トゥー・チェロズ @ TOKYO DOME CITY HALL

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マイケル・ジャクソン“スムーズ・クリミナル”のカヴァー動画がYouTube経由で世界的に注目を集めてからもう2年近くが過ぎているが、「クロアチア発のイケメン・チェロ・デュオ」ことトゥー・チェロズの人気はここ日本でも衰えるどころかますます加速中。昨年1月には東名阪ツアー(この時は追加公演で渋谷公会堂公演がセットされている)→11月にもプロモーション来日&東名阪チャリティ・ライブ……と足繁く日本を訪れている彼らの、東京・大阪・金沢・広島・名古屋と計6公演にわたって行われた今回のツアーは、東京2公演がそれぞれBunkamuraオーチャードホール/TOKYO DOME CITY HALL(追加公演)という規模。ツアーの最後を飾るこの日のTOKYO DOME CITY HALL公演では、度重なるアンコールまで含め約1時間40分のステージの間、途中何曲かでサポート・ドラマーを迎えつつも、彼らはたった2人のチェロのプレイアビリティだけで、満場のオーディエンスを魅了しきってみせた。

主にリードのメロディを担当することの多いステファン・ハウザーと、リフやバッキングを担当することの多いルカ・スーリッチの2人、あとはドラム・セットが組んであるだけ、という至ってシンプルなステージ・セット。エルトン・ジョン、スティーヴ・ヴァイなど錚々たるゲスト・アーティストを迎えて完成させた最新アルバム『2CELLOS2~IN2ITION~』(昨年11月リリース)を引っ提げてのツアー……というタイミングではあるし、レッチリ“カリフォルニケイション”(ボーナス・トラックで収録)やレーサーX“テクニカル・ディフィカルティーズ”などアルバム曲も随所で披露してはいたが、基本的にはU2“ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー”やミューズ“ザ・レジスタンス”といった彼らのレパートリーを片っ端から連射する、といった趣のライブだった。特に、彼らをワールドワイドなプレイヤーへと押し上げたマイケル・ジャクソン“スムーズ・クリミナル”に関しては、本編(2人だけ)とアンコール(ドラマーと一緒に)の2回にわたって披露するサービスぶりだ。

トゥー・チェロズ @ TOKYO DOME CITY HALL
何より、彼ら2人のプレイがこの1年で格段にレベルアップしているのがわかる。ステファンの奏でるやわらかな旋律は、とても弓で弦を擦っているとは思えないほどの滑らかさだし、一転ダイナミックに弾ける場面ではそれこそギタリスト顔負けのエモーショナルな音色を(時にエフェクターも駆使しながら)紡ぎ出してみせる。片やルカの、“テクニカル・ディフィカルティーズ”で聴かせたカッティング風の6連符速弾きをはじめ、序盤で早くも弓をぼろぼろにしてしまうくらいの激しさでもって正確でエッジィなフレージングを繰り出していく図は、演奏を見ているだけで震えるくらいのスリルを秘めている。リード/バッキングの役割が厳格に決まっているわけではなく、時にルカがリード、ステファンがバッキング、という場面もあるのだが、それぞれのテクニックが研ぎ澄まされたことによって、ステファン/ルカそれぞれの演奏における役割が自然と明確になってきたーーというほうが近いのかもしれない。

そもそも「チェロ2人でロック名曲をカバーしたら面白い」というネタ一発で終わってもおかしくなかったはずのこのプロジェクトが、終わるどころかますますクオリティと熱気を高めながら、プロデューサー=ボブ・エズリンやエルトン・ジョンなどレジェンドたちをも巻き込む表現たり得ているのは、ひとえに2人のプレイヤー/アーティストとしての才覚とアレンジの巧みさゆえだろう。時に椅子から立ち上がりながら、チェロという楽器の限界をみるみる更新していく2人の姿は、それ自体がどこまでもエキサイティングだ。前回のツアー時よりやや体格ががっちりしたステファンに「イケメン」の呼称がふさわしいかどうか不明ではあるが、それも逆に彼の朴訥としたキャラと相俟って微笑ましく映った。

ニルヴァーナ“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”やAC/DC“狂った夜”などを畳み掛けて会場総立ちの熱狂を生み出したところで「ステファンがトイレに行っちゃったよ(笑)。ステファンに戻ってきてほしい?」とルカが客席の喝采を巻き起こしたり、アンコール7曲を実に5回に分けてじっくりねっとりと演奏しながら観客とコミュニケーションを図っていくのも、もはや彼らのライブにはお馴染みの光景だ。アンガス・ヤングさながらの鮮やかなリフ・ワークを披露してみせたAC/DC“バック・イン・ブラック”。静謐な美しさに満ちたスティング“フィールズ・オブ・ゴールド”。5回目のアンコールで「もう腰痛いよ」風なアクションで登場したルカの「サプラーイズ!」という言葉とともに鳴り響いたのは、坂本九“上を向いて歩こう”。自由闊達にしてソリッドな2人の表現が、日本のオーディエンスの熱気とじっくり溶け合った、至上の一夜だった。「ウィー・アー・ソー・ハッピー! シー・ユー・ネクスト・イヤー!」と言っていたので、2人はさらにそのプレイを磨き上げて、近いうちに日本にやって来ることだろう。(高橋智樹)
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