サニーデイ・サービス @ LIQUIDROOM ebisu

「今日8月8日は、関ジャニ∞の8周年の日で、僕らの所属するROSE RECORDSと、リキッドルームの8周年の日です」(この日の曽我部恵一のMCより)という趣旨で行なわれた、サニーデイ・サービスのワンマン・ライヴ@リキッドルーム。以上の事情により、ライヴの正式タイトルは、「サニーデイ・サービス ワンマンライブ ~夏は行ってしまった~ ROSE RECORDS & LIQUIDROOM 8th Anniversary」。“夏は行ってしまった”はサニーデイの新曲で、この日、この会場限定で、アナログ7インチシングルで販売された。なお、「アナログ、聴けないって人もいると思うけど、そういう人のために、おまけにCDが付いてます」(これも曽我部のMCより)。僕も買ったが、家に帰って見てみたら、アナログがA面“夏は行ってしまった”1曲、B面“2番目の罪”1曲なのに対し、おまけCDの方は、それぞれのインスト・バージョンに加え、“夏は行ってしまった”のチルアウト・バージョンと“2番目の罪”のアカペラ・バージョン、計6テイクも入っていた。
なお、“夏は行ってしまった”は、メロウさとジャンクさが美しく同居した、夏のせつなさを瞬間的に切り取ったような曲で、“2番目の罪”は、エレキギターのアルペジオと鍵盤をバックに強くささやくように曽我部が歌う曲。どちらも、とても、2012年夏のサニーデイ・サービスな美しい曲です。

ちなみにサニーデイ、東京でのワンマンは、再結成後初のアルバム『本日は晴天なり』のリリース・ツアーのファイナル、2010年11月28日の九段会館以来。つまり、ほぼ2年ぶり。そのワンマン以降も、サポートなしの3人編成で、フェスやイベント出演などで、尺の短いライヴはちょこちょこやっていたが、いつもメニューはだいたい一緒だった。というか、そもそも、再結成以降、数あるレパートリーの中からライヴで演奏する曲はこのあたり、というのが決まっていた。
そして、今年になって曽我部恵一BANDのアルバムが出て、ツアーなどの活動が活発化して以降は、サニーデイ、ほぼ動いていなかった。ライヴ自体、3月に韓国でやって以来じゃないかと思う。このあとも、9月末の大阪の「コヤブソニック」や、10月の中村一義のデビュー15周年ライヴの名古屋への出演は決まっているものの、それ以外に表立った活動は、アナウンスされていない。

なので、いつの間にかシングルを作っていたことに驚いたし、この日にリキッドでワンマンをやることにしたのにも驚いたし、そして何よりも、以下のようなセットリストで、本当に気合いの入ったライヴをやったことに、最も驚いた。

1 夏は行ってしまった
2 恋はいつも
3 雨の土曜日
4 今日を生きよう
5 スロウライダー
6 田園風景
7 あの花と太陽と
8 96粒の涙
9 八月の息子
10 サイン・オン
11 魔法
12 さよなら!街の恋人たち
13 雨
14 白い恋人
15 恋人の部屋
16 NOW
17 週末
18 サマー・ソルジャー
19 新曲

アンコール1 シルバー・スター
アンコール2 海岸行き

というように、再結成後、初めてやる曲多数。定番の曲もあるが、いつもより少ない。たぶん、とにかくいろんな曲をやろうとか思ったわけでは別になくて、自分たちの楽曲の中から、この「夏は終わってしまった」というテーマに合わせて、つまり夏っぽい曲を選んで言ったらこうなった、ということなのではないかと思う。で、「リハーサルとか大変だから定番の曲にしとこうよ」ではなく、「とにかくこの曲たちをやるんだよ!」と、最初に決めたのではないかと思う。

というわけで、やたら新鮮なライヴだった。1曲ごとに「マジ? これ?」と驚くような感じ。なので、もうワクワクしっぱなし。超満員のリキッドルームも、多くの人が僕と同じだったようで、イントロが始まるごとに「おおっ!」とどよめいていた。ただ、シングルとか代表曲もやってはいるが、それ以外の曲もいっぱいやっているわけで、それでいちいちどよめいている、ということは、相当コアなファンが集まっていた、ということでもある。今、書いていて気づいたが。

サニーデイの演奏にといて、最も「味」なところであると同時に、最も大きな心配ポイントでもある丸山晴茂のドラムも、この日はとてもよかった。そもそもこの人、「タメる」と「モタる」の境目が極めて曖昧で、それがいい感じにハマれば他の誰にも生み出せない絶妙に心地いいグルーヴになる反面、ハマらなければただもうぐだぐだになるのだが、その「グルーヴ」「ぐだぐだ」のうち、前者になっている瞬間が実に多かったと思う。4曲目の“今日を生きよう”なんて、「こんなドラム、この人しか叩けないよなあ」と、しみじみ思った。

前にも書いたことがあるが、その「頼りないグルーヴ」みたいなもの、ドラムだけに限ったことではない。曽我部も、ソカバンの時に比べると、サニーデイでは明らかに線の細いギターを弾くし、田中のベースはいつもしっかりしてしているが、コーラスをつける時の音程は、たとえばスネオヘアーのバックで弾いている時のほうが安定しているように思う。で、それらの頼りなさも込みで、すべてが一体となって、ほかの誰にもできない、この3人によるサニーデイ・サービスだけの、なんともいえない音像が生まれる。久々に、本当にそれを堪能できた気がした。

1曲目以外に、19曲目にも新曲をやった。曽我部曰く、本当に、できたばかりの曲らしい。久々にちゃんとサニーデイやるのかな。そう期待したくなるステージだった。(兵庫慎司)
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