Theピーズ @ 中野サンプラザ

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Theピーズ @ 中野サンプラザ
『TheピーズONEMAN TOUR 「the2012/11/12秋巡業ぐるぐるニッポン夕焼け列島ハゲ出しの十番勝負、沖縄付き!」』

Theピーズが毎年やっている秋のツアーのセミファイナルにして、6月23日の日比谷野外大音楽堂に続く、結成25周年イヤーの特別なライヴ、中野サンプラザでのワンマン。活動歴25年にして、ホールでワンマンをやることも、日比谷野音以外のスタンディングじゃない会場でワンマンをやることも、おそらく初めてというか、活動当初からイス席の会場でやるなんてありえないくらいのバンドだという印象があったので、かなり意外なトライアル。
で、もうひとつトライアルがあった。イス席の会場と同じくらい、ピーズのライヴにおいて「ない」ことになっているのが、「演出」というものです。意匠をこらしたステージセットを組むとか、凝った照明にするとか、映像を使ってみるとか、そういうことは一切やらない。今だから、ではなく、バンドブームまっただ中で全国ツアーがすごい勢いでソールドアウトしていた初期の頃からそう。ライヴハウスはもちろん、日比谷野音とかの大会場でも、セットなんてなんにもなし、ステージにあるのは機材と最小限の照明だけ、というライヴをやってきたバンド、それがピーズだが、この日は「オープニングに予告なしでいきなりゲストが出る」という演出があったのです。

Theピーズ @ 中野サンプラザ
和太鼓でした。アンプやドラムセットの後方に4人衆が登場、ものすごいテンションでどんどこどんどことプレイを披露。びっくりしてあっけにとられたのと、観ていて純粋におもしろいのとで、会場一同、そのまんまフリーズ状態でじいっと鑑賞することになる。後半には声援もとんだりする。15分弱それを観たあたりで、メンバーが3人が登場、演奏が終わり、おじぎする4人衆の前に黒幕が下りて和太鼓セットが隠れ、いつものピーズのステージになる。はるさんの第一声、「悪い、こっから普通だぜ!」でした。
MCによると、この方々、「太鼓集団 天邪鬼」というグループで、ピーズと同じく今年で結成25周年だそうです。はる曰く、3・11後に新宿紅布で行われたチャリティイベント「緊急ナイト」で共演したのが縁で知り合い、日比谷野音の時に来てもらおうと思ったけど、和太鼓、ストラディバリウス並みに高価で濡れると大変なので今日にした、とのこと。ピーズのこのツアーのファイナル@沖縄と同日の11月18日のお昼、吉祥寺ROCK JOINT GBでライヴがあるそうです。公式サイトはこちら。http://amanojaku.info/
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さて、ピーズのライヴについて。まだ沖縄が残っていますが、このバンドの場合、「毎日同じセットリストでツアーを回る、ということをしない」「しかも、一部だけ違うとかじゃなくて、曲の並びが毎回全然違う」「それをはる本人が公式サイトの『ライヴレポート』のコーナーに、1本終わるたびにアップしている」という状態が常なので、セットリスト、伏せません。それでも知りたくない方は、ここで読むのをやめていただければと思います。

1  赤羽ドリーミン(まだ目は醒めた)
2  バカになったのに
3  3連休
4  3度目のキネマ
5  底なし
6  ゲロサーフ
7  絵描き
8  とどめをハデにくれ
9  ハゲ出し
10 幸せなボクら
11 新曲
12 でいーね
13 実験4号
14 ロンパリンラビン
15 テロメタン(新曲)
16 しげきてきな日々
17 アル中
18 ヒッピー
19 犬ゾリ
20 カラーゲ
21 道草くん
22 生きのばし
23 いいコになんかなるなよ
24 日が暮れても彼女と歩いてた
25 焼めし
26 真空管

アンコール
27 小さな木の実
28 体にやさしいパンク
29 電車でおでかけ
30 デブジャージ
31 ドロ舟

アンコール2
32 グライダー
33 何様ランド

Theピーズ @ 中野サンプラザ
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という全33曲、天邪鬼も合わせると2時間55分とかそれくらい。たっぷり、みっちり、ずっしりと、やってくれました。
11曲目の新曲は、「サゲチンどもに捧げるぜ」という前置きで歌われた、「吊るせ」という仮タイトルを勝手に付けたくなる曲(そういう歌詞だったのです)。あと新曲がもう1曲(15曲目の「テロメタン」)、それからちょっとびっくりしたのは27曲目の“小さな木の実”。いわば「シリアスでシビアな童謡」みたいなメロディと歌詞だなあ、と思って帰ってから調べたら、はるさんが幼い頃にNHK「みんなのうた」で人気となった、当時のスタンダードのようです。3歳しか違わないのに知らなかった。あと、この曲、もしかしたらこのツアーよりも前からやっていたのかもしれませんが、だとしたらそれも把握しておりませんでした、私。すみません。
にしてもピーズ、たまに思い出したようにこういうスタンダードな曲のカヴァーをやることがありますよね。昔、“恋は水色”のカヴァーをやっていたこともあったし(1992年のシングル「やりっぱなしでサイナラだBye Bye」のカップリングに入っていた記憶あり)。

それ以外は、ほぼ、ライヴでおなじみの代表曲がズラリ、と言っていいセットリスト。今年リリースになった、実に7年ぶりのフルアルバムであり、2007年以降にリリースしてきた3曲入りとか4曲入りとかのシングルをまとめた作品であるところの『アルキネマ』の曲たちが随所に入っていて、それがどれも、セットリストの中でピカピカ輝いている感じなのも、すばらしい。本来どんなバンドでも、こういう最近の曲って、昔からの代表曲に負けがちなものだけど、ピーズの場合そうはなっていない、ということだ。
それから、それらのシングルの収録曲なんだけど『アルキネマ』には入っていない、じゃあ重要な曲ではないのかというとこのツアーのタイトルになっていたりするからややこしい曲、“ハゲ出し”あたりもプレイ。はるさん、アルバムに入らなかった幻のナンバー、なのにツアー10ヵ所で全部やった(って言ってたけど、沖縄はまだなので正しく言うと9ヵ所か)、そしてグッズまで作ってしまった(その名も「ハゲ出しタオル」)、という前置きをしてから、歌っておられました。

Theピーズ @ 中野サンプラザ
Theピーズ @ 中野サンプラザ
Theピーズ、確かにホールで観れるのはめずらしいが、日比谷野音やフェスなどで、大きな会場には慣れているわけで、そしてそもそも3人ともすばらしいプレイヤビリティを持ったミュージシャンなわけで、驚くほど違和感のない、もうあたりまえにすばらしいライヴだった。
いつもと違ったのは、音がホールっぽくちょっとぼわーんとなっていたのをはる本人が気にしていたり、ホール内が飲食禁止であることをはる本人が気にしていたり、ステージが広くてドラムとの距離が遠いことをはる本人が気にしていたり、それを佐藤しんいちろう先輩に告げて「後ろに和太鼓のセット置けるくらい(ドラムが)前に出てるじゃねえかよ!」と言われたり……何か、「はる本人が気にしていたり」ばかり書いているが、そんなはるさん本人も、戸惑いながらも「……なんか、気持ちよくてヤだ。まずいな、こんな気持ちいいはずがない。スターじゃないんだから……」などと言って、しばらく黙ったかと思うと、「んー……忘れない!」とひとこと。客席、大笑い。そのあと「何言ってんだ!」と自分につっこんでおられました。あれでさらに、一気にいい空気になった気がした。

Theピーズ @ 中野サンプラザ
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あと2つ。
最初のMCで、東京に25年くらい、いやもっと長いこと住んでるけど、中野は全然来たことがなくて、駅で降りたのは今日が2回目ぐらいだとか、世田谷区や杉並区には縁があるが中野区はそうじゃないとか、練習はいつも高円寺でやってるとか、駅のそばにこんなスペイシーな空間(中野サンプラザのこと)があるとは驚いたとか、はるがひとしきりしゃべったあと、アビさんがひとこと。「あのさあ、さっきから思ってたんだけどさあ……中野、何度も来てんじゃん。俺、昔住んでて、うちによく来てたじゃんか」。はる「え、あそこ、中野なの? 沼袋」「中野だよ!」。当時、アビさんがインスタントラーメンに生卵を入れて出してあげるという最上級のもてなしをしたところ、「生卵、食えない」と言われたそうです。
そして。この間RO69でもニュースにしましたが、アビさんとCA4LAのコラボモデルのハンチングがこの会場で発売されました。アビさん、後半でかぶってましたが、アクションの激しさのあまり、かぶるたびにすっとんでました。はるさん、それを拾ってかぶってみたり、「じゃあ次は、しんちゃんはサッポロビールとコラボ、俺は黒霧島(宮崎の焼酎)とコラボしたい」ということを述べたりしておられました。
でもMCによると、はるさん、丸4ヵ月、お酒呑んでないそうです。ドクターストップだそうです。こんなに呑んでいないの、赤ちゃんの時以来だそうです。気の毒な気もするが(私も酒好きなので)、でも、一切呑まずにこんなライヴをやれている46歳、来月47歳というのは、なかなか素敵なことなのではないか、とも思う。

Theピーズ @ 中野サンプラザ
Theピーズ @ 中野サンプラザ
小さなライヴハウスだろうが、日比谷野音だろうが、中野サンプラザだろうが、どの街のどんなステージだろうが、もっと言うと7年ぶりのアルバムを出した年だろうがそうじゃなかろうが、Theピーズは本当に変わらない。「変わらない」って、必ずしもいい意味ではない場合もある言葉だが、ピーズのような、ギリギリの精神や、ギリギリの人生や、ギリギリの気持ちや、ギリギリの言葉などを、こんなにも長年にわたってロックンロールで表現し続けているバンドが、今、そんな「すばらしく変わらない状態」であることって、もうほとんど、奇跡のようだとすら思う。
そんなことを考え続けた3時間弱でした。ファンでよかった。いつもそう思うけど。(兵庫慎司)


※付記:以上のライヴレポートをアップした直後、「『小さな木の実』は晩秋シリーズのテーマソングなので、晩秋シリーズではいつもやってますよー」というご指摘のツイートをいただきました。大変失礼いたしました。さすがピーズファン、と思いました。あと、自分を信用しないで先に謝っておいてよかった、とも思いました。
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