ザ・クークス @ 赤坂BLITZ

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連日UK勢の素晴らしい来日公演が続き、UKロック・ファン冥利に尽きる2012年の新春だけれど、このザ・クークスといい、同じく今来日ツアー真っ最中のカサビアンといい、そして先日来日を果たしたハード・ファイといい、彼らに共通しているのは2000年代半ばにデビューし、アルバムを複数枚重ねながらUKトップ・バンドとしての威厳をキープし続けているということだ。UKバンドと言うとハイプでどっと押されるもセカンドでパタっと消える、その短命っぷりが揶揄されることも多々ある存在でもあるわけだが、彼らのような2000年代デビュー組の大健闘はこれからの来日を控えるヴァクシーンズ等2010年代のUK新世代勢にとっても大きな目標となっているはずだ。

というわけで、クークスである。彼らにとっては3年ぶりの来日公演であり、今回は新作『ジャンク・オブ・ザ・ハート』を引っ提げてのステージとなる。2008年にマックスが脱退した際には一度は解散も考えたという彼らだが、こうして無事に新作もリリースし、しかも新作は「新生クークス」を宣言するに相応しいモダンな一枚となった。今回の来日公演はそんな彼らの、「モダンな音楽を自由に作りたい」と語ったフロントマン=ルーク・プリチャードの言葉を証明するかのような内容になっていた。

ザ・クークス @ 赤坂BLITZ
今後の公演をまだ控えているのでセットリストを詳しく書くことは控えるが、セットリスト自体は『ジャンク・オブ・ザ・ハート』の曲に偏らない、オール・タイム&オール・キャリアな構成だったと言っていい。方向性をガラリと変えた新機軸としての「モダンで自由」ではなく、むしろ彼らのこれまでの歴史を「モダンで自由」な今の方法論で持って再定義する場こそが、今回のツアーだったのではないか。クークス本来の強みであるブリット王道のメロディとセンスの普遍性を追求したパフォーマンスで、彼らをずっとサポートし続けてきたファンにとっても、彼らと共に歩いてきた数年が正しかったことが証明された、感動的なステージとなっていた。

ちなみにこのクークスにとっての「ライヴ」とは、徐々にその意味を変遷させてきたものでもある。デビュー当初の彼らにとってのライヴとは、天才シンガー・ソングライターであるルークの独壇場で、バンドで演奏しても彼がアコギ一本で弾き語りしてもあまり楽曲の魅力に差が生まれないというある意味特殊なものだった。そして、そこから徐々にバンドの民主制と化学反応を手に入れていったのが、ファースト『インサイド・イン/インサイド・アウト』からセカンド『コンク』にかけての時期だった。そして今回のステージは、民主的なバンドのアンサンブルをより強化すると同時に、再びルークの突出した才能及びスター性にフォーカスを合わせるものになっていたと言える。クークスの楽曲のウェルメイドで「間違いのない」品質を、よりキャッチーなロックのダイナミズムを付加して伝える媒体として、ルークのスター性が存分に発揮されたステージだったのだ。

ザ・クークス @ 赤坂BLITZ
ザ・クークス @ 赤坂BLITZ
ステージにはモニターの前に一段高いお立ち台的な段が作られていて、そこがルークの独壇場となる。時にハンドマイクで、時にワイヤレスギターを抱えながら、ルークはそのお立ち台を上手から下手へとがんがん走りまわり、オーディエンスを煽っていく。彼のトレードマークでもあるピタピタのスキニーデニムを履いた足をエルヴィスのようにつま先立ちにさせて歌うその姿は、優等生的なクークスのイメージを裏切っていくロック・スターのそれだ。前半の数曲、“Sofa Song”のようなファーストの名曲も含む前半戦は、そんな彼らのパンキッシュなモードが爆発した内容になっていて、満員のオーディエンスも一気にヒートアップしていく。

新曲“Rosie”以降の数曲は繊細なアコースティックの音色のレイヤーで聞かせる流麗なナンバーが続き、そこから一転、後半は白熱のブルースが炸裂するハードなセクションへとなだれ込んでいく。かと思えば最終コーナーでは再びオーセンティックなブリット・ロックに立ち返り、場内をシンガロングの渦に巻き込んでいく。パンク、ポップ、アコースティック、ブルース、そしてブリットと、バンド・アンサンブルの構造と出力強弱を自在に変えつつも、いや、そういう外側が自在に変わるからこそ、それでも全くブレないクークスの「歌」の力に圧倒される。ちなみにステージ上でルークは普通に酒を飲んでいて、超上機嫌で時々あまり面白くないジョークをかましつつガンガン勢いよく曲を演奏していく。その坊ちゃん然とした佇まいから秀才的良い子ちゃんと誤解されがちなルークだけど、実際の彼は理屈より本能、考えるより感じろを地で行く天然素材の天才である。“Shine On”などはベースの音が出なくなってエンジニアが調整しているのを無視してどんどん勝手に歌い始めてしまう様にちょっと笑ってしまった。

ザ・クークス @ 赤坂BLITZ
本編最後は『コンク』からの鉄板ロックンロール・ナンバー。今までに何度もライヴで披露してきた曲だけれど、今回は未だかつてない音圧とドラマツルギーで圧勝の最新ヴァージョン!そしてアンコールでは彼らの最新&古典アンセムがきっちりと連打される大満足のフィナーレとなった。とにかく、ファンがクークスのライヴで聴きたい曲はほぼすべてやってくれて、しかもそれらすべてが過去最高のヴァージョンになっているのが今回のツアーだ。

前夜のカサビアンもそうだったけど、本当にファン冥利に尽きるショウであることは保証します!これからの公演もお見逃しなく!(粉川しの)
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