「今日はすごく大変やったのに、来てくれてありがとう!」「手拍子とかであったまったらどうかなー!?」といった序盤の福岡晃子の嬉しそうな声がそのまま演奏のヴァイブに乗せられるかのように、今回のチャットモンチーのステージには、パフォーマンスを観に来て貰えることの感謝の念が溢れ返っていた。「え、本当に大変やった? 電車止まってたの!?……ごめん、やってもうた(笑)。ぎりぎりまで迷ってたやん。やるかどうか。でも、この人数をお台場で路頭に迷わすとこやった。いま考えるとゾッとするわ」と語っていたのは橋本絵莉子だ。二人は、やむを得ない事情で参加出来なかった人々を気遣いながらも、目の前のオーディエンスに対してはアーティストとしてベストのパフォーマンスを見せる、という意志の塊と化していた。2ピース・バンドとしての膨大なアイデアが加えられたステージングは、驚喜とため息の連続。二人がそれぞれに黒い飾りを身に付けているのだが、あっこは場面場面でリボン状の飾りを襷のように使い分け、演奏の邪魔にならないように衣装を纏めるのがかっこいい。えっちゃんは、飾りとそのパフォーマンスの説得力とが相まって、キュートながら迫力に満ちている。
チャットモンチー @ Zepp DiverCity
2013.01.14
チャットモンチー TOUR 2013
pics by Kazumichi Kokei
11月から12月までにかけて行われたライヴ・ハウス・ツアーに引き続き、年が明けて新ツアーがスタート。こちらは一回り大きなサイズの会場で、全国10公演。プラス、徳島での振替公演というスケジュールになっている。ツアーの幕が開けるのは東京・Zepp DiverCityの2デイズで、今回レポートをお届けするのはその2日目の模様なのだが、この日の関東圏は大雪に見舞われ、道路や鉄道などの交通網に運行停止や遅延などが相次いだ。アーティスト側でも開演時間前までに公演を行うか否かの協議が重ねられ、結果的には予定どおり開催、参加することが出来なかった人にはチケット代金の払い戻しを行う、という対応が取られた。「なんとか辿り着けた〜」とそこかしこから安堵の声が漏れ聞こえる会場内は、それでもかなりの数の来場者で埋め尽くされていて驚かされる。なお、以下のレポートでは、さすがにツアー序盤ということもあるので演奏曲の表記は近作のシングル曲のみに控えるけれども、今後の公演への参加を楽しみにされている方は、閲覧にご注意を。
「今日はすごく大変やったのに、来てくれてありがとう!」「手拍子とかであったまったらどうかなー!?」といった序盤の福岡晃子の嬉しそうな声がそのまま演奏のヴァイブに乗せられるかのように、今回のチャットモンチーのステージには、パフォーマンスを観に来て貰えることの感謝の念が溢れ返っていた。「え、本当に大変やった? 電車止まってたの!?……ごめん、やってもうた(笑)。ぎりぎりまで迷ってたやん。やるかどうか。でも、この人数をお台場で路頭に迷わすとこやった。いま考えるとゾッとするわ」と語っていたのは橋本絵莉子だ。二人は、やむを得ない事情で参加出来なかった人々を気遣いながらも、目の前のオーディエンスに対してはアーティストとしてベストのパフォーマンスを見せる、という意志の塊と化していた。2ピース・バンドとしての膨大なアイデアが加えられたステージングは、驚喜とため息の連続。二人がそれぞれに黒い飾りを身に付けているのだが、あっこは場面場面でリボン状の飾りを襷のように使い分け、演奏の邪魔にならないように衣装を纏めるのがかっこいい。えっちゃんは、飾りとそのパフォーマンスの説得力とが相まって、キュートながら迫力に満ちている。
“コンビニエンスハネムーン”のイントロでえっちゃんがギターのメロディを爪弾くとき、あれ、音を外したかなと一瞬思ったら、そうではなくて以前よりも広がりのあるギター・フレーズが練り上げられていたりする。あっこは、通常のドラム・セットとスタンディング・ドラムを行き来しながら貪欲にタイコの音色を味わい尽くし、チャットモンチーのディープ・サイドを代表する切々とした美曲群では深い余韻を残すピアノを奏で、ベースを持てば前線でオーディエンスを煽り立てては、それがベースのフレーズか、というテクニカルかつユニークな演奏を繰り出す。オーディエンスを煽るという点ではえっちゃんも負けてはいなくて、ギターの音を重ねるためだけにループを使うのではなく、ループを生み出すとそのままギターを置き、ハンド・マイクでステージを右へ左へと一杯に歩きながらオーディエンスを見つめて歌を投げ掛け、そしてドラム・セットに収まるといった自由奔放ぶりなのだ。「引っ越し」と呼ばれるパート・チェンジの面白さだけでなく、「見せる」「聴かせる」ための工夫が至るところに仕掛けられている。音が足りないという感触を抱かせない。そう思わせる隙すら与えない。で、二人はめちゃくちゃ楽しそう。「今な(笑)えっちゃん、すれ違うときに、エヘ、エヘへへ、って言いよった」と報告するあっこだが、そう言う本人もかなり楽しげなのである。

“きらきらひかれ”では、オーディエンスが跳ね上がりながらファルセットのコーラスを歌うのを、えっちゃんがニコニコしながら待ち、満を持して「イエーーッ!!」と突き抜けるようなシャウトを放つ。背筋が正されてしまうような、凛としたシャウトだ。えっちゃんによるアコギの弾き語りで新曲も披露してくれたのだが、歩いてきた道程に思いを馳せ、見えない未来にも軽やかに足を伸ばすような、肩肘張らない穏やかな積極性と冒険心が滲み出るフォーキーな1曲であった。この曲も、今後はアレンジが加えられ、成長してゆくものなのかも知れない。ネタバレになるので詳しくは書かないが、本人たちが「2ピースの極み」と呼ぶ、もの凄いパフォーマンスも見せてくれる。
ところで、チャットモンチー公式HP上の『チャットモンチーのバンド組もうぜ!』という動画コンテンツの中で、二人が新メンバーを募集する旨の発言をしていることが、話題となっている。でも、それは2ピースに限界を感じ始めたとか、そういうことではまったくない。今回のライヴを観てそう思った。先の「2ピースの極み」の1曲を演奏するときも、二人は「2ピースの極みってなんやろうなあ?」「わからんなあ」と言っていた。やれることはまだまだあるし、実際楽しいのだと思う。でも、「2ピースであること」だけが自己目的化してしまって、今のチャットモンチーの自由な表現にとって足かせとなるのが、嫌なのではないか。それはチャットモンチーではないのではないか。彼女たち自身が「新しいメンバーを迎えても大丈夫」と感じられる時期に辿り着いたのではないだろうか、と。ただ、二人は簡単そうに募集の話をしていたが、これってニュアンスとしては「挑戦状」に近いよな、とも思った。今のチャットモンチーはそれぐらい凄い。そう思わせるだけのライヴを彼女たちはやっている。(小池宏和)
「今日はすごく大変やったのに、来てくれてありがとう!」「手拍子とかであったまったらどうかなー!?」といった序盤の福岡晃子の嬉しそうな声がそのまま演奏のヴァイブに乗せられるかのように、今回のチャットモンチーのステージには、パフォーマンスを観に来て貰えることの感謝の念が溢れ返っていた。「え、本当に大変やった? 電車止まってたの!?……ごめん、やってもうた(笑)。ぎりぎりまで迷ってたやん。やるかどうか。でも、この人数をお台場で路頭に迷わすとこやった。いま考えるとゾッとするわ」と語っていたのは橋本絵莉子だ。二人は、やむを得ない事情で参加出来なかった人々を気遣いながらも、目の前のオーディエンスに対してはアーティストとしてベストのパフォーマンスを見せる、という意志の塊と化していた。2ピース・バンドとしての膨大なアイデアが加えられたステージングは、驚喜とため息の連続。二人がそれぞれに黒い飾りを身に付けているのだが、あっこは場面場面でリボン状の飾りを襷のように使い分け、演奏の邪魔にならないように衣装を纏めるのがかっこいい。えっちゃんは、飾りとそのパフォーマンスの説得力とが相まって、キュートながら迫力に満ちている。