そんな2004年の単独来日以降、インキュバスは『ライト・グレネイズ』(2006)、そして最新作『イフ・ノット・ナウ、ホエン?』(2011)と2枚のオリジナル・アルバムをリリースしてきたが、その間には活動休止時期もあり、実際『ライト・グレネイズ』と『イフ・ノット・ナウ、ホエン?』の間には実に5年に及ぶインターバルが存在する。ゆえに7年半ぶりだった昨年のフジ来日、そして8年ぶりとなった今回の単独来日もある意味で必然的期間だったとも言える。そしてこの8年の間にバンドの紆余曲折を経て、何度も大きな転換点を迎えたインキュバスの今回の単独来日がいかに待望されたものなのかも、ご理解いただけると思う。
東京はこの日の新木場スタジオコースト一夜限りということもあり、場内は見事にフルハウス。客層も90年代以降のオルタナは百戦錬磨です的な三十代から、日本のミクスチャー・ロック&パンク・バンドから遡ってインキュバスに辿りつきました的な十代のオーディエンスまで実に幅広い。なにしろインキュバスは今年でバンド結成から21年、デビューから17年が経つ正真正銘の大御所バンドでもある。いつまでも老けないブランドン(Vo)のイメージもあってどこかフレッシュさを醸し出し続けている彼らだが、同世代のヘヴィ・ロック&ミクスチャー・バンド達の殆ど既に解散していることを思えば、彼らの息の長いキャリアは異例中の異例でもあるのだ。
ステージ上のブランドン(Vo)は相変わらず笑っちゃうほどの美形で、傍らのマイキー(G)も相変わらず気弱なマッド・サイエンティストみたいなナイス・キャラ。この2人の、天然素材のカリスマ・フロントマンをナードな天才が裏側から支えるというインキュバスの構造は8年前から全く変わっていない。もともとインキュバスはそんなブランドンとマイキーのキャラクターにも象徴されるように、ミクスチャー&ヘヴィ・ロック系バンドの典型的マチズモ精神とは無縁のしなやかでフェミニンなバンドでもある。そう、インキュバスはもともとヘヴィ村の異端児であったわけで、ゆえにミクスチャー、ヘヴィ・ロックといった単語で括られてきたかつてのインキュバスのイメージを遥かに超えたところで像を成す今夜の彼らの最新モードは、実はインキュバスの原風景でもあるのだ。そして、そんな彼らの最新モードと原風景に共通するのはスピリチュアルであること、そしてオーガニックであることだ。
そして“Switchblade”から始まる後半戦は、インキュバスの表向きの顔=ファンク、ミクスチャー、そしてヘヴィ・ロックの雄としての彼らが一気にバーストしていく往年のファン得極まりない展開。いつの間にか上半身裸になっているブランドンもパーカッションに参加し、今度はインキュバスのオーガニックな側面がこれらのファンキーなナンバーの中で120%生かされていく。“Nice To Know You”は懐かしの名曲すぎて涙出そうになったが、このスーパー・ヘヴィなナンバーに対する懐かしさとは90年代と00年代をサヴァイヴ仕切った彼らに対する感慨とイコールである。“Drive”で巻き起こったシンガロングも感涙!こちらもまた感涙しつつ、この曲の打ち込みが当時すごく斬新に聞こえたことをしみじみ思い出さずにはいられなかった。