フォトグラファー・橋本塁が主催するライヴイベント、SOUND SHOOTER(通称サウシュー)が新木場スタジオコーストで行われた。8回目となる今年は、恒例の本人のMCによると「個人的なテーマとしては、僕の中でオルタナっていう。ありそうでなかった5バンド」(さらには、出演バンドの頭文字を合わせると、Coastになるという素敵な偶然も!)。もちろん、塁が撮影しているバンドという基本軸はあるのだが、何よりもライヴを主戦場にしている彼らしく、組み合わせの妙が光ったラインナップだった。
■cinema staff
all pics by 橋本塁トップバッターは、以前に大阪で開催された時に出演したことはあるものの、東京での出演は初めてであるcinema staff。バンド名が発表されただけで歓声が起きていたが、一曲目の“奇跡”がはじまると、バンドに負けずゆさゆさと揺れるオーディエンス。久々にライヴを見たが、よりアグレッシブに、より男臭くなったようだ。特に、センターの辻(G)は終始動きっぱなし! そんな中で、さらに際立つ飯田(Vo&G)の柔らかな歌声。しょっぱなから飛ばしていこうする、逞しい気概が見える。飯田は、「いつか、対バンできたら話そうと思っていたんですけど、中学生の頃から、携帯のアドレスにthe band apartって付けていた」と感慨深げ。さらに、「そういうバンドと対バンできたら、解散するつもりだったので、今日で解散」とドッキリ発言まで(三島(B)がゆず、辻がレッチリに因んだアドレスだったことで、すぐ解散は撤回。笑)。ラストは、三島の「特別な日に、特別な曲を」という言葉から“GATE”。辻はダイブし、Tシャツを脱ぎ、三島は叫び、オーディエンスもシンガロング。壮絶な印象を刻み付けて、ステージを降りた。
■OKAMOTO'S
例年と同じく、転換中のスライドショーで、ネクスト・アクトがわかる仕掛け。ということで、二番手はOKAMOTO'S。さらっと演奏をはじめ、オカモトショウ(Vox)はさらっと踊りながら歌い出す。自然体がロックな稀有なバンド、としか言いようがない。「感謝の気持ちを表して、とっておきの愛の歌、やってもいいかい?」と言ってはじまったのは、“ラブソング”。オーディエンスも手を挙げ、どんどん愛が広がっていく。そして、塁と仲良しのハマ・オカモト(B)が口を開く。「あのー、何でサウシューにOKAMOTO'Sって思ってるかもしれないけど、ずっと仲良くさせてもらっていて。ただ、二年前の写真展で、好きなのを送るよって言われて、選んだんですけど…送られてきて、ません!」と、オーディエンスを前に暴露(笑)。みんな話を持ってるなあ。そんなアットホームな空気を一転させる、エッジィな“Are You Happy?”で堂々たる演奏を轟かせるところも見事。ラストの“まじないの唄”では「セイ、サウシュー!」、「セイ、橋本塁!」というコール&レスポンスでがっつり巻き込む! とことん華やかなロックンロールで、初見の人もいるフロアを沸かせ続けた。
■androp
続いてはandrop。三年前のサウシューが初ライヴだったという、所縁が深いバンドである。内澤(Vo&G)の「飛び跳ねる準備はできてますか!?」という一声から、ダンサブルな“Boohoo”でライヴはスタート。線が細いようで、決してブレない歌声が耳に残る。さらに、多彩な音色が出てくるなあと思いつつ、ふとメンバーの足元を見ると要塞のよう! そうやって確固たる世界観を死守しているようで、「いくよ!」と呼びかけたり、ハンドクラップを煽ったり、オーディエンスを連れていくことも、忘れない。「また、ここに戻ってこれて、本当に嬉しく思っています。塁さんの写真からはじまったものが、みんなと僕らを繋いでくれた。もっともっと一つになりましょう!」と、写真というものの意味を噛み締めるような内澤の言葉を聞きつつ“Colorful”へ……と思ったら、ギターのトラブルで中断。「こんなの初めて」と内澤も言っていたが、彼らにとってサウシューは、試練の場所なのかもしれない。そして、さらにパワーアップした状態で頭からやり直すと、ラストまでノンストップで駆け抜けた。照明なども含めた一つのプロジェクトのような彼らだが、バンドの核の力も示すライヴとなった。
■the band apart
そしてthe band apart。四年前に出て以来、二回目の出演になる。紹介のMCで塁が思わず湿っぽくなったほど、彼らは長い付き合いだ。ステージに現れた4人が、おもむろに鳴らし出したのは……何と一曲目から“Eric.W”! フロアに火が点かないわけがない。さらに二曲目は“higher”。名曲の応酬だ。MCでは、荒井(Vo)には「金髪でドMのワーカホリック」と的確なキャッチコピーを付けられ、原(B)には「最初写ルンですで撮ってた奴なのに、こんないいカメラ使って、危ないよ」と過去を掘り起こされ、流石の関係性が露わに(笑)。さらに“beauriful vanity”では、川崎(G)がすっと前に出ると、荒井と原も動きだし、より空気を躍動させていく。“I love you Wasted”でも、各々が見せ場を作り、オーディエンスは惹き付けられていく一方だ。しかし、やっぱりMCでは、荒井が「10年くらい続けてこれたのは、見に来てくれるみんなと、塁みたいな友達のおかげ。変な友達だけど」と上げたかと思ったら落とし、原は「俺の何かを吸って成長してるのか、返せ」と零す(笑)。 でも、最後はしっかり“星に願いを”で、キラッキラに締め括ってくれた。さらに、何と原が塁にベースを渡し、その姿をカメラで撮るという、立場が交代した一幕も! ずっと見てきたバンドだけど、何だかドキドキするほど風格が出てきた。来月にリリースを控えたニューアルバム『街の14景』も楽しみ!
■ストレイテナー
遂にトリのストレイテナー。毎年メンバーが何かしらの形で出ていたものの、バンドは何と初回以来7年振りの出演だという。 しかもホリエ(Vo&G&Piano)は、SOUND SHOOTERの名付け親でもある。ナカヤマシンペイ(Dr)が椅子に立ち、ホリエが「俺たちストレイテナーといいます、よろしく!」と挨拶すると、いきなり“Melodic Storm”からスタート! さらに、“PLAY THE STAR GUITER”を畳み掛け、フロアはぐっと一つに。中盤では“Lightning”、“シンクロ”と、ホリエがピアノを奏でる楽曲を畳み掛け、短い時間の中に、見事に自分たちらしさを凝縮していく。そして、やはりMCでは、ホリエが「いつの間にかサウシューって略されてるのが気に食わない(笑)」と指摘すれば、シンペイも「Twitterのハッシュタグ(#サウシュー)のことを聞いたら、しょうがないじゃん宣伝だからって(笑)。あのドットって、小銭の意味だからね(笑)」と容赦ない(笑)。とは言え、「初回の頃からバンアパとやりたいって言ってて、叶って嬉しいです」とホリエは感慨も口にしていた。2月に行われた武道館公演では、セットリストに組み込まれなかった“KINGMAKER”などを織り交ぜながら、ラストはシンペイの「橋本塁と新木場のバーサーカーたちに!」という一声から、“BERSERKER TUNE”で燃え上がった。
アンコールに迎えられて再登場。「リクエストされた曲を」と“SILLY PARADE”を披露し、大ラスは“TRAIN”。オーディエンスに最後まで出し尽くさせ、見事にトリを飾った。そして、塁も交えて、五人でお辞儀。生粋のライヴバンドばかりを堪能できた、充実のイベントとなった。
なお、橋本塁は多彩な男ではあるが、本業はもちろんフォトグラファーであるわけで、今は写真展で全国行脚中(
http://www.ruihashimoto.com/)。これだけのアーティストから信頼される、音を切り取る彼の手腕を、とことん味わい尽くしてほしい。(高橋美穂)