ニッケルバック @ 日本武道館

ニッケルバック @ 日本武道館 - All pics by HIROSHI NIREIAll pics by HIROSHI NIREI
ニッケルバック @ 日本武道館
ニッケルバックの実に3年ぶりとなる単独来日公演である。2010年にはサマーソニックでのフェス来日も果たしている彼らだが、前回の単独来日(2009年)の会場は新木場コーストだった。ちなみにニッケルバックは過去にフェスも含めて来日は3回のみだが、初来日(2002年)の会場は忘れもしない、今は無き新宿リキッドルーム(キャパ僅か700!)だった。全世界で5000万枚以上のアルバムを売ってきた2000年代を代表するハード・ロック・アクトであるニッケルバックにとって、これまでの来日は良く言えばスーパープレミアなライヴであったものの、押しも押されぬアリーナ・ロック・バンドであるニッケルバックの破格のスケールを正しく伝えるには、規模が小さすぎたというのも否めない事実なのだ。

今回の武道館は、ようやくそんな彼らに相応しいシチュエーションが用意された公演だったと言っていいだろう。彼ら自身も武道館でのステージを熱望したのだという。この日のMCでもチープ・トリックの『アット・武道館』やディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』を引き合いに出しながらチャドは武道館が自分達にとっていかに特別な場所かを熱く語っていたけれど、実際ニッケルバックの持つロック・バンドとしてのクラシックな佇まいは、かつての洋楽全盛期に「聖地」となった武道館の物語性と凄くマッチしていたと思う。会場はもちろん超満員で、2階の最上付近までぎっちぎちにファンで埋め尽くされている。そうなのだ、会場の大小の差はあれど、ニッケルバックの来日はいつだって瞬殺でソールドアウトし続けてきたし、日本のニッケルバックのファンはいつだって熱くロイヤルな存在で在り続けているのだ。

開演予定時刻を少し過ぎたところで場内が暗転、イントロから焦らし無しでいきなり爆音ドラムスとギター・リフが絡み合う1曲目、その名も“This Means War”が始まる。この武道館公演は彼らの最新作『ヒア・アンド・ナウ』を引っ提げてのワールドツアーの最終公演でもあり、オープニングの“This Means War”を皮切りに『ヒア・アンド・ナウ』からのナンバーが多数フィーチャーされたセットリストとなっていた。モダンなファンク調の“Something In Your Mouth”でいったん会場をグルーヴで巻き込んだ後は「次も新曲だよ!」とチャドが叫んだ“Bottoms Up”へ。重心低めのミッドテンポなヘヴィ・チューンで、ニッケルバックの十八番とも言えるタイプの最新ナンバーだ。

そしてこの日のショウで最初のハイライトとなったのが続く“Photograph”だった。ニッケルバックにハード・ロック&ヘヴィ・ロックの範疇を超えた成功をもたらす契機となったのがこの“Photograph”に象徴されるシンガロング・ナンバーの精緻で、濁りなきコーラスの美麗と共に武道館が一体になる合唱が巻き起こる。「俺たちを初めて武道館に立たせてくれてありがとう!」とチャドはこの日何度も何度もファンに感謝の念を述べていたが、この“Photograph”や、後にアコギに切り替えてプレイされた“Rockstar”、“Someday”といったシンガロング・ナンバーと武道館という会場の親和性の高さは特筆すべきものがあった。ステージの巨大3面スクリーンにしばしばシンガロングするオーディエンスの姿が映し出される演出などは、ちょっと懐かしい、例えば80年代~90年代にかけてのMTV等でアリーナ・ロック・バンドのライヴ映像を観ていた感覚を呼び起こされるものがあった。

ニッケルバック @ 日本武道館
ニッケルバック @ 日本武道館
ニッケルバックの楽曲の魅力は、先述のシンガロング・ナンバーに加えてもちろん何よりもハード・ロック・バンドとしての王道骨太なナンバーというものがあって、中盤のハイライトとなった“Too Bad”や“Animals”はまさにそっち系のアンセムだ。ハード・ロックの様式美とヘヴィ・ロックの肉体的快感原則、そしてバラッドのポップセンスと、ニッケルバックの中でその3つの軸は絶対にブレないし、彼らは王道をやることに一切の「テレ」がない。王道なき今、オルタナティヴの時代と呼ばれる再分化の中で、彼らのぶっといオーセンティックはむしろ逆に新鮮に感じるものだ。

ステージも後半に差し掛かったころ、「今日はワールドツアーの最終日なんだ。ツアーのフィナーレを日本で、武道館で迎えられるなんて最高の気分だよ。ハッピー・セレブレーション!」と4人は乾杯を交わし、何やらハードリカーのようなものをグビッと一気にあおる。ここらへんも往年の「ザ・ロック・バンド」って感じで格好良い。そしてステージではTシャツ・プレゼント・コーナー、その名も「T-Shirts Canon」が始まる。数人のローディが大量のTシャツ玉(Tシャツを小さく縛り、ハンドボールの球くらいの大きさにしてある)を片っ端からアリーナに投げ入れていく。その後ろで御機嫌な4人は激烈ハードはインスト・ジャム・セッションに突入している。

ニッケルバック @ 日本武道館
ニッケルバック @ 日本武道館
それ以降はまさにセレブレーションな、ツアー・ファイナルに相応しい祭りのようなパフォーマンスになっていった。しんみりと別れを予感させるピアノ・バラッド“Lullaby”、「カンパーイ!」と再び(!)ビールをあおってから始まったカントリー調の賑やかなシンガロング“This Afternoon”、「みんなでより良い世界を作っていこう!」とチャドが叫んで始まった“When We Stand Together”では、サビの「Yeah! Yeah!」で大きなコール&レスポンスとなる。

本編ラストを〆たのは“How You Remind Me”、10年以上前の懐かしのシングルだ。この日のライヴを観て改めて感じたのは、ニッケルバックのナンバーには「時間が作用しない」ってことだった。昔のナンバーが古く黴ることもなく、逆に最新のナンバーも今に限定された何かではない。時間を超越した曲の数々。そこに常に不変の命を吹き込む演奏のダイナミズム。ブレずに王道をひた走ってきた彼らの凄みを感じることができた一夜だった。(粉川しの)

1. THIS MEANS WAR
2. SOMETHING IN YOUR MOUSE
3. BOTTOMS UP
4. PHOTOGRAPH
5. FAR AWAY
6. TOO BAD
7. ANIMALS
8. TRYING NOT TO LOVE YOU
9. ROCKSTAR
10. SOMEDAY
T SHIRT CANNONS/BEER TOSS
(side of a Bullet, Because of You)
11. LULLABY
12. THIS AFTERNOON
13. IF TODAY WAS YOUR LAST DAY
14. WHEN WE STAND TOGETHER
DRUM SOLO
15. FIGURED YOU OUT
16. NEVER AGAIN
17. HOW YOU REMIND ME
----------ENCORE----------
18. GOTTA BE SOMEBODY
19. BURN IT TO THE GROUND
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