンドだと言われ続けてきたけど、人とつながりたいと思ってやってきていて、今日はつながった気がして、バンドやっててよかったなと思ってます」みたいなコメントをした時は、脱退のこととはまた違う理由でのセンチメンタリズムに、会場が包まれたりもしましたが。
あと、単純に、演奏そのもの、歌そのもの、パフォーマンスそのものがすばらしかった、というのもある。最後だからいいステージをやらなきゃ、っていう気合いによるものだったのか。いろいろあったけど、いったんこういう形で結論が出たことで、すっきりして、無心に演奏に向かうことができるマインドになれたからなのか。その両方だったんじゃないかな、と思います。

ただ、ひとつだけ、観ながら不思議に感じた、というか、ちょっと、ある種の違和感を持ったことがあった。「最後の」「ひと区切りの」「これでいったんおしまいの」ライヴなのに、どうもこう、何かが新しく始まっている感じがするのだ、観ていると。最初の何曲が、とか、アンコールのこのあたりが、とかじゃなくて、全体にそうだった。というか、最初はそれが「新しく何か始まってる感じ」だということがわからなくて、なんか違和感あるなあ、なんだろう、と考えながら観ていて、本編の2/3くらいまで終わったあたりで、「あ、そういうものだ、この感じ」と気づいた。会場にいたみなさんがそう感じたかどうかはわからないし、自分だけかもという気もするが、でもとりあえず、僕はそうだった。
理樹と戸高は2人でART-SCHOOLを続けていくことを表明しているし、実はもうその新しいART-SCHOOLの準備をしていて、それがそこはかとなくにじんでいて、だからそう感じられるのかな。とかも考えたが、でも今ステージに一緒にいるのは、宇野剛史と鈴木浩之なわけだし。というか、理樹&戸高だけじゃなく、そのやめていくふたりからも、その「何か新しく始まっている感じ」が出ている。つまり、今目の前にいる、このART-SCHOOLから出ている。もう終わるのに、このART-SCHOOLは。
単に、さっき書いたみたいに、「結論が出たからふっきれていきいきしてる」みたいなこともあるかもしれないが、それだけじゃないように感じた。大げさに言うと、「あれ? こういうバンドだったっけ?」とすら思った。これまでのおなじみの曲たちを、おなじみのメンバーがやっているのに。
なんでだろう。どういうことなんだろう。と考えながら後半を観て、アンコールの5曲を観て、ダブル・アンコールの“斜陽”まで観たけど、理由はわからないままだった。でも、わからなくてもいいや、とも思った。何か、観ているだけで、聴いているだけで、すごく気分のいいものだったので、その感じ。

理樹のMCによると、あと、帰りに出口で渡されたフライヤーによると、今日のこのライヴ、DVDになるそうです。3月7日リリース、『ART-SCHOOL LIVE at STUDIO COAST』、2枚組4,500円、このライヴの模様を完全収録、だそうです。ドキュメンタリー映像等も収録予定、タワーレコードで買うと特典で、同ライヴを収録したCDをもらえるそうです。

そして、現体制のART-SCHOOL、本当に最後のステージは、12月29日幕張メッセ、COUNTDOWN JAPAN 11/12、GALAXY STAGEのトリ、です。そういえば、ひなっち&大山純が脱退する時の最後のライヴも、COUNTDOWN JAPANのGALAXY STAGEでした。1回目、03/04の大晦日。演奏を終えたあと、ひなっち&大山純がふたりステージに残って、揃ってあいさつをして、笑顔でステージを下りて行ったのを憶えています。
その7年後、理樹とひなっちがCOUNTDOWN JAPANでまた同じステージに立つなんて、思いもしませんでした。昨年のkilling Boyね。なので、去年のその当日、思わずしみじみしましたが、もっとしみじみとつぶやいている人を、私のtwitterのTLで見つけました。当時のART-SCHOOLのマネージャーで、今は別の会社に移っていて、担当アーティストの仕事で、その日たまたま幕張メッセに来ていたKさんでした。そりゃあしみじみするわ。と、納得しました。(兵庫慎司)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする