GREAT3 (in 『Great Hunting Night vol.33』) @ 渋谷o-nest

GREAT3 (in 『Great Hunting Night vol.33』) @ 渋谷o-nest - pic by 小林朋寛pic by 小林朋寛
 「今日ここに集まってくれてありがとう」と、「この日」を長いこと待ち望んだファンに語りかける白根賢一。「みんな、楽しんでる?……よかった! やってよかった!」と熱気あふれる渋谷o-nestのフロアを見渡しながら笑顔を見せた片寄明人。オリジナル・ベーシスト=高桑圭の姿こそないものの、あの、どこまでも濃密でディープで、タイトなのにメロウで、触れるだけでめくるめく音の白昼夢に導かれるようなGREAT3サウンドが、間違いなくこの目の前で鳴っている。

 2004年2月のライブを最後に活動を休止していた、90年代~00年代日本ポップ・ミュージック屈指の音楽職人集団=GREAT3。そのオフィシャル・サイトに《GREAT3でしか出来ない表現が自分にはある。それを追い求めながら僕は死んでいきたい。これが終わりの始まりだとしても》(片寄)、《また荒れ狂った海に出ます。なにとぞよしなに》(白根)というメッセージが発表されたのは5月末のことだった。そして、実に8年半ぶりの活動再開ライブ=8月1日のまさにその当日、配信限定シングル『Emotion/レイディ』(オリジナル音源としては2003年のアルバム『climax』以来!)がリリースされ、高桑に代わる新ベーシストとして22歳のjan(ヤン。かつてGREAT3の写真も撮影したカメラマンにしてシンガーソングライター/アーティストの佐藤奈々子氏の息子)の加入も発表され、復活劇への期待感がいやが上にも増していた。しかし、片寄/白根/jan、そしてGREAT3の初期プロデューサーでもあるサポート・ギタリスト=長田進の4人によるアクトは、そんなフロアの期待値を遥かに超えるステージを見せてくれた。以下、この日のセットリスト。

01.DISCOMAN
02.Sampedoro Gold
03.Last Song
04.Under the Dog
05.エデン特急
06.Soul Grow

 6曲? そう。この日はスーパーバタードッグやナンバーガールなどを輩出してきたEMIミュージック・ジャパンの新人発掘&育成セクション「Great Hunting」主催イベント『Great Hunting Night』への出演。しかもトリではなく、出演順としてはGOOD BYE APRIL/dry as dust/GREAT3/cinema staff、と全4バンド中3番目のアクトで、1アクトの持ち時間=30分を念頭に置いて組まれたセットリストだからだ。しかし、だからこそこの日のGREAT3のステージには、片寄/白根の活動再開への想いと、9年前からこの日を待ち続けていたであろうベテラン・ファンの想いが高純度で吹き荒れ、シュアなビートとともにじっくり確実に絶頂へ昇り詰めていくアクトになった。抑えきれない衝動そのままの片寄のシャウトから、痺れるくらいに濃厚なディスコ・ファンクの音像へと流れ込んだ“DISCOMAN”。サイケデリックとポップとブルースの接点から真っ白な大輪の花が開いていくような“Sanpedoro Gold”……どの音をとっても精緻でタフな白根のビート、円熟とはまるで無縁の力強さと瑞々しさに満ちた片寄の歌、187cmの長身&彫像の如き佇まいとは裏腹にブルージーでワイルドな薫りを音色に滲ませるjan。そこに、聴いているだけで魂がとろけそうな名手・長田進のギターが加わり、最高の瞬間を次々と生み出していく。何より、GREAT3としてこの場に立っているという現実を、1つ1つの音と言葉で噛み締めていくような片寄の姿が、「GREAT3の時間が再び動き出した」という実感をびりびり伝えてきて、無性に嬉しかった。

 長田のワウ・カッティングとともに最後の“Soul Grow”ででっかいグルーヴと高揚感を生み出した後、「また会いましょう!」の片寄の声を残して、GREAT3のステージは終了。たまらずアンコールを求めて沸き上がった一大コールは、舞台の転換が始まってもなかなか止むことはなかった。この後は、片寄/白根/jan/長田に堀江博久を加えたラインナップで『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO』『SUMMER SONIC 2012』への出演をアナウンスしているGREAT3。その先には、さらにスリリングな至福の音風景を見せてくれるに違いないーーと思わせてくれるのに十分な名演だった。

 この日、トップバッターを務めたのは、この日会場で配られていたサンプラーCDにも楽曲が収録されていた新鋭・GOOD BYE APRIL。曲ごとにエレキ/アコギ/ピアノと楽器を弾き分けながら、艶やかな歌の世界を紡いでいく倉品翔の朗々たる歌声。青春の甘さと痛みを無限大増幅しながらしなやかに響き合い広がっていく4人のアンサンブル……8月8日に発売される1stミニアルバム『夢見るモンシロ』からの“夢見るモンシロ”“I'm for you”、新曲“バイタルサイン”など6曲で、進化の真っ只中にあるGBAの「今」をアピールしていった。2番手は函館発4人組・dry as dust。ヒリヒリと肌に焼きつくようなWギターの音像越しに、息苦しいほどに胸を突き上げる切なさやメランコリアを歌い上げる松永晴貴の歌は、現実の波に翻弄されながらも明日を目指そうとする僕らの想いそのままに、伸びやかに、優しく響く。清冽なギター・ロック・ナンバーから“みらい”のようなハード・バラードまで弾きこなすギタリスト・加藤大輔の異常に激しいステージ・アクションと、「ちょっと分けて」とベース・成田光春のステージ・ドリンクのカルピスウォーターを飲んで「甘っ!」と笑いを誘っていた松永のキャラが、妙にくっきりしたコントラストを描いていたのも印象的だった。

 そして、最後のcinema staff。この日が復活ライブという20歳近く上の大先輩の後にトリを務めるわけで、当然ながら「アンコール(の声)すごかったですね! こんなに出づらいのは初めてだ(笑)」と思わず飯田瑞規がMCで言うくらいやりにくかったわけだが、GREAT3終演後でやや虚脱感漂うフロアの空気を、1曲目の最新シングル曲“into the green”一発でバキーンと覚醒させて自分たちのライブ空間へと景色を塗り替えてみせたのはさすがだ。時にプログレ寸前なくらいに暴れ回るヘヴィで熾烈なサウンドスケープと、クリスタルのような凛とした輝度を持つ飯田のメロディアスな熱唱。その2つががっちりとギアを合わせながら、バンドとしての爆発力と訴求力を刻一刻と上げ続けていることが、“火傷”“チェンジアップ”といった楽曲に加えて、9月5日リリースのミニアルバム『SALVAGE YOU』収録の“奇跡”など新曲からもわかる。

 ご存知の通り、cinema staff自体はすでにポニーキャニオンからメジャー・デビューを果たしているバンドだが、「『Great Hunting』オーディションの前にあった『Road to Tarbox Audition』(優勝すると、ナンバーガールの作品でもお馴染みの名エンジニア=デイヴ・フリッドマンが所有するタルボックス・スタジオでレコーディングができる、という趣旨のオーディション)に……送ろうかギリギリまで迷って送らなかったんですけど(笑)」(その時は結局マスドレことMASS OF THE FERMENTING DREGSが最優秀アーティストに選出)という三島想平のMCが、妙にこの場にマッチしていて面白かった。「終電なくなっちゃうんで、1曲だけ……」とアンコールで演奏した“白い砂漠のマーチ”が、充実の一夜のグランド・フィナーレとして、誇らしいくらいに轟々と響いていた。(高橋智樹)
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