ORANGE RANGE @ 渋谷公会堂

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ORANGE RANGE @ 渋谷公会堂
『ORANGE RANGE LIVE TOUR 012~NEO POP STANDARD~』東京公演2日目。ツアーはまだ続くので、セットリストの詳細や演出については触れないでおこう。今年の2月で彼らは 10周年。記念すべき節目だが、「10周年!」を全面的には押し出した内容ではなかった。絶妙なポイントにお馴染みの曲を織り込みつつ、4月にリリースされた最新アルバム『NEO POP STANDARD』の世界観を表現することに力点を置いたライヴという印象だ。

『NEO POP STANDARD』は、全篇がほぼ打ち込み。ライヴの雰囲気もこれまでと全く異なるものになると予想していたのだが、そんなことはなかった。NAOTO(G)、YOH(B)、サポートドラマーが奏でるフレーズが同期サウンドとごく自然に融け合い、ダイナミックなアンサンブルが場内いっぱいに広がる様は、生々しい息吹にとことん溢れていた。早くも必殺のパーティーチューンと化していた“Hello Sunshine Hello Future”。緊張感溢れる音像が渦巻いた “Warning!!”。深海に潜っていくかのような幻想的なムードを醸し出した“Deep Blue Sea Flower”。RYO(Vox)、HIROKI(Vox)、YAMATO(Vox)がスタンドマイクに向き合い一心に歌い上げる姿に息を呑んだ “Soul to Soul”……などなど。『NEO POP STANDARD』に収録されているあらゆる曲が、ライヴの現場でも絶好の威力を発揮していた。しかし、ツアーが始まる前は、メンバー自身も最新アルバムの曲たちをどのように表現すればいいのか迷っていたようだ。「みなさん、素晴らしいですね。盛り上がる曲はテンションを上げて、バラードはじっくり聴く。歌ってて気持ちいいです。打ち込みのアルバムを生で演奏するのは挑戦。不安もあったけど、みなさんの姿を見ると、間違いじゃなかったんだと自信になります」、中盤のMCでHIROKIがとても嬉しそうに語っていた。「10年は通過点、まだ旅の途中。もっと大きくなるためにも、みんなを引き込んで、いい旅をしたいです。これからもよろしく!」というRYOの言葉もあったが、これもまさしく今回のツアーで得た自信が言わせたのだろう。

彼らのいたずらっ子のような悪ふざけは、相変わらずであった。「ハッピーな空間を作って行きましょう!」とYAMATOにしてはまともな一言が飛び出すと、「今日は珍しく下ネタがなかったね」と不満そうな顔をしたHIROKI。するとYAMATOは「ちんちん! ちんちん! ちんちん!」と、まるで何かに取り憑つかれた幼稚園児のようなテンションで連呼し始めた。下ネタの達人としてのポジションを必死で取り戻そうとするかのような彼の姿に、観客は大爆笑。その他、最近スタートしたらしい物真似コーナーもバカ受けだった。RYOがHIROKIやYAMATOの無茶ぶりに応えて物真似をするのだが、この日のライヴでやらされたのはデヴィ夫人(前日は卓球選手の福原愛だったらしい)。何の下準備もしていないので中途半端な物真似で対処し、思いっきり滑らされたRYO。このコーナーは日替わりメニューで恒例化するつもりらしいので、今後、彼らのライヴを観に行く人は、RYOが誰の物真似をやらされるのか、期待していよう。
ORANGE RANGE @ 渋谷公会堂
「次の曲、きっと盛り上がらないよ。盛り上がっているフリ出来ます?」というHIROKIのトボけた言葉を添えていきなり新曲が披露されたり、アンコールでは代表曲が連発されて凄まじい盛り上がりとなったり、お楽しみポイントも満載のライヴであった。ラストの曲を演奏し終え、メンバーたちは笑顔を輝かせながらステージを後にしていったが、YAMATOだけが残った。その時の彼のMCがとても良かったので紹介しておこう。「今年で10年です。音楽はいろいろなジャンルがあるけれど、ORANGE RANGEはそれに囚われずに自由にさせてもらってきました。それなのにみなさんはずっとついてきてくれる。それが僕らを支えてくれるんです。感謝の気持ちでいっぱいです。僕らは音楽で表現して、それがみなさんの何かのきっかけになればいいなと思っているんです。“ORANGE RANGE見て、うんこ漏れたよ”でもいいんです。これからも挑戦するからよろしくね」。彼の言う通り、ORANGE RANGEは、驚異的なフットワークであらゆるジャンルの壁を飛び越えながら歩んできたバンドだ。美しいバラードを大ヒットさせたと思ったら、悪ふざけ満載の曲をリリースしてイメージを完全に覆したり、ヘヴィなロックサウンドで男前な魅力を放った直後に、とてもエッチなムードのサマーチューンを生み出したり……足跡を振り返ると、多彩な作風がズラリと並ぶ。しかし、彼らは“ワクワクさせてくれる!”ということに関しては常に一貫していた。だからこそファンのハートをしっかり掴み続けているのだと思う。そんな彼らの魅力を再確認したライヴであった。(田中大)
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