主にリードのメロディを担当することの多いステファン・ハウザーと、リフやバッキングを担当することの多いルカ・スーリッチの2人、あとはドラム・セットが組んであるだけ、という至ってシンプルなステージ・セット。エルトン・ジョン、スティーヴ・ヴァイなど錚々たるゲスト・アーティストを迎えて完成させた最新アルバム『2CELLOS2~IN2ITION~』(昨年11月リリース)を引っ提げてのツアー……というタイミングではあるし、レッチリ“カリフォルニケイション”(ボーナス・トラックで収録)やレーサーX“テクニカル・ディフィカルティーズ”などアルバム曲も随所で披露してはいたが、基本的にはU2“ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー”やミューズ“ザ・レジスタンス”といった彼らのレパートリーを片っ端から連射する、といった趣のライブだった。特に、彼らをワールドワイドなプレイヤーへと押し上げたマイケル・ジャクソン“スムーズ・クリミナル”に関しては、本編(2人だけ)とアンコール(ドラマーと一緒に)の2回にわたって披露するサービスぶりだ。
そもそも「チェロ2人でロック名曲をカバーしたら面白い」というネタ一発で終わってもおかしくなかったはずのこのプロジェクトが、終わるどころかますますクオリティと熱気を高めながら、プロデューサー=ボブ・エズリンやエルトン・ジョンなどレジェンドたちをも巻き込む表現たり得ているのは、ひとえに2人のプレイヤー/アーティストとしての才覚とアレンジの巧みさゆえだろう。時に椅子から立ち上がりながら、チェロという楽器の限界をみるみる更新していく2人の姿は、それ自体がどこまでもエキサイティングだ。前回のツアー時よりやや体格ががっちりしたステファンに「イケメン」の呼称がふさわしいかどうか不明ではあるが、それも逆に彼の朴訥としたキャラと相俟って微笑ましく映った。
ニルヴァーナ“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”やAC/DC“狂った夜”などを畳み掛けて会場総立ちの熱狂を生み出したところで「ステファンがトイレに行っちゃったよ(笑)。ステファンに戻ってきてほしい?」とルカが客席の喝采を巻き起こしたり、アンコール7曲を実に5回に分けてじっくりねっとりと演奏しながら観客とコミュニケーションを図っていくのも、もはや彼らのライブにはお馴染みの光景だ。アンガス・ヤングさながらの鮮やかなリフ・ワークを披露してみせたAC/DC“バック・イン・ブラック”。静謐な美しさに満ちたスティング“フィールズ・オブ・ゴールド”。5回目のアンコールで「もう腰痛いよ」風なアクションで登場したルカの「サプラーイズ!」という言葉とともに鳴り響いたのは、坂本九“上を向いて歩こう”。自由闊達にしてソリッドな2人の表現が、日本のオーディエンスの熱気とじっくり溶け合った、至上の一夜だった。「ウィー・アー・ソー・ハッピー! シー・ユー・ネクスト・イヤー!」と言っていたので、2人はさらにそのプレイを磨き上げて、近いうちに日本にやって来ることだろう。(高橋智樹)