『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara

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4月7日にスタートした、キューンミュージックの20周年と社名変更を記念したリキッドルーム20本ライヴ・イベント・シリーズの12本目、LAMAとCharaの対バン。LAMAは、ナカコーとフルカワミキがSUPERCAR時代の途中からキューンに在籍(それまでは同じソニーグループのdohb discでした)、そしてCharaはキューンに移籍したばかりで今のところリリース作品はまだなし、という2組です。あ、フルカワミキはソロ・デビュー時は別のレーベルだったけど、LAMAでまたキューンに戻った、ということになるのか。

『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara
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『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara
先攻はLAMA。このシリーズ・イベントのオープニング映像(キューンの所属アーティストたちが20周年に関するコメントをするさまをザッピングみたいにつないだもの)の後、ステージの幕が開く。左から田渕ひさ子、ナカコー、牛尾憲輔(agraph)、フルカワミキという、ステージ上の並びを観た段階でもうキャラが出ているというか、独特の空気感があるというか、これ自体が既に「LAMAとは何か」という表現になっている気がします。
「上物がギターだけじゃないシューゲイザー」といった趣の“Warning”、ダンサブルな4つ打ちの“Night Telephathy”、アッパー感と浮遊感が入り交じる“Rockin’ Your Eyes”、と、まず、1stアルバム『New!』の1曲目から3曲目までそのままプレイ。1曲ごとに、この場の「LAMAの空気」のようなものが濃くなっていき、3曲目が終わった時には完全にそれ一色になる。なんだ「LAMAの空気」って。と書いていて自分でも思うが、なんというか、1曲ずつ「聴かせる」とか「見せる」というよりも、観ている人に「体験させる」というか「体感させる」というか、そういうライヴである感じがする、LAMAって。

その3曲目が終わったところで、フルカワミキ、「LAMAです」とあいさつ。で、意外なことに、「一応、やったことないんで、自己紹介してみますか」と、ひとりずつメンバーを紹介。牛尾憲輔がおどけてみせたりしたのはいいとしても、ナカコーまでしゃべったのが、ちょっとびっくりでした。ひとこと「考えてなかった」とかなんとか言っただけですが。でも、ライヴにおいて、歌以外でナカコーの声がマイクにのったの、いつ以来だっけ。SUPEACAR時代までさかのぼっても、そうそうないのでは、という気がしました。

そこから“Cupid”“Spell”と続けて、次は新曲“White Out”。キューピーハーフのCMで流れているあれです。もうオンエア始まってからかなり経ちますが、リリースしないのかな、これ。とか思いながら観ているうちに、“one day”“Blind Mind”“Fantasy”と、さらに、どんどん、「LAMAの空気」が濃密になっていく。シメはアルバムのラスト・チューン“Dreamin”、曲が終わり、フィードバック・ノイズが渦巻く中、4人はステージを下りた。

『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara
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そして後攻、Chara。これもまた、ステージ幕が開き、バンドのフォーメーションを見た段階で、ちょっとアガる。後列は、左からドラム白根賢一、キーボード山崎“Keyco”透、コーラス加藤哉子、ドラムmabanuaというツイン・ドラム体制。で、前列は、左からベースCurly Giraffe、ギターCozy(車谷浩司! そう、ちょっと前から参加してるんですよね)。
オープニング、長い長いキーボード・イントロの途中でCharaが登場、Curly GiraffeとCozyの間に横を向いて立ち 、1曲目“Tiny Tiny Tiny”を歌い始める。という始まり方でまずガツーンとつかみ、歌い終わって2曲目“Junior Sweet”に行く前に、ひとこと「ちょっとドキドキしてるの、なんで?」。ここでもう完全にやられました、全員。

2曲終わったところでMC。が、ちょっとしゃべって「息切れしてるから」とMCをCurly Giraffeに託す。と、Curly Giraffeさん、「キューン・ソニー20周年おめでとうございます。実は僕、社長と大学の同級生なんです」。「へえーっ!」と客席。で「あああっ、そうだった!」と私。昔、きいたことがあるのです、本人から。本人って、社長じゃなくてCurly Giraffe=高桑圭さんのほうね。取材かなんかの時の雑談できいたのでした、当時。当時っていつ。っていうか、そうだ、彼とドラム白根賢一のデビュー、キューンじゃん! ロッテンハッツじゃん! そのデビューの取材の時にその話きいたんじゃん、俺! だから「キューン・ソニーなんて昔の社名で言ってんじゃん! と、一気に色々思い出していると、本人が「僕とドラムの賢一のデビューはキューンなんですよ。20年前に」とMC。Chara、「ロッテンハッツでね」と補足。あとCharaさん、同級生話の時も「日芸でね」と補足し、「学校名まで言わなくていいじゃないですか」と抗議されてました。
されてましたが私、もういろいろ思い出しまくってがまんできないので書きます。ご存知の方も多いでしょうが、Curly Giraffeと白根賢一はGREAT3であり(あとひとりは現在プロデューサーとして大活躍中の片寄明人ですね)、それとは別に真城めぐみ・木暮晋也・中森泰弘のHICKSVILLEというバンドがありますが、ロッテンハッツという6人編成のバンドが解散して、その2つに分かれたのでした。で、ロッテンハッツ、キューンからデビューして、アルバム2枚出しているのでした。もっと言うと、そもそもデビューの話がきた段階ではまだキューンじゃなくてトレフォートだったんだけど、デビューする頃にはキューンになっていたのでした。って書くとトレフォートってなんじゃいという説明も必要になるか。えーと、キューンというレコード会社は、20年前に、トレフォート、フィッツビート、スタッフルームサード、あとEPIC内のLIFESIZE、という、ソニー内のレーベルたちが集まる形で誕生したのでした。フィッツビートには聖飢魔IIやレベッカ(当時もう活動してなかったけど)が、スタッフルームサードにはXがいました(これもキューン誕生当時にはもういなかった気がしますが)。電気はトレフォート、真心はLIFESIZEです。で、社長は、トレフォートのスタッフでした。Curly Giraffeさんが、ステージで主にウッドベースを弾いていた頃の話です。

Charaのライヴレポでいったい何を書いているのか俺は。と思うが、話がそれついでにもうひとつ書いておくと、さらにそこから後の時代、GREAT3でふたりがガンガンのしてた頃に、SPIRAL LIFE→AIRで同じくガンガンのしてたのがギターのCozyだったわけで、その2組が2012年の今、同じバンドで演奏している、しかもそれがCharaのステージである、というのは、当時を知るものとしてはかなりくるものがあるというか、まさか将来こんなことになるとは想像だにしなかったというか、なんというか、とても不思議な体験です。いやあ、こんなこと、あるんだなあ。と、なんかうれしかった。

『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara
『キューン20イヤーズ&デイズ』LAMA/Chara
Charaのライヴの話に戻ります。ざっくり言うと、全体に、ラフな感じのステージだった。MCのたびに「息切れしてる」と言ってみたり、「ツアーじゃないから、(ライヴの構成や曲順が)身体に入ってないの」と何度も口にしたり、客席と普通に会話したり、その口調がステージの上の人と下の人のそれではなく普通の友達同士みたいだったり、挙句、もう曲が始まってるのにまだしゃべっていたり。
という、「オンステージである」「客前である」という感じがゼロなノリ。って、別に今日に限ったことじゃなく、Charaのライヴってそういうもんじゃん。うん。そういうもんなんですが、本来ならライヴをやっている時期じゃないせいか(MCによるとアルバム制作中だそうです)、特にその、「ステージの上も下もなさ」が際立ったライヴだったきがした。ただ、Charaなんだから、歌い始めると、そのヴォーカルの、切実さとか切なさとか切迫感とかの、いわば「切」の字方面のパワーはもうとんでもないわけで、オーディエンスは一緒に心臓バクバクしながらそれに飲み込まれていくしかなくなるわけですが、おもしろいなあといつも思うのは、「MCとかの時はそんなふうにラフでグダッとしてるのに、いざ歌い始めるとスイッチが入って別人のように」という感じでは、ないこと。「ラフでグダッ」としているCharaとおんなじ人なのに、それと地続きなのに、歌は、そんなふうにはてしなく切実で怒涛のごとく崇高なものであること。というのが、不思議だなあといつも思う。思うがそれ、何か、聴く人に希望を与える事実だ、とも思う。
あと、Charaのこういう、お客さんに友達みたいに接する態度って、「お客さんみんな」と向き合っている感じじゃなくて、「Chara対お客さんひとりひとりずつ」という空気なのも、とてもいいなあと思う。

3曲目“しましまのバンビ”で、シンガロングが起きたり。「カップルで来てる人いる? チューとかしちゃえばいいじゃん。でも、幸せってうつるからさ。うつしてよ」と言ったり。ひとりでステージをウロウロしながら「エアデートなのよ。ひとりでデートなの」とつぶやいたり。“あたしなんで抱きしめたいんだろう”で「女の子のウィスパー好きなの」と女の子に歌わせ、続けて「ひとりで来てる男の子、いる?」と男にも歌わせたり。ほんと、この人、言っていることもやっていることも歌っていることも、20年前からまったくぶれない。愛がすべてとか、愛が大事とか、すべては愛とか、好きとか好かれるとか、言葉にするとそんなふうに手垢にまみれまくったことになってしまうけど、でも、それを本当にリアルに、肌がピリピリするくらいリアルな表現として伝えるという意味において、この人以上の人、観たことがない。
7曲目、「新曲をやって、って言われてるんで」と、6月6日に出るというニュー・シングル“オルタナ・ガールフレンド”を披露。タイトルまんまの、びっくりするほどラウドな、移籍一発目のリリースとしては全然順当じゃない感じが「あ、こうくるんだ?」とうれしくなるような曲でした。リリース、お楽しみに。あと、これとはまた別の新曲が、ソニーブラビアのCMでそろそろ流れ始める、ということも告知。そして、「チャコちゃん!」とLAMAの田渕ひさ子を呼び、彼女のアコギとCharaのふたりだけで「昨日作った」という新曲を歌いました。
ここからはまたバンドで、“Swallowtail Butterfly~あいのうた~”と“月と甘い涙”のキラーチューン2連発でライヴ終了。続くアンコールは、“やさしい気持ち”で、感動的にシメられました。

途中のMCによると、Chara、アルバムの制作中で、「すごいいっぱいいい曲できました」だそうです。楽しみです。(兵庫慎司)


セットリスト

LAMA
1.Warning
2.Night Telepathy
3.Rockin’ Your Eyes
4.Cupid
5.Spell
6.White Out
7.one day
8.Blind Mind
9.Fantasy
10.Dreamin

Chara
1.Tiny Tiny Tiny
2.Junior Sweet
3.しましまのバンビ
4.ゆらしたがる
5.あたしなんで抱きしめたいんだろう
6.breaking hearts
7.オルタナ・ガールフレンド(新曲)
8.新曲(w/田渕ひさ子)
9.才能の杖
10.月と甘い涙

アンコール
11.やさしい気持ち
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