というわけで、クークスである。彼らにとっては3年ぶりの来日公演であり、今回は新作『ジャンク・オブ・ザ・ハート』を引っ提げてのステージとなる。2008年にマックスが脱退した際には一度は解散も考えたという彼らだが、こうして無事に新作もリリースし、しかも新作は「新生クークス」を宣言するに相応しいモダンな一枚となった。今回の来日公演はそんな彼らの、「モダンな音楽を自由に作りたい」と語ったフロントマン=ルーク・プリチャードの言葉を証明するかのような内容になっていた。
ちなみにこのクークスにとっての「ライヴ」とは、徐々にその意味を変遷させてきたものでもある。デビュー当初の彼らにとってのライヴとは、天才シンガー・ソングライターであるルークの独壇場で、バンドで演奏しても彼がアコギ一本で弾き語りしてもあまり楽曲の魅力に差が生まれないというある意味特殊なものだった。そして、そこから徐々にバンドの民主制と化学反応を手に入れていったのが、ファースト『インサイド・イン/インサイド・アウト』からセカンド『コンク』にかけての時期だった。そして今回のステージは、民主的なバンドのアンサンブルをより強化すると同時に、再びルークの突出した才能及びスター性にフォーカスを合わせるものになっていたと言える。クークスの楽曲のウェルメイドで「間違いのない」品質を、よりキャッチーなロックのダイナミズムを付加して伝える媒体として、ルークのスター性が存分に発揮されたステージだったのだ。
新曲“Rosie”以降の数曲は繊細なアコースティックの音色のレイヤーで聞かせる流麗なナンバーが続き、そこから一転、後半は白熱のブルースが炸裂するハードなセクションへとなだれ込んでいく。かと思えば最終コーナーでは再びオーセンティックなブリット・ロックに立ち返り、場内をシンガロングの渦に巻き込んでいく。パンク、ポップ、アコースティック、ブルース、そしてブリットと、バンド・アンサンブルの構造と出力強弱を自在に変えつつも、いや、そういう外側が自在に変わるからこそ、それでも全くブレないクークスの「歌」の力に圧倒される。ちなみにステージ上でルークは普通に酒を飲んでいて、超上機嫌で時々あまり面白くないジョークをかましつつガンガン勢いよく曲を演奏していく。その坊ちゃん然とした佇まいから秀才的良い子ちゃんと誤解されがちなルークだけど、実際の彼は理屈より本能、考えるより感じろを地で行く天然素材の天才である。“Shine On”などはベースの音が出なくなってエンジニアが調整しているのを無視してどんどん勝手に歌い始めてしまう様にちょっと笑ってしまった。
前夜のカサビアンもそうだったけど、本当にファン冥利に尽きるショウであることは保証します!これからの公演もお見逃しなく!(粉川しの)