BUMP OF CHICKEN @ Zepp Tokyo

「みんな久しぶり! 4人を代表して言わせてください……本当に会いたかったです! 今日は来てくれて本当にありがとう!」というチャマこと直井由文の序盤MCに、超満員のZepp Tokyo中から熱く沸き上がる大歓声! 開演と同時に沸点を超えていた会場の熱気は、「チケット取れなかった人がたくさんいるみたいなんで、今日はここだけじゃなく、外にも向けて音楽やるんで、みんなも力を貸してください! 最高のライブを作りましょう!」というチャマの言葉でさらに高まっていく……昨年12月のSHIBUYA-AX公演を皮切りにライブハウス・ツアー『GOOD GLIDER TOUR』で全国をサーキットしてきたBUMP OF CHICKEN。最新アルバム=『COSMONAUT』を発表してから約1年越し、本格的なツアーとしては実に3年半ぶりとなる今回のツアー。この時代に誰よりもライブを待たれていたバンド=バンプが全国のライブハウスでファンの魂と触れ合っていくことで、彼らの歌は/ロックは、僕らの「今」にギアを合わせながらより強靭な力を発揮していく――この『GOOD GLIDER TOUR』の道程は、まさにそんな彼らの足跡そのものだった。ということが、ライブハウス・ツアー最終日となるこの日のZepp Tokyoのステージからリアルに伝わってきた。

荘厳なオーケストラ・アレンジの“グッドラック”SEとともに場内がゆっくりと暗転。升秀夫が、増川弘明が、チャマが、そして藤原基央がステージに姿を現すたびに、この時を待ちわびたオーディエンスの割れんばかりの歓声はひときわ強く熱を帯びて――ツアー各公演の幕開けを力強く飾ってきた“三ツ星カルテット”のビートとともに高らかなクラップが鳴り響き、“宇宙飛行士への手紙”で壮大な世界を描く藤原&増川のギター・アンサンブルに乗って、チャマが弾むように飛び跳ねながらフロア丸ごとジャンプへと誘っていく。この日のアクトはもちろん、アルバム『COSMONAUT』収録曲と“ゼロ”“Smile”などアルバム後の楽曲を軸に据えながらも、過去シングル曲に加え“ギルド”まで披露する、まさに自分たちの持てるすべてを、1本のライブの中でみんなで共有し合おうという意志そのものの内容だった。フロアの熱気と気迫のあまり具合が悪くなった観客がスタッフに助け出されるたびに「大丈夫? みんな協力してあげてくださいね。歌ってもいいかな?」と気配りを忘れない藤原の言葉も、「誰1人排除することなく、全力で音楽の幸せを分かち合う」という理想に裏打ちされたものだ。そして何より、格段に増した4人のバンド・サウンドの一体感と迫力! 時にポスト・ロック的な複雑なリズム・パターンにぐいぐいと推進力を与えていく升といい、アグレッシブなギター・ソロで楽曲を彩る増川のプレイといい、凛としたギター・サウンドのボトムを軽やかに支えるチャマといい、スケール大きなアンサンブルも秘めやかでパーソナルな響きも、しなやかな「バンドの表現」として体現していく4人の姿は頼もしいばかりだった。

「みんな、3年半ぶりだね! 何やってた? BUMP OF CHICKENは3年半ずっとレコーディングしてました!」とチャマ。「藤原くんが曲を書く。で、僕と秀ちゃん(升)とヒロ(増川)がそれを聴いて『いい曲だねえ』って言う!(笑)。スタジオに行く。レコーディングする。CDになる。からの……みんなに届く! レコーディングもライブみたいな感覚なのね。で、この間(シングルの)『グッドラック』が出ました!」と語るところに、フロアからすかさず「1位おめでとう!」の声がかかる。「すごいことですよ、千葉県の田舎の、印旛沼のほとりで音楽始めて、それが1位になるんだから」……からっとフレンドリーなMCで、「ライブ・シーンでのバンプの3年半の(実質的)不在期間」も「90年代のバンド結成当時から今に至るまでの時間」も一気にワープするかのように、バンドのコアな衝動とフロアの1人1人のハートを直結してみせるチャマ。そして……最新シングル曲であり、この日のステージにひときわ真摯なヴァイブを吹き込んでみせていたのが、その後に演奏した“グッドラック”だった。誰よりも深く辛辣なブルースを、誰よりも高い輝度と純度でもって鳴らしながら、90年代末以降のロック・シーンを貫く凛とした座標軸を打ち立ててきたバンプ。映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』の主題歌として書き下ろしたこの楽曲越しに「今」の生きとし生ける者すべてへの賛歌と祈りを凝縮してみせた藤原。無常感寸前のシビアな現実認識とブルース感を、極限まで研ぎ澄まされたメロディとともに時代に撃ち放つことで、僕らの凱歌としてのエモーションとドライブ感を与えていく……その究極形としてのバンプの在り方が、“グッドラック”のタイトなビートとシリアスなメロディを通して、この場に集まった者すべての胸を震わせていく。最高の瞬間だ。

「暑い? 寒い冬に『暑い』なんて、ここぐらいしかないぞ!」という藤原の言葉に合わせるように、湯気が立ちそうなほどヒートアップしているフロアへドリンクの水を撒いてあげるチャマと増川。「(ツアーが)終わっちゃうのが寂しいっす! でも、だからこその感動をもらってます」と話す増川に続いて「最終日も、もう半分終わったんだけど……」と藤原。当然「えーっ!」と会場狭しと巻き起こる声を、「ここまで半分あっという間だったんですよ。ここから半分もあっという間なんですよ。それは、俺たちはベスト・パートナーだからなんですよ。君らが相手だから、ここまであっという間なんですよ。そのために、僕らも1曲1曲大事に歌うよ。みんなも大事に聴いてね!」という藤原の言葉が、ライブ後半への最強のエネルギーへと変えてみせる。そこに鳴り響く“R.I.P.”のダイナミックなサウンド! 何度も「ありがとう」と「ツアー終わっちゃうなあ」を繰り返し、幸福感と寂寞感を噛み締めながら1曲1曲歌い上げていく藤原の姿は、人生の「終わり」へと向かいながら他ならぬその人生の一瞬一瞬を渾身の力で輝かせようとするバンプの姿勢そのもののように思えて、思わず胸が熱くなった。“supernova”で沸き起こる一面のシンガロングとハンドウェーブも、“天体観測”でZepp丸ごと揺さぶってみせたオーディエンスの大ジャンプも、すべてがクライマックスのような決定的瞬間を脳裏と心に刻んでいった。

2時間の本編が終わり、ステージからメンバーが去った後、フロアから熱気とともに力強く立ち昇る“supernova”の大合唱! そんな歌声に導かれるように再度4人がオン・ステージ。「みんな、アンコールありがとう! お願いがあるんですけど……古溪さんいますか?」とカメラマン・古溪一道氏を舞台に呼び込んで、バンド&観客一体の記念撮影もバッチリ決めた後、名残惜しそうにフロアを見渡すチャマ。「今日でライブハウス・ツアー終了します! 全国のみんな、ありがとう! チケットを取って来ようとしてくれた人、ありがとう!」と、そのままスタッフ、家族、友人、メンバーにストレートな感謝の想いを伝えていく。「そして……僕らとみんなをつないでくれた音楽、ありがとう!」。熱い拍手喝采が広がる。ドラム・セットの椅子に立ち上がって「ありがとーう!」と生声で叫び上げる升も「泣いちゃうかもしんない! でも我慢する!」と感激を露にする。そして、「君らと会えて、本当によかったです! どうもありがとう! みんないい顔してる! 今日だけじゃなくて、明日もあさっても、死ぬまでずっとそんないい顔してりゃいいんだよ。モテモテだよ?」という藤原のMCが、高揚感とともにしみじみ身体に染み渡ってくる。

アンコールの“ガラスのブルース”でありったけのエネルギー完全燃焼して大団円……と思いきや、「もう1曲?」的な藤原の合図から正真正銘ラスト・ナンバー“DANNY”へ! イントロの「東京また会おう!」の声から、ステージもオーディエンスも一緒に爆走ビートに身を委ねていく――最高に晴れやかなグランド・フィナーレだった。曲が終わっても、4人はなおも別れを惜しむように、ステージ・ドリンクにスティックにピックにタオルにと片っ端からお客さんに投げ渡している。「僕らまた、次のツアーが始まります」……アンコールの後、増川/チャマ/升が去ったステージで、最後にフロアへ呼びかける藤原。ライブハウス・ツアー『GOOD GLIDER TOUR』を大成功のうちに終えた4人は、4月からはいよいよアリーナ・ツアー『GOLD GLIDER TOUR』へと突入する。「次またいつ会えるかわからないけど、また会おうね。それまで、時々僕らの音楽を聴いてください。僕は、今日のことを忘れません!」……4月7日・8日:幕張メッセ9・10・11ホール2デイズ公演を皮切りに、東京・代々木第一体育館4デイズ(!)などを経て7月14日・宮城 セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)まで続く全20公演の『GOLD GLIDER TOUR』。今回のライブハウス・ツアーの充実感と多幸感を胸に、彼らはまた、どこまでも情熱的で荘厳な音の光景を見せてくれることだろう。今はただ、その日々を心の底から楽しみに待っている。(高橋智樹)
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